「ぺいんととしにがみさんはさ、」
「ん?」
「どうしました?」
「もう、そういうことしたの?」
俯いてそう聞いてきたトラゾーの声は恥ずかしげであった。
「そういうこと………あー、」
「……あぁ、なるほど」
「やっぱ、自然の流れ?」
「「まぁ、そうだね」」
しにがみくんと顔を合わせて頷く。
顔を上げたトラゾーの表情は帽子を深く被って隠されているため分からない。
ただ、口元と声のトーンの感じでは何かあったようだ。
「クロノアさんと何かあったんですか?」
「何か、というか、何もないというか…」
「えぇ⁈トラゾー大好きなあの人が⁈」
「トラゾーさん?」
更に俯いてしまったトラゾーを見てしにがみくんと再び顔を合わせる。
「…何かあった?」
「……実は、前クロノアさんの家に遊びに行った時」
「うん」
「ゲームでもしようか、ってなってしばらくやってたんだ」
「はい」
「で、なんとなくひと段落ついてなんか間が空いて、手持ち無沙汰?になってさ、……俺だって好きな人に触れたいから、偶然を装ってクロノアさんの手、触ったんだ」
すごく勇気のいることをしたようで、ぎゅっと自分の手を握っている。
「そしたら、…まぁ、驚いたのもあるんだろうけど…振り払われちゃった」
「「は⁈」」
「すぐクロノアさんも謝ってくれたけど、…なんか、複雑な顔してたから、俺には触って欲しくなかったのかなって…」
「いやいやないでしょ!」
「有り得ません!あのクロノアさんですよ⁈」
「それだけじゃない…」
「え?」
顔を上げたトラゾーは泣きそうな表情で笑っていた。
「面と向かって言ったこともある、俺とはそういうことしたくないですかって」
「うん…」
「「今はまだ早いかな?」って、返された」
小さく肩が震えている。
「…みんながみんなそうじゃないって分かるけど、…なんか悲しいなって…」
「トラゾーさん…」
「俺って魅力ないし、愛嬌もないから…」
「トラゾー…」
「…俺ってぺいんとやしにがみさんみたいに可愛い感じの顔してないし、整った顔でもないし…」
自信なさげの声を全力で否定する。
「いやいや!お前は整った顔してるし、なんなら全体的に可愛い部類だよ」
「そうですよ!なんていうかギャップ萌え?僕たちはよく見てますけど、あなた結構童顔だから笑った顔とか幼く見えるし」
びっくりして目を見開くトラゾーは眉を下げて笑った。
「何だそれ、」
その瞬間、ぽろっと涙が落ちた。
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