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少し軽い足取りで、詩織の言うレストランの扉を開けると、少し聞き覚えのある鈴の音が聞こえた。

チャリンチャリン…

「…………あ」

やっぱり些細なことで思い出してしまう。

あの時首筋に触れた二力さんの柔らかい唇、太ももを滑るスラリと細長い彼の指。逃げられる暇もみせない彼の暖かい腕の中。その全てが愛おしく、そして儚く、彼に溺れたあのひと時が今になって恋しくなっていた。

——————全て嘘——————————

そう思えば思うほど苦しい。一刻もこの苦しみを消し去りたくて、忘れたくて詩織の誘いを受けたのに、今になって後悔し始めた自分がいた。

「あ、明日香〜!!」

「……!」

久しぶりに会う彼女に私の心の中がわかるわけもなく、昔の明るい表情でブンブンと手を振っていた。

「詩織…!久しぶり。珍しいねお誘いなんて」

心の中のモヤモヤをなんとか押し殺し、お得意の空元気で席に座った。

「あはは〜たまには明日香と話すのもいいかなぁって。最近全然会ってなかったしさー」

「そうだよねー。ごめんね!私も仕事忙しくって💦嬉しかったよ。お誘い」

「えー?本当?嬉しぃ〜!明日香も明日香で大変だもんね〜」

「そう!ほんっとそうなの…。あーーあ………」

「………」

ストローをクルクルとかき回しながら、詩織は探るように私を見つめてきた。

「……なんか悩んでるっしょ」

「…え!?!?」

どうやら詩織にもお見通しらしい。結構顔は固い方だと思うのだが…

「ほんっと分かりやすいねーあんたは」

ゔっ………

「何悩んでんの?せっかくなんだし、全部吐いちゃったら?」

「………………」

「明日香ぁ〜??w」

「そ、そんな一言で言えるような事じゃないんだもんっ💦」

「あ、じゃあやっぱあるんだ。悩み」

「…ま、まぁ……」

料理を運んできた店員に軽く会釈をし、腕をついてから再び詩織はそう言った。

「せっかくなんだしー…吐いちゃったら?」

「…………長くなるかもだけど…」

「ぜーんぜんいい!ぜーんぜんいい!私も高校の時はお世話になったもんですから」

ナイフを器用に使いながら、どこか上品に彼女はそう言った。少し垂れた前髪がどこか大人な雰囲気を漂わせ、高校の時とはどこか少し変わっていた。

「………あのね…」

しぶしぶとそう切り出すと、彼女はにこっと笑い、相談に乗ってくれる真剣な表情になった。


——-数分後———————————–


「なあるほどねぇ…………」

「………」

「まあ明日香が高校時代よりモテてて腹立つってのは置いといて…」

「…詩織!?💦」

「あははっ‪w‪‪ 冗談よ冗談!」

「ごほんっ…ま、明日香はかわいいし、男がよってくるのも頷けるわね。」

「そ、それは置いといてさぁ…💦///」

「ふふふ。ま、いいわ…んでー?明日香のいうその二力さん?って人はどんな人なのさ」

「え、えっとね…なんて言うか…大人っぽくて…ちょっと意地悪な人だけど優しくて…」

「ふーーーーん……明日香のタイプっぽい人ね」

「え!?」

詩織は少しからかうように言った。

「んでー?その人と行為に及んだけどー?相手がなんか素っ気ないって?」

「…うん………///」

「だってさ!………二力さん…この前私が「好き」って言おうとしたら「言うな」って言ってきたんだよ!?」

「はいはい。「しっ」てやってきたんでしょ?」

詩織は人差し指を唇に当て、そう示してきた。

「そー!その後私が引き止めたら冷たい目で突き放してきたんだよ!?…はぁ……もう絶対弄ばれてたんだよ」

詩織は少し考える顔になって、ふと顔をあげて話し出した。

「あのさ、私、どうしてもさっきから明日香の考えに100%納得できないんだよね」

「…え?」

「その二力さんって人はさ、なにわともあれ明日香と行為に及んでるんでしょ?その後その人がすぐさま帰ったとか、冷たく対応してたならちょっとあれ?って思うけどさ、実際突き放して逃げたのは明日香だったんでしょ?」

「…うん………でも…」

「えぇ分かるわよ、明日香の言いたいことは。突然だったっていうのと、初めてだったから相当パニックになったんだろうね。だから別に悪気があったわけじゃない。ただそのままその場にいたらなんだか二度と返してくれない気がして反射的に逃げちゃったっていう感じだろうね。」

「うん………」

詩織のいうことは驚くほど当たっていた。

「それで?今日彼に貰った口紅つけてたら気づいて貰えたんだっけ?

「うん…」

「まったく…明日香さ、二力さんが一瞬驚いた顔してたって言ったじゃない。彼はあんたの些細なことに気がついてんだよ!?まぁ口元だから目立ったってのもあるかもしれないけど、「似合ってる」なんて興味のない女に面倒なこと言う羽目になるんだったら彼なら絶対スルーするって。」

「更によ?「嫌いじゃない」って言ったんでしょ?そんなの好きでもない女に言うわけないわよ!その人きっと素直に気持ちを言うことが出来ないのね。だから少し遠回りな言い方にして恥ずかしさを軽減したかったのよ。」

「詩織……」

「これは私の勘だけどねぇ…明日香に好きって言わせなかったのは、嫌いだったからじゃなくて好きだったからじゃないの?」

「…え?……………………どゆこと?」

「はぁ…明日香って妙に鈍感なとこあるわよねぇ…」

「その人はさぁ…火傷で怪我おってるんでしょ?それプラス年の差だって結構あるし、それ以前にあんたの借金取りの部下なんだよ!? 本人だったら当然…「釣り合うはずない」って思うでしょーねぇ…」

「……………!!」

詩織のその一言で、私の頭の中には様々な記憶と真実が浮かび上がってきた。

「もしかして……あの時寂しそうに笑ったのって……………」

二力さんも…苦しかったのかな…


「………なぁんかピンと来た?」

「…うん。ありがとう詩織…なんかスッキリした。」

「んふふ。そりゃよかった。」

エアコンの風に詩織の前髪が揺れた。その髪を耳にかけて彼女はにっこりと微笑む。

別に彼女の言ったことが真実だとは限らない。けれど、なんとなくきっちりと当てはまるものがあり、それに気付いた私には、もうそれが真実から外れているとは思えなかった。

詩織にお礼を何度か言ったあと、少し先の交差点で別れて私はビルへと戻った。


事実は分からない。けれど詩織へ相談したことによってマイナスに考えていたことが少しだけ上を向いた気がした。

ミリダラズ 二力のラブストーリー

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