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その日も、私たちは屋上にいた。授業をサボって。
きっかけは、本当に些細なことだった。ある数学の授業中、私がうっかり教科書を忘れてしまい、隣の席だった葛葉に「見せて」と声をかけたら、「あー、ダルい。俺もサボろっかな」と呟いたのだ。
まさか本気にするとは思わず、「じゃあ、私も」と軽い気持ちで返したら、本当に屋上に連れてこられた。それ以来、たまにこうして二人で授業をサボるのが、私たちの間の「お決まり」になっていた。
「おい、〇〇。今日のテスト範囲どこだっけ?」
屋上のフェンスにもたれかかり、だらしなく座り込んだ葛葉が、スマホをいじりながら声をかけてくる。テスト前だというのに、相変わらずのんびりした態度だ。
「えー、ちゃんと授業出てたら分かるでしょ?」
私は呆れ半分に返しながら、持っていた参考書を広げる。別に、葛葉に教えてあげる義理はないけれど、放っておくと本当に何もやらないことを知っているから、ついつい世話を焼いてしまう。
「あー、めんどくせぇ。お前が教えてくれりゃいいじゃん」
葛葉は顔を上げることもなく、だるそうに言う。その適当な返事に、私は肩をすくめた。
「教えてあげてもいいけど、その前に単語一つでも覚えなよ。どうせ覚えてないでしょ」
「うっせ。俺は雰囲気で生きてんだよ」
悪びれる様子もなく言い放つ葛葉に、思わず吹き出す。こいつのこういうところが、なんだかんだ憎めないんだよな、と。
屋上からは、校庭で体育の授業を受けている生徒たちの声が聞こえてくる。普段なら自分もあの中にいるはずなのに、こうして葛葉と他愛ない会話をしていると、不思議と焦りを感じなかった。
「なぁ、夢主」
急に葛葉が真面目な声を出したので、顔を向ける。
「なに?」
「……いや、なんでもねぇ」
珍しく何かを言いよどんで、またスマホに視線を戻した葛葉。その横顔を、私はぼんやりと眺めていた。彼が何を考えているのか、私には分からない。でも、それでいい。私たちは、ただの友達。それで十分だった。
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書くことないのでダジャレいいます。
「道徳をどうとく?」
ありがとうございました。