ある日の事だった、いつも通り授業が終わり寮に戻る前に学食に寄ろうと階段を降りていると、階段を踏み外してしまった。
いつも通らない階段で、予想以上にツルツルとしていた。
「シャルロット!!! 」
階段で滑り落ちるシャルロットに焦り、青ざめ手を伸ばす。けれどその手は届かずシャルロットは階段から落ちた。
キュッ…ダンッ、ガンッ
地面で蹲るシャルロットに急いで駆け寄り、背中を抑えるシャルロットの手に、ルカ自身の手を重ねる
「シャル!」
「だ、だいじょ、ぶ」
「頭は、痛いところは!」
「頭は、庇った、背中だけ打った…だけ」
背中を打った衝撃で声が出しにくいのか、掠れた声で言うシャルロットの膝裏と肩に手を通す、
「動かすよ、痛かったらすぐに言って」
シャルロットを横抱きにし、しっかりと支えて揺らさないように急ぎめで歩いた。
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「うん、頭は打ってないし脳震盪もない、肋骨が少しひびが入ってて、捻挫してるね。安静にしてれば大丈夫、薬品教師に痛み止め作ってもらうから出来たら届けてもらうね。」
「当分は安静にしてね、授業に関しては私から担任に伝えとくから」
「はい、ありがとうござました 」
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「シャル、本当に大丈夫?」
「本当に大丈夫だよ」
「俺があの時風で浮かせてれば…」
どうやら階段から落ちた時風属性で浮かせてれば助かったのに、と考え込んでいたらしい。
「一瞬だったんだ、仕方ないよ」
「幸い、今日の授業はもうないから帰ろ?」
「そうだね」
下ろしていいと言ったが「足も怪我してるからダメだよ」と言われ横抱きされたまま寮に戻ることになった。
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__寮
「飲み物作ってくるから、ちゃんとベッドで寝ててね」
「分かった。ありがとう」
寮の中にあるキッチンに向かったルカは、数分で戻ってきた。手には湯気の立ったマグカップを1つ持っていた。
「はい、ホットミルク」
「ありがとう」
マグカップにふーふーっと息を吹きかけていると、ふと思い出した事に笑いが込み上げてきた。
「んふ…んふふっ…」
「?」
ルカは突然笑いだしたシャルロットに?を浮かべキョトンとする。
「いや、いつも俺の事をシャルって呼ぶのにあの時はシャルロットって呼んでたなって。」
「あれは、必死で…本当に心臓が止まりそうだったんだよ」
「わかってるよ、助けてくれてありがとな」
複雑そうな顔をしていたルカは思い出したかのようにシャルロットの座るベッドへ腰掛ける。
「ねぇシャルアレ見せて」
(ん?…ああ!
最近ルカはシャルロットの闇魔法で作る、濃い紫の、簡単に言えばブラックホールみたいな物を見るのが好きらしい。
「闇魔法なんて、普通見たいやつ居ないんだけどな…」
「シャルのは闇魔法でも、キレイなんだよ。」
そんな真剣な表情で、素直に褒められると少し照れくさくなる。お世辞だとしても嬉しい。
「昔、世界征服を目論んだ奴の闇魔法を目の前でみた人が”冷たくて恐ろしくあれは人間が出せるものでは無い、化け物だ”って言ってたけど 」
そういえば歴史の教科書にそんなこと書いてあったな、と思い出す。その言葉を紙に残した人は既に亡くなってしまっている。
闇魔法だけに限らず属性によって魔法は心が関係してくる、弱い精神を持つと心は燃えず、火を使えない。光属性は悪の心を持った者には扱えない。とか。
「シャルは優しいから、同じ闇魔法でも怖さなんてない、なんなら綺麗だよ!」
「っっう、うるさい!」
照れくさくなり闇属性を消し、布団に潜り込み、顔を隠す
「ほんと、シャルは褒められ慣れてないなぁ」
笑いながら頭を撫でてくるルカの横っ腹に手刀を振る。背中に響いて少し痛い…
「あてっ…おやすみ、シャル」
「ふんだ…おやすみ」
「おやすみ、明日のお菓子は?」
いつもの日課だ。ルカはいつも寝る前に明日食べたいお菓子を聞いてくる。食べたいものをいえば作ってくれる、普通の料理でも。
「…….ん、スイートポテト」
少し考え、脳裏に浮かんできたスイートポテトを口に出す。
「りょうかい、じゃ、また明日ね。」
ルカも布団に戻り電気が消された。
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次の日にはスイートポテトを食べ、授業は担任に安静にすることを優先しろと言われ休んだ。
足の捻挫が良くなり、歩けるようになったあたりから少しずつ授業に出席した。
そんな日が進み、やっと肋骨が治った。
そして今は休日。
色々助けてもらったルカにお礼をするべく買い物に来ていた。
街中の外にある魔法具を打っている店。
「魔力向上の指輪、」
目に入り名札を見るが、
ルカは魔力多いい方だしな…
「属性強化の腕輪」
元々属性能力高いしな…
「防御力upのショルダーストラップ…」
防御力かぁ…
あまりピント来るものがなく店を変えてみることにした。
ルカと言えば料理!という事で料理グッズ関連の店に入って見ることにした。
「うーん、」
うなりながら店を歩いていると、ふと目に入ったものにこれだ!と思い買う事にした。
「すいません、これください」
「あいよ! 」
紙袋に入れてもらい、持ってきた肩掛けのバックにしまう。
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「ルカ」
その日の夕方。今日、ルカは特別授業に参加していたため、教室に向かう。
日は沈み、空はオレンジ色に染まっており、まだいるが不安になったが教室にまだルカが居ることにほっと息を吐き安堵した。
「シャル!どうしたの?」
ちょうどカバンを持ち、帰ろうとしていたであろうルカはカバンを再度机に置き、近づいてくるシャルロットを待った。
シャルロットはバックから紙袋を取り出し、渡す
「これ、お世話になったからお礼。」
「貰っていいの?見ていい?」
「うん」
ゆっくりと紙袋を開け、中身を取り出す。
「これ…エプロン?」
「そお菓子作るための道具あげようと思ったんだけど、何を使うか分からなくて…」
「魔法がかかってるから汚れにくいし、すぐに落ちるんだって」
「!…シャル!」
喜んでもらえるか自信がなく目を逸らしながら早口で説明するとルカが抱きしめてきた。
「ありがとう!ちょうど欲しかったんだ。」
「デザインも俺好み、ありがとな」
喜んでくれたみたいで安心した。
「よ、良かった…」
「先に渡されちゃったな…」ボソリと呟いたルカはカバンから灰色の真ん中に、金色の柄が書いてある長細い箱を取り出した。
「これ、俺もあげようと思ってんだ」
「開けてもいい?」
「うん、開けて」
シャルロットに箱を手渡した。受け取り、左手で蓋を開けると、そこには半分に折りたたまれ、裏面が見えるよう、少しズレて置かれているのは薄青色の元結だった。
「これ…」
「シャル、前に元結新しくしたいって言ってたろ?シャルの目の色と同じだし、防御力upの魔法も着いてるんだって」
ただ1度だけ、シャルロットが「元結新しくしたいなぁ…」と呟いた事を覚えていたのかと驚いた。なんだが嬉しくなり、微笑む
「…ルカ、ありがとう」
身につけていた元結をシュルリと外し、机に置き、箱から青の元結を取り出す。
「俺が結んでいい?」
「うん、お願い」
ルカに元結を手渡し、背を向ける。
髪の毛に手を軽く通し、絡まりを解く。
1つにまとめて、元結を通し、結ぶ。
「ん、出来た!シャル、似合うよ」
元結を軽く触ると、リボンの結び方にされていた。
「なんでリボン結び?」
「可愛いから!」
「そ、そっか…ありがとう、ルカ」
「此方こそ、ありがとう」
「よし、もう寮帰ろうか」
「今日の晩御飯は俺が作りまーす!」
「!!!!!やった!」
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6話エンド 12⁄1
コメント
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すごく面白かったです