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泣いてからどれぐらい経っただろうか。
俺はスッと花城さんから離れた。
「 ありがと … ございます 」
ペコッと頭を下げる。
自分が自分じゃないみたいに弱々しい。
「 影山裙。落ち着いた? 」
そんな俺を見ても、花城さんは引くことなく顔を覗き込んだ。
俺はそんな花城さんに答えるようにしてコクッと頷いた。
「 ふふっ、もう少しでみんな来ちゃうけど … その顔じゃ練習なんて出来ないね 」
優しい笑顔を浮かべて、花城さんは自身の手で俺の涙を拭った。
練習をサボるつもりはない。
むしろサボる暇なんてないと思った。
こんなに未熟なくせに、努力1つしないで強くなれるわけねぇ。
俺は必死に首を振った。
「 だ、大丈夫です … ! 」
元気を取り繕って花城さんの顔を見ると花城さんは優しく微笑んだあと、顔を顰めた。
「 今日は朝練休んじゃおっか 」
俺に優しく寄り添うようにしてそう言った。
正直それがショックだった。
大好きなバレ ー を、しかも強くなるためにやっている練習を休めと言われれば。
そう考えただけでも、俺のプライドは許そうとしない。
そんな俺を見た花城さんは、さっきよりも優しい顔でゆっくりと口を開いた。
「 影山裙。影山裙は十分頑張ったんだから。今日ぐらいは休んでもいいんじゃないかな? 」
そう言って、俺の返事も聞かずにポケットからスマホを取り出すと、スイスイと画面を操作した。
少ししてから再びポケットにスマホを戻して花城さんは俺の目の前に手の平を見せた。
「 ほら影山裙。保健室行こ … ! 」
強引に連れては行かず、まるで俺の反応を伺うようにしていた。
満面の笑みを浮かべて俺が重ねた手を強く握り返した。
保健室に着いて、花城さんがガラッと扉を開けた。
朝早いせいか先生も生徒も誰1人いなかった。
「 先生いないのかな? 」
静かな保健室に花城さんの声が響いた。
花城さんは少しの間保健室を見渡すと、俺の腕を掴んで椅子に座らせてくれた。
2人の間に沈黙が流れる。
不思議と気まずくはなくて、心地よく感じた。
「 影山裙が、そんなに溜め込んでいたなんて知らなかったな 」
小さいけれど、ハッキリと聞こえた言葉。
そんなこと思ってくれてたなんてな。
俺はそこまで人のことを考えられないし見ることもできないからな。 素直に尊敬する。
なんて考えていると、花城さんが見つめていた床にポツッと水が落ちたのが分かった。
そのまま花城さんに視線を戻すと、頬に涙が流れているのが分かった。
… はな … しろさん?
… っ!
「 __ っ、花城さん … ! 」
俺は驚愕して立ち上がった。
花城さんはそんな俺を見てポカンとしている。
まさか、気づいてないのか?
自分が泣いていることに。
「 あ … れ … 」
「 花城さんっ、なんであんたが泣くんすか!! 」
なんで … っ、
俺は直ぐに花城さんに駆け寄って体を支えた。
「 私も … なんで泣いてるか分からない … 。でも、影山裙が楽になったことがわかった瞬間、なぜだか涙が出ちゃって … 」
オロオロしながら話す。
俺の … ため、?
それとも俺が泣かせちまったのか?
どちらにせよ、俺が原因なのは分かってる。
こういう時、どうすればいいんだよ。
「 はな … しろさん … 」
俺の言葉を最後に、花城さんはゆっくりと眠りについた __ 。
あの後、花城さんを抱きかかえてベッドに寝かせた。
それからしばらく経った。
「 … んっ 」
目をゆっくり開けた。
「 影山裙 … ? 」
花城さんは俺を見るなり名前を呼んだ。
弱々しい表情と優しい声が美しく見えた。
「 花城さん。大丈夫ですか? 」
ひとまず今の状態を知りたくて聞いた。
花城さんはニコニコしながらコクッと首を縦に振った。
「 うん … もう大丈夫 」
俺は安堵のため息をついた。
「 はぁ … 良かった … 」
花城さんはそんな俺を見て優しく微笑んだ。
「 俺が泣かせたから … 」
俺の言葉を聞いた花城さんは慌てて起き上がった。
「 そ、そんな … 泣かされたなんて思ってないよっ 」
そ、そうなのか?
じゃあなんで …
『 でも、影山裙が楽になったことがわかった瞬間、なぜだか涙が出ちゃって … 』
なんで俺が楽になって泣くんだ?
「 ただ … 影山裙が楽になったことが嬉しかったの 」
花城さんの言葉にはてなが浮かんだ。
「 安心しちゃったみたい 」
えへへと照れながら話す花城さんを見てやっと理解した。
泣いたのは悲しみや憎しみなんかじゃなくて、さっき花城さんが目が覚めた時に俺が安心したのと同じことなんだ。
そう思うと心が暖かくなった。
「 今何時? 」
「 えっと、8時っす 」
「 それじゃあそろそろ行かないとだね 」
花城さんはゆっくりとベッドを出て立ち上がった。
「 花城さん … ! 」
その瞬間、花城さんはふらっと倒れそうになった。
慌てて支えると、あはは … と笑っている。
「 ごめんねっ、ずっと寝てたからよろけちゃって … 」
そう言う花城さんを支えながら保健室を出た。
階段の前に来て立ち止まった。
「 本当に … 大丈夫すか? 」
「 うんっ、もう平気だよ … ! 」
花城さんは「 ありがとう 」と言って2年の教室へ歩いて行った __ 。