テラーノベル
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ジョルノのナビに従い、山道に車を走らせる。暫くすると看板が見えた。何と書いているのかは分からないが、おそらくこの看板の場所が目的地なのだろう、少しスピードを緩める。集中力が切れ、心の隅に追いやっていた考え事が這い迫ってくる。それは、トリッシュへの異性的な意味での好意と、醜い嫉妬心だ。飛行機ではジョルノと、車内ではアバッキオと。何故だか彼女が誰かと仲睦まじくしていると、ちくり、と心に針が刺さるような気がしてならない。そんな自己嫌悪がするような気持ちを心の奥の奥に追いやり蓋をする。そうして考えるのをやめた。はっ、と気がつくと、もう宿に着いていた。
「皆、着いたぞ!!ここが今日世話になる宿だ!貸切だが、騒ぐんじゃあないぞ。部屋の階数は全員2階だ。部屋の割り振りはトリッシュの部屋の両隣に俺とジョルノ。それに向かい合う部屋は、右からフーゴ、ナランチャ、ミスタだ。そして、俺の部屋の隣にアバッキオ…という部屋割りだ。異論は?」
「なぁーし!」
ナランチャが大声で叫ぶように了解する。
「僕も賛成です。」
皆が口々に賛成していく。
「では、各部屋に荷物を置きに行く!各自自分で荷物を持ち、部屋に入れていけ!」
車に乗り込む時、トリッシュが荷物をのせることに手間取っていた。それに気が付いたアバッキオが手助けをしていた。そのことを思い出し、何故それが自分ではなかったのか、もやもやとした霧がかかってしまったような気分になってしまう。そうしてまた、ちくり、と胸が痛みながらも駆け寄る。
「俺が持とう。」
「あら。今度はブチャラティなのね。グラッツェ。」
彼女はくすりと笑って、荷物を頼んでくれる。その笑顔に心音・体温が上がるのを感じるが、彼女を独占したい、という気持ちも強くなってしまう。各々が部屋へ入っていく中、それを俺はぼんやりと眺めていた。すると、ジョルノが部屋から出てきて、歩み寄ってくる。
「ブチャラティ。トリッシュの護衛を代わりましょうか?トリッシュも荷物を部屋に運べなければ困るでしょう?それに、ブチャラティも荷物を自分の部屋に運ばなければ…」
「トリッシュの荷物は俺が持っているから、俺が護衛を続けよう。その代わり、俺の荷物を部屋へ運んでくれないか?…あぁ、よろしく頼む。」
機内や車内の様子からどうしても想像してしまう。トリッシュは、俺が手を精一杯に伸ばしても届かない場所に行ってしまいそうだ。知らぬうちに。そんなことを考えていたら、トリッシュは部屋へ入っていこうとドアに向かって歩みを進めていた。遅れまい、と小走りになって、トリッシュの後に続く。部屋に入って、段差を跨ごうとしたところではっとした。
「トリッシュ、言い忘れていたが、日本の宿は土足厳禁らしいんだ。」
「あら。そうだったの?ふふ。皆は知ってるのかしら。」
「いいや、知らないさ。言うのを忘れていたんでな。」
「汚してしまわないか心配ね。」
「ああ。そうだな。」
2人して笑い合いながら、部屋に上がる。
「すごいわ!これがタタミっていうの?匂いが独特だけど嫌いじゃあないわ!」
トリッシュはキャーッ!とはにかむように笑い、華やいだ声を上げる。俺は珍しくはしゃぐ彼女を眺めつつも、荷物を下ろしていく。こうして見ると年相応だ。彼女は大人っぽい雰囲気を纏っている時が多いのだ。緊張からかも知れないが、もう少し肩の力を抜いても良いと思う。
「トリッシュ。はしゃぐのは夜にして、今は出掛けないか?観光ができなくなってしまうぞ。」
「確かにそうね。じゃあ行きましょうか。」
「ああ。」
トリッシュが俺の前を歩き、高めのヒールを履いて部屋の外に出ようとした、その時。突然ボキッと木材のようなものが折れるような音がした。その音がなった途端、トリッシュがバランスを崩したかのように前につんのめって転びそうになる。
「!?」
咄嗟に手を伸ばし、彼女の腹に手を回し支える。あのまま転んでいたらドアに激突していた。間一髪だ。
「危ない所だったな。大丈夫か?……トリッシュ?」
見下ろすと、かあっ、という擬音が似合いそうな程にトリッシュが赤面していた。眼は心なしか潤んでいるような気がする。何故かは分からないが…
「さいあく…ヒール折れちゃった…」
「何だって?ヒールだと!?」
「気に入っていたのに…」
不意に彼女の瞳からほろほろと、涙が流れる。
「気にするな。日本で俺が新しく買おう。」
「気持ちは嬉しいし、日本のヒールだって欲しいけれど、これはイタリアのヒールなのよ?」
「大丈夫だ。トリッシュ。イタリアに帰ってもそれと全く同じ新しいものを買ってやる。だから安心して良い。」
「………ほんと?」
「ああ。約束しよう。」
「グラッツェ。ブチャラティ。とりあえず履く靴はどうしたらいいのかしら…」
「ああ。確かにそうだな。ひとまず、新しいヒールを買いに行こうか。それまですまないが、宿でレンタルできるスニーカーを履いておいてくれないか。」
「そうさせて頂くわ。ふふ、新しいヒールねぇ…楽しみだわ。」
トリッシュは、そう言って部屋を出る。さっきの涙に濡れた顔とは正反対に微笑むトリッシュを見て安堵する。その善人面した表側の裏側で、醜い心が蠢いてしまう。彼女の先程の泣き顔を見るのが自分だけで良かったと心から思ってしまう。様々な心情が複雑に絡み合った心境の中、心の底には安堵が広がっていた。彼女は手を伸ばせば届いた、振り向いてくれた。自分はまだ彼女に淡い期待を抱いていていいのだろうか。そんな悩みは勿論あるが、幾分マシだ。彼女の側に居れる間は。ふと、彼女の温度を思い出した。好意を持っているからか、まだ手に温もりが残っているような気さえする。触れて気づいたが、ウエストがとてつもなく細かった。ちゃんと食べているのだろうか。いや、そんなことより……柔らかかった…いい香りがした…彼女を俺のものにしてしまいたい、という気持ちは強くなるばかりだ。最も、嫌がる彼女を自分のものにすることなどは決してしないが…葛藤していると、ガチャリとドアが開き、トリッシュが顔を覗かせる。
「ブチャラティ、どうかしたのかしら?皆待ってるわよ。」
「ああ、すまない。今行こう。」
俺は、部屋に踏み込んだ時よりも、遥かに前向きな気持ちで部屋の外へ踏み出した。
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ブチャトリターン一旦終わりです!今回はブチャラティが気持ちに自覚済みから始めてみました!絡み少なかったですかねぇ…次は…お楽しみに!今月中にあと2話くらい出せればいいなぁと考えております!可能かは分かりませんが…
誤字あるかもしれません💦申し訳ないです🙇
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