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羽海汐遠
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ruruha
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#学パロ
空凪 せつな
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重厚な鉄の扉が地響きを立てて閉まり、逃げ場のない特別独房に静寂が訪れる。薄暗い電灯の下、革の手袋が軋む音が響いた。
冷たい手袋越しに座っている俺の顎を神宮寺司は強引に持ち上げ、鋭い視線で射抜く。その手には、鈍く光る金属製の首輪が握られていた。
「100人を殺した化け物にも、相応の教育が必要だと思わないか?……今日からお前は人間じゃない。ここで我々に飼われる、ただの犬だ」
悠太は可愛い顔で目をトロンとさせたまま、司を見る。
彼の整った眉がぴくりと動いた。予想していた反応は、威嚇か、嘲笑か。あるいは不気味な沈黙だった。だが目の前の殺人鬼は、まるで眠たたい子供のような目でこちらを見上げている。
「……何だ、その目は
首輪を握る指に力が籠もった。顎を掴む手が、わずかに震えたのは怒りか、それとも予想外の反応に生まれた一瞬の空白か。司は自分の中のその揺らぎを許さず、すぐに氷の仮面を被り直した。
「ふざけているのか? 百人だぞ。百の命を奪って、まだそんな顔ができるのか、お前は」
独房の空気は湿っていて、コンクリートの壁に染みた古い錆の匂いがべったりと鼻腔にまとわりついた。天井の裸電球が一つだけ、黄色い光を垂らしている。その光の輪の中に、司と悠太。二人の影が重なるように伸びていた。
鉄格子の向こう側から、浅霧蓮のくすくすという笑い声が零れた。
「あはは、見てよ司くん。全然怖がってないじゃん、この玩具」
「ふふ、早く教育して、司」
その呼び捨てが、神経の奥を刺す。まるで飼い犬が主人に甘えるような。いや飼い主が犬を見下ろすような、どちらとも取れる絶妙な声色だった。司の顎が僅かに引き締まる。
「……口の利き方がなっていないな」
首輪を悠太の喉に押し当てた。金属の冷たさが、薄い皮膚の上でじわりと体温を奪っていく。カチリ、と留め具の音が独房に反響した。
鉄格子に頬を寄せるようにして、蓮が興味深そうに目を細めた。
「ねえねえ、司くん。そいつさ、最初から壊れてるタイプだよ。普通の脅し方じゃ絶対つまんない」
蓮の言葉を無視し、悠太の顔を覗き込んだ。トロンとした瞳。弛緩した口元。この状況を楽しんでいるかのような余裕が、全身から滲み出ている。それが司の苛立ちを煮えたぎらせた
「一つ教えてやる。その首輪は、命令に逆らえば即座に電流が流れる。苦痛で意識が飛びかけるほどの、な」
革の手袋が、悠太の頬を軽く叩いた。愛撫とも侮蔑ともつかない、曖昧な一打だった。
「それでもまだ、その顔でいられるか?」
「うん!」
悠太は元気よく頷く。
一瞬、司の表情が凍った。氷の仮面の下で、何かがぎちりと軋む音。こいつは演技をしている。そう確信したかった。だが、あの目の奥に宿る光は、演技で作れる類のものではない。
鉄格子の向こうで、蓮が小さく口笛を吹いた。
「うわぁ、本物だ。壊れてんなあ、この子」
「……そうか」
司は一歩下がり、ポケットから小さなリモコンを取り出した。親指がボタンの上に乗せられる。その目が初めて、明確な殺意を帯びた。
「なら、試してやろう」
カチッ。
電流が首輪を走る。微弱な、しかし肉の奥まで痺れるような一撃だった。普通の人間なら膝が折れ、悲鳴の一つも漏れる程度には設定されている。独房の蛍光灯がちらつき、蓮が格子越しに首を伸ばして悠太の様子を覗き込んだ。
蓮が期待に満ちた目で、唇を舐めた。
「さあ、どんな顔する? 泣く? 叫ぶ」
「ぐっ……!これくらいなら耐えられる」
苦しい顔をして耐えている悠太に司の目が細くなる。唇の端が、ほんの僅かに持ち上がった。それは笑みではない。獲物の最期を楽しむ捕食者の、あの顔だった。
「そうか」
カチッ。
空気が焼ける匂いがした。実際には電気が流れても匂いはしない。だが独房の中に、確かにそういう匂いが満ちた気がした。首輪の金属部分が皮膚に押し付けられ、電流が筋肉を痙攣させる。歯の神経、顎の関節、舌の先まで、痺れが広がっていく出力だった。
蓮がポケットからキャンディを取り出して口に含む。観戦のお供、というわけだ。
「んー、三かあ。まだ半分もいきてない」
司が立ち上がり、悠太を見下ろした。腕を組み、まるで虫の標本でも観察するような目つきで。
「一つ提案をしてやる。今ここで床に額を擦りつけて『犬は犬です』と誓えば、今日はここまでだ」
間を置いて、リモコンを掲げた。
「拒否すれば、四まで上げる。次は意識を保てる保証はしない。どうする?」
悠太は床に額をつける。
「犬は犬です」
蓮の口から、ぷっとキャンディが転がり落ちそうになった。目を丸くして、それから堪えきれないように笑い出す。
「えっ、うそ、マジで言った。あっさりすぎない?」
司は一瞬、虚を突かれた。想定していたシナリオのどれにも当てはまらない展開。屈辱に震えるでもなく、怒りに顔を歪めるでもない。犬が芸をこなすみたいに、すっと額を床につけた。その従順さが、逆に薄気味悪い。
「……立て」
司の声には、かすかな困惑が混じっていた。復讐とは屈服を強いることだ。誇りを砕き、自尊心を踏み躙り、人間としての尊厳を一つずつ剥ぎ取っていく。それが司の望む「教育」だった。
だが目の前の殺人鬼は、最初の関門があまりにも簡単すぎた。手応えがない。まるで暖簾に腕押し。それが司の神経を、電流よりも確実に逆撫でしていた。
コメント
3件
うわ、これめっちゃ好きな空気感だわ。司の冷徹な支配者ムーブと、悠太のトロンとした対応のギャップが刺さりすぎる。「うん!」って元気に頷くシーン、思わず笑った。しかも「犬は犬です」であっさり屈服するところ、逆に何考えてるかわかんなくて気になる。蓮のキャンディ舐めながら観戦してるスタンスも癖になるし、3人の関係性がこれからどう転ぶか超楽しみ🔥 続き待ってる!