テラーノベル
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夜風が、やけに冷たかった。互いにしばらく、何も言わなかった。 足音だけが、静かな道に響いている。
「……先輩」
「なんだ」
「……俺、あの時」
ルーシーの声は、ひどく小さかった。
「……笑ってたの、見たんすです」
「……」
「あの人 最後、笑ってた」
思わず、足が止まりそうになる。
だが、止まらない。止まれば、それ以上を言わせてしまう気がした。
「……避けなかったんすよ。まるで、 最初から、こうするつもりだったみたいに」
「……」
「……なんで、そんな顔するんだよって、 なんで、俺にそんなの残していくんだよって」
最後の方は、ほとんど独り言だった。
「……先輩」
「なんだ」
「……”私”、許されるんすかね」
すぐには答えなかった。答えられなかった。 静かな夜道に、足音だけが続く。
「……知らん」
「……っすよね」
力なく笑う声。
その笑い方が、妙に耳に残った。
「だが」
ルーシーが、少しだけ顔を上げる。
「許されるかどうかを決めるのは、今のお前じゃない」
「……」
「今のお前は、まともに立つことすらできん。 そんな状態で、自分に判決を下すな」
しばらく、返事はなかった。
ただ、隣の足音が少しだけ乱れる。
「……先輩」
「なんだ」
「……優しすぎると、困ることだってあるんすよ。」
「なら優しくしなけれいいのか?」
「いやそうじゃないっすけど、」
「だったら別にいいだろう」
「……へへ」
その笑いは、さっきよりほんの少しだけ自然だった。
「……でも」
また、小さな声。
「……少し、救われました」
気づけば、教師寮の門が見えはじめていた。
あれほど長く感じた道のりが、妙にあっけなく終わる。
「もう帰れるな」
ルーシーが足を止める。
まだ目は赤い。だが、さっきより呼吸は落ち着いていた。 そのまま背を向けかけた。しかし、言葉をかけずにはいられなかった。
「……ルーシー」
「……はい?」
少しだけ、言葉を探す。
「明日、無理に笑うな」
「……」
「だが、俯くな」
「……っ」
「お前は教師だ」
「立てなくなったら、その時は——」
一度、息を置く。
「……また来い」
ルーシーは、しばらく何も言わなかった。 それから、ぐしゃぐしゃの顔のまま、少しだけ笑った。
「……はい」
今度のそれは、無理に作った笑顔ではなかった。まるで、子どもが無邪気に笑ったかのような笑顔だった。
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