テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
竜馬は家でシャワーを浴びながら、昼間文也達が話していた事を繰り返し考えていた、どう考えても今夜ジェニが会う男を信用できない
しかもデートをするレストランをジェニがわざわざ手配したのも気に入らない、本当なら男が手配するものなんじゃないか?自分はいつだってそうしてきた、しかし文句を言える根拠が自分にないことも自覚していた
竜馬にとってはどうでもいいことだ、ジェニとそいつのことなんて、運命的な出会いだかなんだか知らないが、そいつが女物の靴を気に入ったからって自分に何の関係がある?
竜馬には二人の出会いがとてもくだらない出会いに思えた、風呂からあがり、ハナと一緒にソファーに座って壁掛けテレビでメジャーリーグを観ていても、試合の内容は頭に入ってこなかった
ハナは竜馬が先ほど連れて行ったドックランで、長い事彼が一点見つめして、考え事をしている間に、十分走り回ってパワーを使ったのでウトウトしている
換気扇の下でタバコに火を付けようと箱を開けると空だった、帰って来てから数時間で一箱吸ってしまっていた、そこへ竜馬のスマホが鳴った、電話の相手は宗一郎だった
「神崎ジェニに神崎広告代理店のメビウスに来る前の損益計算書で聞きたいことがあったんだが、携帯に電話してるけど出ないんだ」
どうして自分に電話してくるんだろうと訝し気に思った、彼女の事を1時間でも考えないですむように努力しているのに・・・竜馬は言った
「電源を切ってるんじゃないか?その彼女は今夜デートらしいぞ」
宗一郎は一瞬黙ってそれから口を開いた
「なんと!これは驚いた!こんな時間に彼女が仕事を終わらせているなんて、そしてお前も家にいるのか?こりゃ明日雨が降るな」
竜馬はムッとしてい一旦開きかけた口を閉じ、咳払いした
「今夜はハナの病院の日だったから、業務は7時に終わらせた、別に彼女のことは関係ない」
「ハナはどこか悪いのか?」
「いや、健康診断だ」
思わず苛立ちを声ににじませた、そこから宗一郎との電話は何気ない仕事の話から、とりとめのない話題に変わっていったが、電話口で赤ん坊の泣き声が聞こえ始めると
「娘が起きた」
と嬉しそうな宗一郎はさっさと話題を切り上げ、電話を切ってしまった・・・あのワーカーホリックのジェニが仕事の電話に出ないだなんて・・・よっぽど靴フェチ野郎と会話が盛り上がっているのかな・・・
再びソファに座り、ハナの耳を掻いてやる、かまってもらうのが大好きなハナでも、今は眠いので迷惑そうだ、そして五分後、竜馬は決断を下した。これだけ気になるのだから、彼女の様子をこっそり見に行ってみよう、もし何か事故に会って電話に出れない状況だとしたら、助けてやれるかもしれない
そして・・・もし靴フェチ野郎とうまくいっていたら・・・その時は黙って帰ってきたらいい・・・別にデートを邪魔するわけじゃない、「ハイヒールで踏んで欲しい変態野郎」(※竜馬イメージ)がどんな男か一目見てやろうというだけだ
竜馬は玄関で、ちょっと行ってくるよとハナと十分別れの挨拶をしてから、薄手のバイク用メッシュジャケットを羽織り、キーをつかんで、ジーンズの尻ポケットに入れた
。 .:・.。. .。.:・
メビウスタワー地下駐車場の真っ黒のジャガーの横で、竜馬の所有するイタリアの真っ赤なバイク「ドゥカティ966」が優雅な佇まいでそこにいた、所持しているだけで死ぬほど金がかかるマシンだが、他にこれといった趣味がない竜馬の唯一の贅沢だ
ヘルメットをかぶって、イグニッションキーを回し、ひと吹かしするとドゥカティは息を吹き返したように唸りだし、その爆音は地下の駐車場一帯に響いた
メッシュジャケットのポケットから、すべり防止の皮手袋を取り出し、手にはめながらシートにまたがる、振動が気持ちいい・・・竜馬は地下駐車場からアクセルを思いっきり回し、一気に飛び出した
ドゥカティにまたがって運転している竜馬は、唇を真一文字に結び、前方の闇を見据えていた、ギアを上げるとエンジン音が変わる、バイクはスピードをあげ、ガードレールも建物もいっさいがっさい後方に吹き飛ばし、マシンの風切り音とハンドルバーに伝わる振動だけがすべての世界になった
竜馬は御堂筋から国道42号線を北上し、大阪はど真ん中の梅田方面へ向かった、ざわつく竜馬の胸には排気の爆音がいつまでも胸にここち良く響いていた
。 .:・.。. .。.:・
目当てのイタリアンバルにはバイクだと20分で到着した
店のビルの正面の歩道のパーキングメーター前にドゥカティを停めて、エレベータ―に乗り込み「アビアンテ」の大理石で出来た入り口に足を踏み入れた
レストランの支配人が両手を揉みながら、奥から急いで出て来た
「申し訳ありません・・・今夜はとても込みあっておりまして、ご予約様以外ではお席をお作りするのにかなりお時間をいただくかもしれません」
「ここの料理がとても上手いと聞いて来たんだ、もしこれで便宜を図らってくれるなら、これからここを行きつけにしようかと思っていたんだが・・・それは残念だね」
竜馬はそう言って支配人にアメックス「センチュリオン」最難関のブラックカードを見せた、支配人はカードを見るなり深々と頭を下げた
「大変失礼をいたしました!10分ほどでお席をご用意いたしますので、あちらにお座りになってお待ちくださいませって・・・お客様!」
竜馬は支配人の言葉など一切聞かず、メインフロアに入って行って周囲を素早く見回した
ジェニがその男と楽しそうにしていたら帰るつもりだった、とにかく電話に出ないというのが引っかかっていた
バル内は、まずメインのホールがあり、そこから少し下がったフロアには床から天井まである大きな窓に向かってテーブルが並んでいた
天井には煌びやかなシャンデリアが設置されているが、店内は薄暗く・・・おそらく街の夜景を引き立たせるためだろう、そのせいでジェニを探すのに少し時間がかかった
そのフロアをざっと見渡してもジェニは見つからず、竜馬はその先の外に設置されているバルコニー席に向かった
そして見つけた、低層エリアのひときわ見晴らしの良いバルコニーのカップルテーブルに、ジェニは座っていた
彼女は二人掛けのテーブル席に一人だった
竜馬は一瞬動きを止めた、そしてただジェニを見つめた、バルコニーから見える大阪の星屑のような夜景の中に、彼女が浮いて見える
テーブルに設置されたキャンドルの柔らかな明かりが、ジェニの長い髪を淡く光らせていた、黒のノースリーブのワンピースが竜馬も認めざるを得ない、美しい彼女の体の曲線を露にしている
髪の裾は何だかクルクル巻かれ、前髪はおでこを出して斜めに可愛らしいリボンを付けている。彼女は精一杯おしゃれしていて、とてもかわいらしかった
竜馬は胸がムカムカした、あんなにめかし込んでいるのにクソハイヒール野郎はどこにいるんだ?
ジェニはポツンと座って、目の前の夜景を眺めていた・・・彼女が手にしたワイングラスから一口飲む様子に竜馬は目を奪われた・・・
頬杖をついて脚を組んだので、ワンピースの裾の部分のスリットから太ももが露になった
そしてテーブルにワイングラスが一人分しか置いてないのにも目が行った
寂しそうに肩を落とした後ろ姿・・・心なしかしょんぼりしているように見える・・・
「おいきみ!」
竜馬はすぐ傍にいるウェイターを指を鳴らして呼んだ
「彼女はどれぐらい、ああしているんだ?」
ウェイターはそっと口に手を持って行って、竜馬にもっと近くに寄れ、と合図した、竜馬も顔を近づけて耳を貸す
ボソ・・・「最初はお連れ様がいらっしゃるとお伺いしましたので、特別席にご案内しました。そしてもうかれこれ・・・1時間ほど経ちます・・・」
竜馬はウェイターと目を合わせ、眉をあげて無言で問いかけた、ウェイターは竜馬にむかって小さく首を振った
このウェイターだけではない・・・ジェニの隣のテーブルのカップルの女性もさっきジェニの事をチラリと横目で見てクスリと笑った
この店の従業員も・・・まわりの客も全員承知の事実だ
彼女はすっぽかされたのだ
コメント
2件
ジェニ可哀想に😢ハイヒール男はクソ野郎だ💢
うわ、竜馬の嫉妬がダダ漏れで笑っちゃいました(笑)。「靴フェチ野郎」呼ばわりしながら、結局見に行く決断を下すあたり、もう完全にジェニに夢中ですよね。それにしてもブラックカードで支配人を黙らせるシーンは、CEO設定が生きてておしゃれ。最後の「一人だった」で終わるの、めっちゃ気になる…!連載中ですか?続きが待ち遠しいです。
#溺愛
桜咲かな
349
桜咲かな
452
30
138