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ジェニは素晴らしい夜景を見ながら大きくため息をついた・・・明らかにデート用におシャレをしている女性が、インスタでも有名なロマンティックな夜景の見えるバルのカップルテーブルに一人でいる時・・・
どのくらいの時間が経てば、まわりは気の毒な目で見始めるのだろう
このグラスに入ってるワインだけは飲んで帰ろうと、ジェニは無理してグラスに注いだワインを飲んだ
しかし、まだ半分残っている、この素敵な出会いの夜のためにジェニはお酒は飲まないが、奮発して高級ワインをボトルで注文した
今日の事を藤子達に言ったら彼は「ハイヒールの君」から「ドタキャン靴野郎」と降格されることになるだろう・・・
厳密に言うとジェニがこの席に着いてから、キャンセルのDMをくれたのだからすっぽかされたわけではないのかもしれないが・・・まるで電話をかける時間も惜しいとでも言うように、インスタのDMのメッセージで今日のデートのキャンセル連絡を済まされた
顧客との打ち合わせだかなんだかで足止めをくらい、今夜はここに来れないらしい・・・見事なタイミングだった、そのメッセージを見た時には、もうジェニはワインをボトルで注文した後だった
なのでジェニは「仕事が大変だった日は自分へのご褒美に、週末はよく一人でここでワインを飲んで息抜きしているの」という雰囲気を、精いっぱい周りに見えるように、醸し出せていますようにと願いながら見栄を張って飲んでいた
しかし・・・気合の入ったワンピースといかにもデート用のシルバーのハイヒールを見れば、いくらジェニがどう取り繕ったところで、周りにはデートをすっぽかされた女以外の何者にも見えないだろう
しばらくするとまた榊原からDMが来た、次のデートはいつに変更すればいいかと聞いて来たので、思わずジェニは「ええかげんにせぇ」とボソッと一人つっこみを入れた
もう彼との次はない、返事をしなかったことで榊原から着信が来るかもしれないので、ジェニは他の客の迷惑にならないよう、スマホの電源を切って、家に帰るまで見ないようにバッグの中にしまった
美味しくもないワインをもう一口啜り・・・目の前に広がる贅沢な夜景をため息をついて眺めた
遠くで大阪城がライトアップされている・・・よく目を凝らして見ると、ビルのオフィス内などにスーツを着た人が働いている・・・色とりどりのビルの明かりに目を奪われつつ・・・30歳手前の独身女性が一人でポツンと似つかわしくないレストランのカップル席に座っている時に・・・考えそうなことを考えた
最近では、藤子も真紀も明らかに自分に気を使っている、そして自分達が幸せなのだから、ジェニにも幸せになってもらいたいとお節介をやきまくる
もちろんそれは嫌ではなかった、なぜなら反対の立場なら、自分もそうするからだ、なんだか自分が女として落ちこぼれのような気がしてならない・・・
私の青春はどこにいったのだろう・・・職場の親友の真紀も藤子も結婚するのに、自分はデートしてくれる相手もいない・・・
たった一人の肉親の兄は蒸発していて、喜びの瞬間を分かち合う人もいない
でも、それは大した問題ではないのかもしれない・・・とりわけ最近直面した会社買収の深刻な問題に比べたら・・・
M&Aで買収された会社は、苦しい立場に置かれる印象を抱いていたのに、だからジェニはこの大惨事を一人で解決しようと躍起になっていた
しかしメビウスは良い買い手企業だった、給料や福利厚生など、今までの役員の取り分がないだけに純利益から社員の能力に見合った人件費が新たに予算組みされた
メビウスの傘下に入れたことは、結果的には良い人材しか残らない、快適な職場環境を手に入れたことになった
株式譲渡を実施したメビウスは、株式の過半数を取得しているため、人員削減チームの采配と株主総会の決議により、神崎広告代理店の役員連中を全員解任した
竜馬が率いるメビウスは、それだけの資金力がある優良企業だった、正直・・・ジェニの手を持て余していた社員の三浦も、結局は良い形で自主退職した、みんな彼のおかげだ・・・
今では認めざるを得ない、「鬼の首きり屋」と呼ばれて恐れられていた松下竜馬は・・・実は良い経営者だ
今では神崎の従業員のボーナスもUPし、ジェニも働きに見合った給料をもらっているし、快適な環境の中で仕事が出来て、ジェニ自身の肩にも責任が軽くなった
そんな事に比べたら・・・自分にはデートする相手がいないなど、些細な問題だ
けれども運命の女神が、ジェニの恋愛面でひとつふたつご褒美をくれるというのなら・・・ぜひともお願いしたいなと思った
「あっ!流れ星!!」
綺麗な夜景の頭上にキラキラ輝きながら星が流れて行く・・・もう一度、ずっと星空を眺めていると、また一つの光の筋が走った
ジェニはすかさず、さっと両手を前に組んで、目を閉じて願い事をした
手を組む早さに必死さを我ながら感じる
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―神様お願いします・・・―
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背が高くて、ハンサムで、私にだけ優しくて、お金持ちで、ファッションセンスが良くて・・・できればここが一番大事です・・・27歳で「処女」の私を気持ち悪がったり、笑ったりしない人で・・・・
―そんな素敵な恋人を私の目の前にお与えくださいますように・・・―
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「靴フェチ野郎は来なかったのか?」
その声に驚いてジェニはハッと目を開けた
なんと、目の前に松下竜馬が夜景を背負って座っていた
桜咲かな
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コメント
2件
竜馬、気になって仕方なかったよね。ハイヒール野郎が居なくて良かったね😊
あらあら、ジェニ、可哀想に…!デート用のワンピースとハイヒールで一人、夜景見ながら高級ワイン啜ってる姿が目に浮かびますよ。でも「ええかげんにせぇ」の関西弁のひとりツッコミ、めっちゃ好きです(笑)。そして最後に竜馬が「靴フェチ野郎は来なかったのか?」って自然に座ってるの、タイミング良すぎて笑っちゃいました。願い事が早速叶いそうな予感…!