テラーノベル
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魔王軍の幹部と遭遇した翌朝。
ギルドの扉を開けた瞬間、
僕たちは足を止めた。
ざわざわ……
ざわざわ……
冒険者たちのざわめきが、
空気を震わせていた。
「なんか……すごい人……」
灼が不安そうに私の袖をつまむ。
「昨日の件じゃない?」
凛ちゃんが小声で言う。
そう。
昨日、私たちは“魔王軍の幹部”と遭遇した。
生きて帰れたのは奇跡だ。
胸の奥がまだ冷たい。
あの圧、あの声、あの笑み――
思い出すだけで背筋が震える。
「おい聞いたか? 幹部が東京に出たらしい」
「大阪から離れた場所に幹部って……ありえねぇ」
「Cランクのパーティーが遭遇したってよ」
灼はびくっと肩を震わせた。
胸の奥がざわつく。
(私たち……そんなに大ごとになってるの……?)
政府の緊急会見
突然、ギルドの大型モニターが切り替わった。
『緊急会見を開始します』
スーツ姿の官僚が映る。
表情は硬く、声は震えていた。
『昨日、東京都渋谷区にて
魔王軍幹部と思われる存在が確認されました』
ギルドが一瞬で静まり返る。
『これを受け、政府は
全国の冒険者パーティーに強化命令を発令 します』
灼が息を呑んだ。
『また、装備強化のための
補助金を全パーティーに支給 します』
ざわっ、と空気が揺れた。
「補助金……?」
凛ちゃんが目を丸くする。
僕は灼を見る。
灼は唇を噛みしめ、
小さく震えていた。
「……わ、私……
もっと……強くならないと……
また……あんなのが来たら……」
その声は弱いけれど、
確かな決意があった。
胸がぎゅっと締めつけられる。
(灼……怖かったのに……
それでも前を向こうとしてるんだ)
ギルド職員が封筒を差し出した。
「Dランクパーティの凛一行のみなさん――
あ、正式名未登録なので仮称です。
こちらが補助金になります」
封筒を開けると――
30万円。
「さ、さんじゅう……」
灼は固まった。
「やったじゃん!」
凛ちゃんが喜ぶ。
僕は胸が熱くなった。
(これで……
少しは戦えるようになる……)
渋谷の装備店は、
補助金を手にした冒険者で溢れていた。
「すごい……
こんなに……人が……」
灼は圧倒されている。
「みんな強化命令で来てるんだね」
凛ちゃんが頷く。
僕は店内を見渡しながら、
胸の奥がじんわり熱くなった。
(昨日の恐怖を……
少しでも減らせるなら……
強くなりたい)
◆ 三人の買い物
● 僕(凛)
魔導刻印グローブ
召喚陣の展開速度が上がる
軽装ローブ
「これで……
式神をもっと早く出せる……」
胸が高鳴る。
● 凛ちゃん(ドッペル)
光魔法増幅アクセサリー
軽量シールド
「灼ちゃんをもっと守れるね」
笑顔が頼もしい。
● 灼(あかり)
炎魔力安定リング
耐熱強化ローブ
灼はリングを見つめながら、
小さく呟いた。
「……これで……
少しは……
みんなの足……引っ張らない……?」
私は首を振った。
「灼は引っ張ってなんかないよ。
昨日だって……
灼が立ってくれたから、生きてる」
灼は顔を真っ赤にして、
小さく俯いた。
「……ありがとう……
り、凛さん……」
買い物を終えた帰り道、
私は空を見上げた。
昨日と同じ空なのに、
世界が変わったように感じる。
「……これから、どうなるんだろうね」
凛ちゃんが呟く。
「わ、私……
もっと……強くなりたい……いや。強くならないと!!」
灼が小さく言う。
僕は二人の顔を見て、
静かに頷いた。
「三人で強くなろう。
幹部が来ても……
逃げないで済むくらいに」
三人の影が、
夕日に伸びて重なった。
世界はざわめき始めた。
そして僕たちも――
確かに前へ進み始めていた。
魔王軍の幹部の登場は、まだ序章にすぎなかった
コメント
1件
とても斬新な展開で面白いですね!! 次の話も楽しみにしてます!!