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ニキ「てことは、結局ボビーは用事はなかったけど二人に話し合ってほしかったから用事あるふりしたってこと?」
しろ「まぁそういうことになるわな。」
シード「……ていうか何で俺はここに居るん?」
ニキ「都合よく東京来てたお前の運が悪いw」
弐十ちゃんの家の近くで、適当な店で昼食を食べながら俺は二人を見た。
キルが俺に弐十ちゃんと話がしたい、と言ってきたときは驚いたけど、弐十ちゃんには悪いがこれが一番いい方法だったと思う。
このままお互いがすれ違い続けたら、弐十ちゃんの花吐き病は治らずに悪化。
最近はもう大分配信や撮影も苦しそうになってきたから、このままいくと良くないのは確実だ。
それに、もしかしたら、もしかしたらだ。
片思いという条件を満たしたキルが
花吐き病になる可能性だって十分にある。
シード「まぁ……二人はすれちがってるのはそうなんじゃけぇ、別にしろせんせーが間違ったことしたとは思わんけどな。」
ニキ「びっくりするほどすれ違うんよな、あの二人。……ねぇボビー、一個確認なんだけどさ……弐十ちゃんはキルのことが好きなんだよね?」
しろ「そうやで。……キルの好きな人も弐十ちゃんやろ?」
シード「は!?そうなん!?」
しろ「お前は声大きすぎや阿保。」
正直なところを言うと、ニキからその話を聞いた時別に驚きもしなかった。
あんだけわかりやすいのに、相手からの好意には気付かないってどんだけ鈍感なんやろ……
ニキ「ほんとにさー……馬鹿だよね、二人とも。さっさと付き合っちゃえばいいのに。」
しろ「よほど嫌なんやろうな、拒絶されるのが。」
シード「……別にキル君と弐十君の言い分が、俺はわからんでもない。」
食事がある程度終わって頬杖をついたシードが静かに目を伏せた。
シード「でも、アイツらは今まで二人で相棒としてここまできたんじゃろ?なら、向き合わんといけんよ。」
シード「このままじゃ……アイツら壊れる。今の相棒って関係も、アイツら自身も、壊れる。」
シード「俺は笑ってバカやってる二人が好きじゃけぇ、猶更そう思う。」
シードの言葉は、俺とニキの心に深く刺さる。
そうだ。俺達は二人のことが仲間として、友達として大切だ。
だから、俺達は見守る事しかできない。
祈る事くらいしか、できないのだ。
う”ー、う”ー。
突如、スマホの通知音が鳴った。
シード「え、誰?」
ニキ「……ボビーじゃね?」
う”ー、う”ー。
無機質になる音。
う”ー、う”ー。
スマホを開く。
しろ「……キルから。」
ニキ「……出た方が良いんじゃね?」
う”ー、う”ー。
どうしようもなく、嫌な予感がした。
何か、冷たい感覚が、背筋を走る感覚。
ピッ。
しろ「……もしもし、キル?」
しん。
電話の先からは、何も聞こえてこなかった。
しろ「あ……?」
スマホの画面を確かめるも、確かに通話は始まっている。
しろ「キル……?」
恐ろしいほど静かな沈黙。
しろ「ニキ、これ聞こえる?」
ニキ「ん?……キル~?」
ニキにスマホを渡し、聞いてもらうも、聞こえないらしい。
首を振って再び俺にスマホが帰ってくる。
しろ「……キル?」
しん
沈黙。
その次の瞬間に聞こえてきた微かな音を、俺の耳は拾い上げた。
ひゅー、
何かが詰まったような、わずかに聞こえた、
誰かの、呼吸音。
しろ「は…………?」
ひゅうっ、と息が俺の口から漏れた。
冷たい汗がたらり、と背中を伝う。
どくんっ、と心臓が嫌な音を立てる。
しん、と再び電話の奥で沈黙が落ちた。
血の気が引いていく。
ニキ「……ボビー……?」
考えられる、可能性は一つだけ。
どくんっ
シード「しろせんせー……?」
ひゅうっ、
どくんっ
しろ「……行くで。」
恐ろしく冷静な声が出た。
自分でもどうしてこんなに頭が冷えているのかわからない。
低く、冷たい、自分の声。
シード「…………どこに?」
しろ「…………弐十ちゃん家や。」
ふらり、と足が動く。
早く、行かなきゃ。
行かなきゃ。
行かなきゃ…………
ニキ「…ッ、ボビー、っ!!!」
ガシッ、と手が掴まれる。
急に現実世界に戻ってきたかのようにはっと俺は振り返った。
そこには、唇を噛んだニキが居た。
ニキ「……教えて。全部、ちゃんと。」
ニキ「ボビーまで、抱え込まないで。」
ニキの声は真っすぐだった。
シード「……何が、あったん?」
シードの目も、同じく真っすぐ俺を見つめてくる。
そうだ。
冷静になれ、このまま俺一人が行っても。
きっと。
しろ「………っ…多分二人とも呼吸がままならん状態で倒れとる。シード、救急車呼べるかッ…?」
俺の声は、先程とは違って酷く震えていた。
シード「はぁ…ッ、!?」
血相を変えたシードがスマホを起動させてすぐさま電話を掛けた。
ニキも真っ青な顔をしている。
しろ「……二人とも、走れるっ、?」
ニキ「行ける、ボビー今すぐ行かんと……ッ…!!!」
シード「俺は掛けながら行く、走れお前らッ!!!」
シードの悲鳴に近い叫び声に俺とニキは走り出した。
ガタンッ、と店の扉を思いっきり開ける
「ちょっと!?」
お店の人が何か言っているが今はそんなこと気にしてはいられない。
走れ。走れ。
走れ走れ走れッ!!
ここから徒歩で直ぐ行ける距離に、弐十ちゃんの家がある。
早く早く
もっともっと早くッ!!
しろ「……ッ…見えた、弐十ちゃん家や!!」
マンションのアパートの階段を駆け上がる。
息が切れるのももう気にしていられない。
きっと、二人が感染したんだ。
感情が高ぶれば、初期症状でも呼吸困難になる状況何て簡単に作り出せてしまう。
きっと、キルも弐十ちゃんも……ッッ!!
ガチャンッ!!
乱暴な音を立てて俺とニキは弐十ちゃん家に駆けこんだ。
幸い鍵が開いていて、そこは手間取らずに済んだ。
ぶわり、
広がったのは思わず顔を歪めて息を止めてしまうほどの酷く強い花の香り。
げほっ、と隣で咳き込んだニキを置いて、俺はリビングへと続く廊下の扉を開けた。
バンッッ!!
絶句した。
木の床材すら見せない程、花で埋め尽くされた部屋。
床に散らばる、きっとこれは……アネモネの花。
僅かに混ざっている、誰かの血。
通話が続いているスマホ。
そして…………そこに手を伸ばすように倒れた、
キルの姿。
彼のもう一方の手が伸ばされた先に倒れた、
弐十ちゃんの姿。
後ろから入ってきたニキがひゅうっと息を呑む音が聞こえた。
ピーポーピーポーという救急車の音がやけに遠く聞こえる。
シードがこっちです!と叫んでいる声が聞こえる。
ドサッ、と俺は膝をついて崩れ落ちた。
ニキ「……キル……?弐十ちゃん…………ッ?」
震える、ニキの声。
目の前に広がる白のアネモネの花に囲まれて、血の気の失せた顔をして、目を閉じている二人が。
まるで
まるで、心中をして墓に入った、恋人のようで。
きっと、花による呼吸困難で倒れていることは
想いを伝えずに、伝えられずに、倒れていたことに違いないのに
そう思えてしまう俺に、そのように倒れている二人に
ぞくっ、と冷たい悪寒が背筋を走る。
後ろに気配を感じる。
シードが入ってきた。
シード「は………………?」
彼もまた、絶句していた。
彼と共にやってきた救急隊員が二人のことを運んでいく。
付き添いが、必要だ。二人の搬送に。
そう思うのに身体が固まって動かない。
がくがく、と震える手足が思うように動いてくれない。
俺達は、呆然と見つめるしかなかった。
二人が居なくなったこの部屋を。
彼等の苦しみの象徴であろう
アネモネの花を
只呆然と、見つめるしかなかった。