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一方、咲結はというと、
「…………」
港近くにある倉庫に連れて来られ、馬宮たち数人の男が居る中で置いてある椅子に座らされていた。
「食べたら? 毒なんて入ってないよ。お腹、空いたでしょ?」
「結構です。こんな状況で……食欲なんてありませんから」
咲結の向かいに座る馬宮にコンビニ弁当を食べるよう促される咲結だけど、こんな状況下でお腹が空く訳もなく、怖いのを必死に我慢しつつ、平静を装いながら朔太郎が来るのを待っていた。
(……さっくん……本当に、一人で来るのかな?)
この倉庫にはざっと見ただけでも、十人くらいの男が居る。
そんな中に朔太郎が一人で来たらと思うと、咲結は気が気じゃなかった。
(……さっくん……)
馬宮は仲間を連れてくれば、自分をどうにかすると言っていたけど、朔太郎が一人で来ても、あっさり解放してもらえるとも思えなかった。
(……どうにかして、ここから抜け出すしか……)
幸い、咲結は縛られたりしていなかった。
見張りがあるから必要無いと思っているようだ。
(……せめて、もう少し人が少なければ……)
時折周りにチラリと視線を向けていると、馬宮が何かに気付き、ニヤリと口角を上げながら見張りの男たちに声を掛けた。
「おい、お前ら。ちょっと外の様子見て来い。もう海堂もこの近くに居るだろうからな、仲間を連れてないか、隈なくチェックしろ」
その声に頷いた男たちは咲結と馬宮を残して皆倉庫から出て行く。
(これなら、この人をどうにかすれば、逃げられるかも?)
馬宮と二人きりになった咲結は、一人ならば隙をついて逃げ出せるのではと考えていた。
けれど、咲結のその考えは馬宮に筒抜けだったのだ。
それを分かった上で、あえて隙を見せた馬宮。
(今だ!)
馬宮が電話の為に少し離れ、咲結から視線を外した隙に出口へ向かう咲結。
ドアを開いて外を見ると、辺りには誰も居ない。
(見張りも、いない?)
少し不気味に思いながら倉庫から出ようとすると、
「残念~、逃げられるとでも思ったの? 咲結ちゃんって単純だね? 気付いてたよ? 最初から全部ね」
「…………っ」
腕を掴まれ、初めから気付いていたと聞かされた咲結は自身の考えの浅はかさに後悔を滲ませているところを再び中へ連れて行かれ、
「咲結ちゃん、少し痛い目みないと分からないかな? 自分の置かれた状況」
「……い、嫌……来ないで……」
一番奥の壁に追いやられた咲結は馬宮や戻って来た仲間数人に囲まれ、危機的状況に追い込まれてしまった。
「今更怖がる? 逃げようとするくらいの元気があったのに」
「ご、ごめんなさい……もう、しませんから……」
咲結が先程よりも怯えているのは、馬宮の手にナイフが握られているから。
これ以上刺激してはマズイと思った咲結は自身の行動を反省して謝罪の言葉を口にした。
「ああ、これが怖いのか。可哀想だと思ったから、拘束しないでやったし、刃物も持たなかった。けど、逃げようとするならこっちも考えないとさぁ」
「ごめんなさい……っ」
脅える咲結のすぐ側までやって来て頬にナイフを当てた馬宮は薄ら笑みを浮かべながら言葉を続けた。
「言葉だけじゃ、信用出来ないなぁ。態度で示して貰わないと」
「……ど、どうすれば……」
「俺さぁ、咲結ちゃんともう少し親密な関係になりいなぁって思ってるんだ~。キミ、結構可愛いし、女子高生ってもの良いしね。だから、俺を満足させてくれたら、危害は加えない。約束するよ。どお?」
「……ま、満足……?」
「あれ? 分からない? 咲結ちゃんって初心なんだね? もしかして……処女だったりするの?」
「……っ」
「その顔、図星? ふーん、そっかぁ、そうなんだぁ? へぇ~、処女かぁ……それじゃあ、俺が咲結ちゃんを犯したら、海堂はすげぇ怒り狂うだろうね。はは、そりゃ面白いなぁ」
「や……、やめて……っ」
馬宮は一人笑いながらナイフを懐にしまうと、震える咲結の肩に触れる。
「大丈夫、怖がらなくていい。まあ、優しく出来るかは分からないけど、気持ち良くはしてあげるからさぁ」
「いや、……やめて、触らないで……っ!」
馬宮の手が肩から着ていたブラウスのボタンに添えられ、一つ、また一つとボタンが外されていく中、どうにか逃れたい咲結は出せる力を振り絞って手を振り上げると、その手が馬宮の腕に当たってしまう。
「……大人しくしてろって言ってんじゃん。騒がれるのって不快なんだよ、俺」
「……っ」
咲結がなかなか大人しくならず、いつまでも反抗的な態度を取り続けている事に苛立ちを覚えた馬宮の顔からは笑顔が消え、冷たく鋭い視線が向けられ、両腕を掴まれたまま壁に身体を押し付けられる。
それでも、このままでは危険だと感じた咲結が掴まれた腕を振り解こうとすると、
「大人しくしろって言ってんだろ!」
「きゃっ!?」
馬宮は右手を離すと、平手打ちで咲結の左頬を勢い良く殴った。
「おい、この女、縛ってその辺に転がしとけ」
そして、興醒めしたのか近くに居た男に咲結を縛るよう命じると、馬宮はそのまま入り口の方へ歩いて行った。