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《アカネ、ジュンパク達》
「はぁぁぁぁあ!!」
「てりゃー!」
魔神城の前で、絶え間なく森から現れるタナトスを斬り倒していくアカネ達。
その激戦で周囲はすでに山火事と化し、炎の光が戦場を照らし出す。
もはや【光源】など必要ないほど、あたりは赤く明るく染まっていた。
「はぁ……はぁ……」
いま最も消耗しているのは、前線で戦うアカネたちではない。
後方で支援に徹しているアンナだ。彼女は限界突破をしながら、みんなに途切れることなく補助魔法と治癒魔法をかけ続けている。
さらに――。
「すいません! 抜けました!」
アカネたちが奮闘しているとはいえ、相手は数が多い。何匹かは防衛線をすり抜けてくる。
「っ!」
すかさずアンナは迫るタナトスの攻撃を紙一重で回避。そのまま杖の先端を敵の頭へ突き刺した。
彼女の杖の先には、タナトスの尻尾の先端がくくりつけられている――“目には目を”という発想だ。
「シャァァァ……!」
頭部から緑色の血が勢いよく吹き出し、アンナの身体に降りかかる。
「うわっ、もう! 気持ち悪い!」
「ごめんなさい! アンナさん!」
アカネもすでに全身が緑の血で染まり、すごいことになっていた。
「いいのよ、それよりまだ行けるわね?」
「はい! リュウトさん達が出てくるまで頑張ります!」
「ますたーはやくぅ」
「頑張りなさい、あーたん」
「はぁーい」
「あ、あの……ユキは本当にこれだけで良いんです?」
「ええ。あなたはその魔法陣に魔力を送り続けなさい。むしろ、そのおかげで助かってるわ」
「はいです!」
ユキが維持しているのは簡易的な【結界】。
町の本格的な結界より性能は落ちるが、それでも外で押し寄せる何百ものタナトスを食い止めていた。
(……この子、息が上がってない。とんでもない魔力量……勇者並みね)
結界は攻撃を受けるたびに修復に魔力を奪われる。
それをリュウト達が中に入ってから、ずっとユキ一人で持たせ続けているのだ。
「それに……アイツ……」
アンナは反対側で暴れ回るジュンパクに目を向けた。
今の彼は胸が豊満になり背も高く、長い髪にうさぎ耳――その姿で白い鎖鎌を振るい、次々とタナトスを屠っていく。
「アカネ達の何倍倒してるのよ……しかも私の補助なしで」
動きを見れば【限界突破】を使っているのはわかる。だが、それでも桁違いだ。
「o.v.c.c.t」
独特な言葉とともに魔皮紙をばら撒き、巧みに絡め取っては仕留める。
「……腹が立つけど、助かってるわね。これなら、まだみんな行けそう……“そろそろ朝になる”けど、ここからが本番だわ」
――だが、アンナ達は気付いていなかった。
神の島では、日が昇る時【ヒュプノス】が降臨するということを。
{ジュンパクくん、気をつけて}
「?」
{もうそろそろ、僕の力が弱くなり……彼が来る}
――日の出とともに、【神の島】は濃い霧に包まれた。
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