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「……え!?」
魔法陣に魔力を流し続けていたユキは、思わず息を呑む。
霧がじわりと立ち込めたかと思えば、近くにいたアンナが突然崩れ落ちたのだ。
「ア、アンナお姉ちゃん?」
声をかけても返事はない。
「ど、どうなってるです……?」
結界の魔法陣から手を離そうとした瞬間――
「それから手を離しちゃダメだよ!」
「!?」
緑の血にまみれたアカネと、気を失ったあーたんを背負ったジュンパクが駆け込んできた。
今の彼は、ウサギ耳を残しつつも元の姿に戻っている。
「絶対に魔力供給を絶たないで。もう、ミーとユキちゃんしか残ってない」
「ど、どうしてです! アンナお姉ちゃん達は!?」
「ミーにもわからない……だけど――」
「シャァァァア!」
タナトスの群れは衰えることなく迫る。アカネ達が戦闘不能となった今、その全てをジュンパクが一手に引き受けねばならない。
「とにかく! 解いちゃダメだからね!」
「は、はいです!」
アカネ達を下ろすと同時に、ジュンパクは群れへ突撃する。
「はぁぁぁぁあ!」
「シャァァァア!」
白い鎌がタナトスの首を裂き、鎖が抜け出した個体を絡め取ってユキへ近づけさせない。
さらに、あらかじめ仕掛けていた起爆魔皮紙が各所で炸裂し、爆音と共に爆炎が上がった。ジュンパクはその度に駆け、確実に仕留めていく。
「どうなってるの!」
{眠りの神【ヒュプノス】の世界に取り込まれたんだ、君だって朝起きた時にもっと寝たいと思うだろ?}
ジュンパクの鎌からツクヨミの声が聞こえて来る。
神聖が終わった武器は神が宿り、意思を持つのだ。
「こんな、時に!、冗談を言うな!」
{冗談じゃないさ、僕より下の神だから夜には機能できないけど、朝の神は気にしてなくてね……と言うより朝の神からすると寝てない生物の方を見ることが多いから黙認してるのかな?とりあえず、僕の力が弱まった今、君は死の神を1人で相手しないといけない}
「あーもぅ!現状はいいから!どうすればいいの!」
{彼の世界は僕みたいに完璧じゃない、だから夢が夢であると気付いたり夢の中で過度なストレスを感じたりすれば出て来れるよ……だけど、それは彼も知ってるから難しいね、結論から言うと僕たちが出来るのは少しでも早く起きて来るのを祈りながら待つしかない}
「待つって!簡単に!言ってくれる!」
{今の君は【限界突破】を維持するために僕の魔力を使ってる、まだまだ行けるけどここから先は君の集中力しだいだ、また夜になれば身体能力とかあげれるんだけどね}
「その辺に関しては感謝してるよ、ババアもびびってたみたいだし」
{はは、神聖していきなり初日で死ぬなんて事、ならないようにね?力を全てだせないけど出来る分はバックアップさせてもらうよ!}
「任せて、絶対にこの状況でもなんとかしてみせる!アニキなら諦めない!」
ジュンパクは気合を入れ直し集中する。
「…………i.t.m.e」
「シャァァァア!?」
首を斬り。
頭を斬り。
鎖で絡め、振り回し。
魔皮紙を起動させ。
また首を斬る。
タナトスとジュンパクの力の差はまだ圧倒的。
だが、ジュンパクは気付いていた。
__徐々にタナトスの数が増えている事を……
数時間後__
「はぁ……はぁ……こんな、ものでは……です」
結界に魔力を送り続けるユキはびっしょりと汗をかいていて目の下には隈が出来ている。
目眩もして意識が朦朧とするが魔力を全力で送り続けていた。
「ユキ……は……まだ……」
ユキは周りを見る、そして音を聞く余裕もなくなっていた。
だから聞こえなかった……
「逃げて!ユキちゃん!」
と言う、ジュンパクの声が。
「ユキ……は……」
「シャァァァ!」
「!?」
気付いた時には既にタナトスの鋭利な尻尾が無抵抗のユキに振り下ろされた時だった。
「っ……」
「フシャ!?」
だが、ユキは死ななかった。
確実にタナトスの尻尾はユキに命中し、頭部を貫通するはずだったが……
「フシャァァァア!!!」
ガン!ガン!とユキの身体に当たって重い音を出す。
「どうなって……る、です」
「ここまでよく耐えた、偉いぞ」
「え……」
そこには、神の使徒でも、国の代表騎士でもない。
「流石、私の娘だ」
1人の父親として、娘を守りに来た男が居た。