テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
20
番外編60『闇に染まる心と血の契約』前編
『貴方が――ヴァンパイアだったのですね――。どうして、こんな事を――!』
『……クスッ。』
私は牙を剥き出し、襲いかかった――。
『カット!きゃー!やっぱり貴方に頼んで正解だわ!』
『お、恐れ入ります…。』
ここは中央の大地の劇場。今回もこのオーナーに依頼を頼まれた。舞台に出て欲しいと。
今回の劇は屋敷に囚われた10名の中に1人、ヴァンパイアがいる。ヴァンパイアは夜に1人
人間を襲い、血を吸う。10人の中に1人紛れ込んだヴァンパイアを見つけ、処刑すること。
そのヴァンパイア役をわたしがやることに…。
『主様凄く素敵でしたよ。』
『あんな邪悪な顔が出来るとはな。』
『か、からかわないでよボスキ…。』
(恥ずかしい…。)
『でもいいよなぁ、主様と共演できる役者の人達は…。』
『ふふ、ロノちゃんがそういうと思って。』
『ま、まさか…!』
『そう!今回は執事ちゃんと主ちゃんが共演してもらうわ!』
そう言った瞬間執事たちの目がギラつく。
『主様日を吸われるってことっすか!?』
『ふふ、綺麗で美しいヴァンパイアの主様に血を吸われるなんて……名誉です。』
『いやまずそこに喜ぶんだ…』
『喜ぶのは早いわよ。10人の中でヴァンパイア役は1人、これは麻里衣ちゃん。そして、残りの9人の中の1人は百合菜ちゃんだから。』
『え、えぇ!?私演技なんて……』
『百合菜ちゃんは麻里衣ちゃん演じるヴァンパイアの妹。ただし、百合菜ちゃんは姉がヴァンパイアであることは知らない。切ない姉妹の関係をリアルに表現して欲しいの。』
『私に演技なんてできるかな…』
『ふふ、百合菜。大丈夫よ。私が教えるわ。』
『お姉ちゃん…』
『つまり、残りの8名が…主様と共演できる…。』
『えぇ。その決め方は……公平にくじで決めてもらうわ。さぁ、ここにくじがあるの。○が書いてあれば主ちゃん達と共演させてあげる。白紙の子達は今回の劇の準備を手伝ってもらうわ。』
(どっちにしても美味しい…でも、主様と共演したい!!)
執事たちはくじを引く。
そして、厳正なるくじの結果――
選ばれたのは
1階執事 ロノ
2階執事 ボスキ、アモン
3階執事 ルカス
地下執事 ミヤジ、ラト
別邸1階 ユーハン
別邸2階 ベレン
『くそー!』
『残念でしたね、ハナマルさん。』
『では、選ばれた8人は明日から演劇に出てもらうわ。フルーレちゃん、衣装凄いのを期待してるわ。』
『は、はい!任せてください!』
『これ、台本渡しておくわ。明日の昼にまたここで。』
『分かりました。』
その日の夜――
ダンス音楽練習部屋
ゲームマスター役は俳優さんがやってくれるということで私達はそれぞれの役に集中する。
とは言っても名前はそのままである。
『ヴァンパイア役なんて初めてだけど…頑張るしかないわね。よし。』
すぅ…と息を吐きセリフを言う。
『ふふ、フフフフフ…そう。私がヴァンパイアよ。このゲームの黒幕。人間によって、私は場所を失ったの。だから私が壊してあげるのよ。みんな壊れればいい。さぁ、貴方の血を寄越しなさい。』
『じー……』
『え?』
視線を感じてドアを見るとアモンがこちらを見ていた。
『あ、アモン!?いつから……』
『ヴァンパイア役なんて初めてだけど……から。』
『最初からじゃない……』
『流石主様っすね。動きに無駄がないっす。』
『あ、ありがとう。』
『俺も付き合うっすよ。確か俺は3日後の夜に主様に血を吸われるんすよね。』
『あくまでもフリよ。少し首筋を噛むだけ。それだけでもハードルが高いわ……』
『……今やってみるっすか?本番でも……上手くできるように。』
『え……?』
俺は首元はだけさせて主様に近づく。
『俺はいいっすよ。主様に噛み付かれても……』
『あ、あも……』
『こんな可愛いヴァンパイアに吸われて死ねるなら……本望っす。ほら、主様……。』
『っ…。』
私はゆっくりとアモンの首筋に近付き、甘噛みする。
カプッ。
『…へへっ。可愛い甘噛みっすね。』
『……バカ。』
『主様と共演できて嬉しいっすよ。衣装は明日っすけど、ヴァンパイア姿の主様を見たら…俺、惚れ直しちゃうっす。』
『っ……。』
次の日。
『麻里衣ちゃんは衣装が2つあるわ。これは人間の時の。こっちがヴァンパイアの衣装。早着替えをしてもらうわ。』
『が、頑張ります。』
『じゃあ第1幕から始めましょう。』
『はい!』全員
語り手『男女8人は館に集められた。そして、1人ずつ椅子に座らされて目を覚ましました。』
『ん、ここは…?』
『あ、起きたっす!』
『大丈夫ですか?』
『あ、貴方達は…。』
『私達も先程起きたばかりです。目が覚めた時既にここにいたんです。』
語り手『そこは薄暗い館。窓は固く閉じられていて簡単には開かないようだ。』
『お姉ちゃん…!』
『ゆ、百合菜…貴方もここにいたのね…。』
『2人は姉妹ですか?』
『えぇ。私達は双子の姉妹です。』
『なるほど…。皆さんここにいることについて心当たりはありませんか?』
『いや、ねぇな…。攫われることなんてしてねぇし…。』
『あぁ。俺も見覚えがねぇ。』
と、その時だった。
どこからか声がする。
『君たちがここに集められたのは必然。
いずれ出逢う運命にあったのだ。』
『だ、誰だ!』
『この屋敷の主であり、君たちの命の選別する者だ。君達にはこれからとあるゲームをしてもらう。』
『チッ。声が聞こえるだけでどこにいるかは分からねぇな…。』
『ふふ、私は君達には届かない存在ということだな。ルールを説明しよう。君達10人の中に1人、ヴァンパイアが紛れている。』
『……!?』全員
お互い顔を見合わせる。
『ヴァンパイアは夜に1人ずつ血を吸って君達を襲う。君達にはその中に1人紛れ込むヴァンパイアを見つけ出し、処刑してもらう。』
『ひ…!しょ、処刑って…。』
『フフ、言葉通りの意味ですね。』
『おい待てよ。俺達はそのヴァンパイアに殺されるしかないってことか?』
『安心してくれ。君たちの座る椅子の下にカードがある。そこには君たちの役職が書かれている。 』
『椅子って、さっき座ってた…』
『ホントね、何かあるわ。』
『役職のカードは全部で3つ。
村人8名。占い師1人。騎士1人。
村人はただの能力もない村人。占い師は誰がヴァンパイアか村人かが分かる。騎士は誰か一人選び守ることが出来る。そのカードは他人に見せることは許さない。もし、自分のカードを見せたり、誰かに言った場合は罰を下す。』
『ふむ…。』
『君達にはヴァンパイア1人を話し合いで見つけ出し、投票で怪しいと思う人を処刑する。
そして、ヴァンパイアは処刑から逃れるため残りの9名を騙し欺く。そして毎夜、人間を襲う。ただこれだけだ。ヴァンパイアを見つけ出したら君達はここから出られる。さぁ、命懸けのゲームの始まりだ。』
そこで声は途切れる。
『俺達に殺し合いをしろってことっすか…?』
『そんな、私達は初対面で今日初めて会った人を信頼するなんて…』
疑心暗鬼の雰囲気が流れる。
そこで口を開いたのは――
『みんな、まずは自分の役職を把握しよう。』
『そうですね。まずはそれからです。』
椅子の下のカードを剥がし、それを見る。
『……。』全員
カードを見たその瞬間から既に始まっていた。
冷たくて恐ろしい殺し合いの始まり。
『全員初対面ということだからまずは自己紹介でもしようか。とは言っても名前位は聞いたことある人もいるだろう。私はルカス・トンプシー。医者をしているよ。』
『聞いたことあります。誰もが認める名医だと。』
『ふふ、照れちゃうな。』
『私はシノノメ・ユーハン。とある軍の少佐をしています。』
『若いのに少佐をしてるなんてユーハン君は優秀なんだね。』
『それ程でもありませんよ。ふふ。』
『俺はボスキ・アリーナスだ。まぁ…。簡単に言うとインテリアのコーディネーターをしてる。』
『へぇ…凄いっすね。俺はアモンっす。園芸家で花屋をやってるっす。』
『フフ、花ですか…美しいですね。私はラト・バッカです。私は音楽家…とでも言っておきましょうか。』
『あはは…俺はベレン・クライアン。バーで働いているんだ。』
『俺はロノだ。屋敷のコックとして働いてる。で、貴方は…』
『ミヤジ・オルディアだ。ラト君とは面識があるよ。同じ音楽の舞台で演奏したことがあるからね。』
『あれ、そうでしたっけ。すみません私は覚えるのが苦手なので…。』
『それで最後は…』
『麻里衣です。探偵を営んでます。こっちは妹の百合菜。』
『は、初めまして。』
(緊張してるのね…。)
『麻里衣さん。貴方の名前は有名です。
美人で綺麗な探偵だと聞いていますよ。』
『そ、そんなことは…』
『ご謙遜なさらなくて大丈夫ですよ。貴方の推理力には期待しています。』
『あ、ありがとうございます。』
『さて…私たちの中に1人ヴァンパイアがいると言われたけど…。』
『……。』
『この状況で信頼し合うのは難しい。だけど、余計な血は流したくない。それは君達も同じだよね?』
『えぇ。殺し合いなんて…。』
『でも、ヴァンパイアなら陽の光を当たれば灰になって消えるんだし1人ずつ太陽の光に照らせばいいんじゃないか?』
『無駄だよ。外に繋がる扉は全部閉じられている。出入り出来るのは部屋の中だけ。』
『チッ。用意周到だな。』
『…すみません。先に言っておきます。少なくとも、私とミヤジさんはヴァンパイアではありません。』
『…!どうしてそう断言出来るのかな?』
『だって…。晴天の空の下で演奏したことがありますから。太陽の光に触れるものなら既に死んでいますから。』
『確かに…。』
『私とラト君はヴァンパイアからは除外されるということかな。そしたら。』
『お言葉ですが、それなら私達の方が確信に近いですわ。私達は姉妹ですから。お互いのことは何よりわかっています。私達2人はヴァンパイアではありません。』
『身内同士っていうのが怪しい点だとは思うがな。』
『どういう意味ですか?』
『そのまんまだよ。俺達は初対面なのにあんたら2人は姉妹でここに集められた。身内なら庇うのは当たり前だ。どちらかがヴァンパイアでも庇うのは当たり前ってことだよ。身内なんだからな。 』
『っ…!』
バチバチと火花が散る。
客席
『主様凄いな…。』
『えぇ。役に入り込んでいます。』
『ボスキも凄いね、威圧感が…』
『あぁ。』
『2人とも落ち着いて。疑いあっても意味ないよ。』
『ふん……。』
『っ…。』
ゴーン、ゴーン…。
『鐘の音…』
再びゲームマスターの声がする。
『夜の時間まで1時間を切った。君達はそれぞれの部屋で休んでくれ。カードに部屋番号が書かれている。』
『夜…っ。』
『ヴァンパイアが動き出す時間だ。君たちの命運を祈っているよ。』
『何が休めだよ。こんな状況でふざけやがって。』
『とにかく指示に従うしかありませんね。』
そして、夜が来てしまう。
ヴァンパイアに寄る最初の犠牲者は――
コツコツ…。
『あ、主様だ…』
『あれがヴァンパイアの衣装ですか…。』
『主様の綺麗さが際立つな。あの黒…闇を纏ったような感じ。ゾクッとするな。』
『はい…凄くかっこいいです。』
ギィィ…。
私は首筋に思い切り牙を立てる。
それと同時に血が滴り、舞台は赤黒く染まる。
『凄い演出だな。』
『ふふ、シロちゃん流石ね。うちの美術監督は凄いんだから。』
『シロ……ちゃんだと?』
翌朝――。
『みんなおはよう。あれ、まだ来てないのは…。』
『……ミヤジさんです。』
『っ、そんな、まさか…。』
ミヤジさんの部屋で変わり果てた姿で発見された。
首筋に牙を立てられ、部屋は血で染まっていた――。
『カット!第1幕は終了よ!みんな凄く良かったわ!』
『ありがとうございます。』
『次は第2幕ね。休憩したら始めましょうか。』
『ふぅ…。』
『お疲れ様です。主様。』
第2幕まで控え室で休む事に。
次回
中編へ続く!
コメント
3件
キャ〜帰って来たらヴァンパイアのイベントのやつの小説書いてるからびっくりした、🫢嬉しいめっちゃ好きだったんだよねーありがとう今日部活で描いたの夜あげるね
わあ、番外編も面白いですね!今回は演劇という舞台設定で、いつもと違う一面が見られるのが新鮮でした。特にアモンが練習中に自ら首筋を差し出して「主様に噛み付かれても…」ってシーン、ドキドキしちゃいました…。普段の温かい関係とは違う、甘くてちょっと危ない雰囲気がたまらないです。劇中劇の緊迫感もあって、ヴァンパイア役の麻里衣さんの妖しい表情が想像できます。中編も楽しみにしてますね!🦇🌹