テラーノベル
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「毒花園」この世界には、地図に載らない庭がある。
そこは“毒花園”と呼ばれていた。
美しい花だけが咲き続けるのに、
触れた者は必ず壊れていく場所。
それでも、人は時々そこへ迷い込む。
その庭には、花が“感情”を吸って咲くと言われていた。
愛を持って入れば、愛を奪われる。
執着を持って入れば、離れられなくなる。
寂しさを持って入れば、孤独が増える。
そして最後には、花の一部になる。
tgは、気づいたらそこに立っていた。
「……なにここ」
足元には、見たことのない花が咲いている。
赤い。
黒い。
紫に濁った色もある。
どれも綺麗で、どれも息をしているみたいだった。
「ねえ」
声がした。
振り向くと、prがいた。
「prちゃん?」
tgは少し安心したように笑う。
「よかった、一人じゃないんだ」
prは周囲を見回す。
「ここは危険だ。離れるぞ」
「え、でも」
tgは花に触れようとして、手を止める。
「なんかさ、見てると落ち着く」
その瞬間、花が揺れた。
「触れるな」
prの声が少し強くなる。
「それは“毒花”だ」
「毒?」
tgは首を傾げる。
「でも、綺麗だよ」
prは一瞬黙る。
そして低く言った。
「綺麗なものほど、人を壊す」
その言葉を聞いて、花が少しだけ濃く色づいた気がした。
夜になると、毒花園は変わる。
花が光る。
風が囁く。
そして——“心の声”が聞こえるようになる。
「prちゃん」
暗闇の中で、tgが呼ぶ。
「なに」
「ここ、ちょっと変だね」
「今さら気づくな」
でもtgは笑っている。
「ねえ、prちゃんってさ」
一歩近づく。
「俺のこと、どう思ってる?」
その瞬間。
周囲の花が一斉に揺れた。
prは一瞬言葉を詰まらせる。
「……くだらない質問だ」
「でも、答えてよ」
沈黙。
その間にも、花は増えていく。
まるで感情を吸い取るように。
「邪魔だと思ってる」
prはそう言った。
tgは少しだけ目を見開いて、それから笑った。
「そっか」
でも、その笑顔はすぐに崩れなかった。
むしろ——花が濃く赤くなった。
「じゃあさ」
tgはしゃがみ込んで、花に触れる。
「俺がいなくなったら、楽になる?」
prの呼吸が止まる。
花園が、静かにざわつく。
「……やめろ」
prの声は低い。
「そういうことを言うな」
「なんで?」
tgは不思議そうに言う。
「だって、邪魔なんでしょ?」
その瞬間。
prの胸の奥で、何かが軋んだ。
“邪魔だと思っている”はずなのに、
それが消える想像ができない。
花が揺れる。
その揺れは、まるで心臓の鼓動だった。
prは気づく。
この庭は、人の感情を“そのまま形にする”。
そして今、この場所には——
「執着」が生まれている。
「prちゃん」
tgがもう一度呼ぶ。
少しだけ距離が近い。
10
「俺さ」
「……やめろ」
でも止まらない。
「ここに来てよかったかも」
その言葉で、花園が一気に色を変えた。
赤から黒へ。
黒から紫へ。
“依存”が芽を出す音がした。
prは一歩踏み出す。
「帰るぞ」
でも、足が動かない。
見えない根が、二人の足元に絡みついている。
tgはその様子を見て、少しだけ嬉しそうに笑った。
「ねえ、prちゃん」
「ここさ」
一拍置く。
「出たくないかも」
その瞬間、花が満開になる。
prは理解する。
ここは“毒”の庭じゃない。
人の中にある「壊れた感情」を、
そのまま花にして閉じ込める場所だ。
そして今咲いているのは——
逃げられない愛だった。
「……くだらない」
prはそう言う。
でも、その声はもう強くない。
tgは笑う。
「でもさ」
「prちゃんも、ちょっと綺麗だと思ってるでしょ」
沈黙。
否定できない。
毒花園は今日も咲き続ける。
誰かの“好き”を吸いながら。
誰かの“離れたくない”を育てながら。
そして二人はまだ気づいていない。
この庭から出られない理由が、
花のせいなのか、それとも——自分たちのせいなのかを。
コメント
1件
ぷりちゃん……実は一番ちぐちゃんに依存してるとか……?