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エリオスは胸の高鳴りを抑えきれなかった。
先ほど丘の上で感じた異変――星々の異様な輝きと不気味な風の囁きが、彼の心に不安と興奮を同時にもたらしていた。
足は自然と村の川へと向かっていた。
何かが彼をそこへ導いているような感覚があった。
夜の川辺は静寂に包まれていた。
しかし、その静けさの中で、水面がかすかに光を放っているのが目に入った。
エリオスは近づき、その光の正体を確かめようとした。
川面には見慣れない金属の欠片が浮かんでいた。
月明かりに反射して、冷たく鋭い輝きを放っている。
「これは一体…?」
彼は手を伸ばし、その欠片を拾い上げた。
手に伝わる冷たさと重量感が、ただの金属ではないことを示していた。
表面には見たことのない紋様や文字が刻まれており、それがかすかに光を放っている。
心臓の鼓動が早まる。 まるでこの欠片が、自分に何かを伝えようとしているかのようだった。
その時、背後から静かな声が聞こえた。
「それは、お前の手に渡るべきものだ」
驚いて振り向くと、黒いマントを纏った男が立っていた。
彼の片腕は機械でできており、その金属の光沢が月明かりに照らされていた。
鋭い眼差しがエリオスを見据えている。
「あなたは…?」
エリオスは言葉を絞り出す。 男の存在は突然でありながら、不思議と恐怖は感じなかった。
しかし、その場の空気が一変したことは確かだった。
「私はアルノス。この世界ともう一つの世界を行き来する者だ」
「もう一つの世界…?」
エリオスの頭には疑問が渦巻く。だが、心のどこかで彼の言葉が真実であると感じていた。
「お前は感じているはずだ。世界の均衡が崩れつつあることを。
そして、お前自身がその鍵を握っていることを」
アルノスの言葉に、エリオスは目を見開いた。 自分が何か特別な存在であるという自覚はなかった。
しかし、最近の異変や夢、そしてこの金属の欠片が示すものは、彼の運命が普通ではないことを示唆していた。
「でも、どうして僕が…?」
「それはお前が『境界を越える者』だからだ。二つの世界を繋ぎ、そして救うことができる唯一の存在だ」
アルノスの瞳には深い悲しみと決意が宿っていた。
エリオスはその眼差しに圧倒されながらも、自分の中で芽生える覚悟を感じていた。
「僕に何ができるのかはわからない。でも、放っておくことはできない。教えてほしい。何が起こっているのかを」
アルノスは静かにうなずいた。
「では、共に来るがいい。時間は限られている」