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今回も最高💕もう2人の部屋の間の壁無くす(?)
高等部の消灯時間は中等部より少し遅いとはいえ、深夜2時を回れば、廊下は完全な静寂に支配されます。
ジンクスを噂する同級生たちも、まさか夜中にこんな光景が繰り広げられているとは(薄々感づいてはいても)確信までは持っていないはず。これは、完全個室になった高等部棟で、二人が密かに守り続けている「聖域」のような時間でした。
(トントントン……)
滉斗の部屋のドアが、まるで羽が触れたような小さな音で叩かれます。
眠りが浅かった滉斗は、その微かなリズムだけで「あいつだ」と気づき、迷わずベッドから抜け出して鍵を開けました。
ドアの向こうには、幼い頃から大切にしているぬいぐるみを胸に抱え、パジャマ姿で少し肩をすくめた元貴が立っていました。
「……ひろと。起こしちゃった?」
「……いや、起きてた。入れ」
滉斗は何も聞かずに、元貴を部屋の中へ招き入れます。月明かりに照らされた元貴の瞳は少し潤んでいて、まだ夢の残像に怯えているようでした。
「……怖い夢、見たのか?」
「うん。……なんだか、ひろとが遠くにいっちゃう夢。呼んでも、音が聞こえないって言われて……」
「バカ。俺がお前の声を無視するわけないだろ」
滉斗は元貴を自分のベッドに促すと、自分もその隣に横たわりました。中等部の頃より少し広くなったベッドですが、二人は自然と、壁際で体を寄せ合います。
元貴が抱えていたぬいぐるみをそっと脇に置き、代わりに滉斗の腕の中に潜り込みました。
「……ひろとの心臓の音、やっぱり一番落ち着く」
「お前、さっきから心臓の音ばっかり言ってるけど、俺だって緊張してんだからな」
「えへへ、知ってるよ。ちょっと早いもんね」
理由はその日によって様々です。
今日のように、悪夢の残像を消したい夜。
風の音が強すぎて、耳が休まらない夜。
あるいは、何の理由もなくて、ただただ「一人で寝るのが寂しい」だけの夜。
一人一部屋になったことで、二人は「自分の居場所」を持つことができましたが、それと同時に「いつでも相手を求めていい」という確信も深めていました。
「……もとき、もう大丈夫か」
「うん……。おやすみなさい、ひろと」
「ああ。おやすみ」
元貴の規則正しい寝息が聞こえ始める頃、滉斗は元貴の背中を優しく叩きながら、自分も深い眠りに落ちていきます。
翌朝、401号室(滉斗の部屋)から二人並んで出てくる姿をクラスメイトに見つかり、「やっぱりお前ら、部屋分ける意味あったか?」と呆れられるまでが、セットの日常。
同級生たちは、元貴が夜中にどれほど心細い思いをしていたかまでは知りません。
けれど、滉斗の部屋から出てくる時の元貴の顔が、いつもよりずっと晴れやかで安心しきっていることだけは、誰もが認めるところでした。
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