恋の色紙に想いを込めて
・1話完結
・赤この
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1,俺らの朝
何気無い普通の毎日が続く12月。
今日も梟谷学園高校のバレー部は
“春高で優勝する”という目標を持ち
朝から学校へ来ていた。
「おはようございます。」
「お、赤葦はよ~ 今日も早いのな。」
そう言うのは3年の木葉さん。
単刀直入に言えば俺はこの人が好きだ。
木葉さんはいつも一番乗りで体育館に来る。
それを知ったのは2年の初め、
その時既に俺は木葉さんを好きだったから
2人きりになれる時間を見つけられ、
それからは俺は2番目に体育館へ
来るようになった。
「木葉さんの方が早いじゃないですか。」
「まぁ早く部活したいし!!」
「なるほど…?」
「赤葦も、なんでいつも早いの?
まだ7時じゃん。」
「えっ」
さて、どうしようか。
1,素直に言う→言えるものか
2,話を反らす→それを指摘されたら終わり
3,逃げる→変人に思われるし、木葉さんと
一緒にいる時間が減ってしまう
4,嘘をつく→1番マシだが心が痛い
なんて究極の選択なんだ…。
よし、これにしよう…!!(この間 0.5秒)
「実は…木葉さんと2人きりに
なりたかったんですよね」
「…」
「え…ちょま、え!?」
「どーゆー事だよっ!///」
「おや、まさか本当にそうだと
思ったんですか?嘘ですよ、可愛いですね」
「うるせーしばくぞッ!!!」
「笑」
「笑ってんじゃねーッ!!!」
これがあるから辞められない。
そう、この木葉さんの照れ顔と
怒り顔を見る事。
言葉を聞いただけだと俺はただの変態だが
実際見るとそんな事言えなくなる。
本当に可愛いんですよ、この人。
俺が狙ってるの気づいて誘ってるのかな?笑
「おはよーっ!!!」
「木兎うるせーっ!!!」
「おい木葉ブーメランだぞw」
「今日も朝からうる…騒がしいねー」
「おいサル!お前 “うるさい”って
言おうとしてただろ!」
「事実だから仕方ないな」
「鷲尾までっ!」
こうして他の部員が集まれば、
俺と木葉さんの2人きりの時間は終わり、
本格的な朝練が始まる。
春高間近、春高が終われば3年は
引退だという12月になろうとも、
その実感は湧かないものだ。
だからこそ…ずっと続くと思っていた。
この日常が…、でも、現実は
妄想のようにはいってくれないのだ…。
2,別れたセンパイへの質問
2013, 1⁄10
春高が終わり、3年生が部を引退した。
どうせあの人達の事だ、またちょこっと
顔を出しに来るだろう。
でもスタメンの大半が3年生を占めていたため
体育館は少し寂しい。
いざというときのスパイクは目を惹かれる程
強烈で、憧れる猿杙さん。
ブロックの要であり、対面すると威圧感が
ある、でも実は優しい鷲尾さん。
ムードメーカーで、いつも眩しい笑顔を
振り舞ってくれた小見さん。
梟谷の大エースとして、何度も
助け、活躍してくれた木兎さん。
そして、
器用でどこか落ち着きが無いけど、
試合になると凄く冷静で、ファインプレー
を何度もしてくれた。
可愛くて、格好いい木葉さん。
こんな人達が抜けてしまえば、俺達梟谷は
しばらく大変な事になるだろう。
今年中は少しだけ先輩を
頼ってしまうかもしれないな。
でも、いい。
先輩達はそんな事では怒らないし、
むしろ喜んで手伝ってくれるだろう。
休み時間
「あの、少し時間頂いてもいいですか?」
「珍しいね、どうしたの?」
「なんでも聞きたまえあかーしッ!」
「お前に何を聞くんだよw」
「なんだと小見やん!!」
「…話してもいいですか?」
「「スミマセン、ハナシノ、
ツヅキヲ、ドウゾ。」」
「えっとですね…後輩への指導って
どうすればいいのかと…」
「そっか、赤葦キャプテンか~!」
「はい。でもトスとサーブ以外はどう
教えたらいいのか…」
「赤葦はレシーブも上手いからさ、
そこは自信持ってもいいんじゃない?」
「なるほど…」
「ブロックも上手だな。」
「ありがとうございます。」
先輩に褒めてもらうって
意外と嬉しいものだな…笑
「でもブロックの方は尾長に
任せようと思います。」
「アイツには荷が重くねぇか?笑」
「俺より上手いですし、
もし尾長が自信なさげでしたら
鷲尾さんがフォローして下さい。」
「ずっと後輩の側にいてやれる程
暇ではない…」
「なになに?彼女??w」
「そんなのを作る暇こそない。」
「悲しい男だねー」
「ここにいる全員そうだろう。」
「あの~…話が反れてますよ…?」
「スミマセン。」
この人達はそういう年頃なのだろうか…
いや…そうだな。
高校生なんて青春真っ只中なのだから。
にしても話が反れたら止まらないな…
この人達は…
「相談乗ってくれてありがとうございます。
参考になりました。」
「大した事言ってねぇけど…まぁ…」
「あかーし頑張れ!」
「頑張れよ!そんで優勝してこい!」
「大好きだぞぉ!俺の可愛い__」
「頑張れって言ってもたまには休んでよー?
あと、尾長にも。」
「おい被ってく___」
「応援してるから。」
「ふふっ、ありがとうございます。」
「それじゃあ時間も時間ですので。」
また会いましょう。
先輩の皆さん___
3,ハプニング卒業式
3⁄17
梟谷学園高校の3年生は今日が卒業式だ。
皆、胸元に綺麗な花のコサージュを付け、
背筋が伸びている。
それはまるで、俺らの理想の先輩の姿だ。
俺ら2年と3年の親、先生達は既に
体育館で3年の入場を待っている。
「それでは、2013年、梟谷学園高校の
卒業式を開始致します。」
「皆様、盛大な拍手でお迎えください。」
まずは1組が入ってくる。
そこには木兎さんの姿があった。
満面の笑みを浮かべており、
真っ直ぐを向いてるのでこちらには
気付いていない。
俺は気付かれないし、既に大きい音に
包まれているのでさほど変わらないが
拍手を強めた。
次は2組が入ってきた。
既にボロ泣きの小見さんと
それに笑いを堪える猿杙さんの姿が見えた。
どうやら猿杙さんは俺に気づいたようで、
手を振ってくれた。
俺は先生にバレない程度に返す。
あ、小見さんも気づいた。
てか顔くしゃくしゃだな 笑
次に3組が入ってくる。
俺が木葉さんを好きなのか、
単に髪が目立つのかは分からないが
すぐ見つけられた。
木葉さんは小見さん同様、既にボロ泣き。
泣いてる姿まで可愛いとか天使でしかない。
俺は密かに…いや、それなりの声を
出してもバレないけど一応密かに
「可愛い」と呟いた。変態じゃないですよ。
3組…4組に続き、最後の5組が入場してくる。
鷲尾さんは背が高いからすぐ見つけられた。
シンプルに圧が凄い。
前の生徒なんて軽く震えてるし、
こちらに気づいて軽く会釈してくれたので
こちらも返す。
これで、全員の入場が終わった。
次は卒業証書を受けとる。
木兎さんとか目立ちたがり屋だから
何もやらかさないといいけどな…
あ、次木兎さんだ…
「木兎 光太郎」
「ハイッッッ!!!」
これまでで1番大きな声だ。
さすが木兎さんだな 笑
そして…本当に何もしないでくれ…
このまま終わって___
「皆ーッ!!!」
「今までありがとーッ!!!」
…あぁ、知っていた。
木兎さんがああいう人って事は
もうとっくに知ってたよ…笑
「サル!小見やん!木葉!鷲尾!!!」
「3年間!ありがとう!!大好き!!!」
「アイツ馬鹿だろ…w」
「こういうのは、素直に
こう言えばいいんだよ」
え?猿杙さん???
なんで立ち上がって…
「俺の方もありがとー!大好き!」
あぁ__
こうなってしまえば…もううちのバレー部は
誰にも止められないな 笑
すいません。皆さん。
「木兎ー!俺もありがとー!」
「Thank You!!」
「小見やんありがと!
木葉!俺英語分かんねぇわ!!!」
大勢の前であの人達は…まぁ
さすがに鷲尾さんは…….
「鷲尾ー!お前もなんか言え!」
…こ、木葉さーん!!!??
貴方なにしてくれてるんですかっ!
もうバレー部やべぇみたいな噂に…
いや、既になってますゲド!
「木兎、ありがとう」
「おー!また会おうな!
まだ会えるけど!」
うん…なんか楽しそうだからいいや。
俺はこのまま__
「赤葦ぃいいい!!!」
「!?」
「最高のトスありがとー!」
*「ええっ!…と…どういしまして…!* 」
“悪目立ち”…というやつだな……
でも…いいや、仲間とこうやって
言葉を交わす事だって、後少ししか
できないのだから。
今は精一杯、先輩達の卒業を喜べばいい。
4,記念撮影
こうして、俺は無事ではないが、
卒業式が終了した。
後は3年生達で各々撮影をすれば
もう…ここでの生活は終わる
「おーい赤葦!!こっち来い!!」
「はい!」
「あっ!山ち先生写真撮って!!」
「よし、皆全力で笑えよ!?」
「言われなくても笑うっての!」
「おい!誰か鷲尾笑かせぇえ!!」
「撮るぞー!ハイ、チーズ!」
「どんなの撮れた!?」
「おい木葉笑えよー!w」
「目から鼻水出てるだけで笑ってるしッ!」
「鷲尾の笑顔物騒すぎるだろ!w」
「失礼だな。」
「まぁ個性って事にしましょう…笑」
その後は凄く面白かった。
写真撮る時ってなんでピースじゃなくて
チーズなのかな?とか、
皆で部活とか、勉強の話して、
桜が散る下で笑う皆さんは…まるで
神様みたいに輝いている。
もうすぐこの人達とお別れなのか…
あ、そういえば…まだ言ってない事が
あったな。
個人的に、“あの人”へ言うことが___
5,謎の折り紙
話も終わり、解散したというのに
皆さんはまだここにいる。
本当にここが好きなんだな。
俺も行くか…“勝負に”
俺が目指すは桜の下で写真を撮ってる
木葉さんのもと。
「あの、木葉さん。」
「あ、赤葦。どうした?」
「少しだけ話をしてもいいですか?」
「…うん。いいよ。」
「ずっと…好きでした。」
「…!!」
「もう、別れちゃいますけど
俺は一生木葉さんの事、忘れません。」
「おいっ…!!」
「…どうしましたか?」
「俺はお前の事忘れるけど
お前は俺を忘れない…みたいに
言ってんじゃねーよ…!!」
「え…?」
「忘れるわけねぇだろ…2年間一緒に
戦ってきた仲間の事…!!」
「っ…!!」
「ありがとうございます…!!」
木葉さん…俺を憶えようと
してくれてるんだな…
一生の思い出として…
あぁ__
なんて幸せなんだろう。
本当は“これ”は、教室から飛ばそうと
思っていたが、やっぱり、本人に渡そう。
「木葉さん」
「ん?」
「これ、受け取って下さい。
あ、中身は家で見て下さいよ?」
「んだこれ、紙飛行機?」
「本当は…教室から飛ばして木葉さんが
拾ってくれたら、とか思ってましたが」
「やはり本人に渡したくて。」
「よく分かんねぇけどありがとな!」
「はい、それでは…愛してます。」
「っ!?///」
「あ~もう!アイツ去り際に
そうゆう事言うなよッ!!!///」
6,紙飛行機の中身【木葉視点】
桜とかの写真撮ってたらいきなり
後輩の赤葦に紙飛行機を渡された。
なんだ?これで遊べと?
アイツの考えてる事って読めないんだよな…
…あれ?今文字見えなかったか?
あ、文が書いてる。読むか。
木葉 秋紀さんへ
まず、口頭ではなく、手紙になってしまい
すみません。
どうしても口で言うと緊張してしまうので、
長文にはなりますが、これを読んで頂けると
幸いです。
まず、卒業式後にも言いましたが、
俺は2年の頃から木葉さんの事が好きでした。
入部したばかりの頃は、チャラそうな先輩
だな、とか思いました。
でも2年の時、俺は朝早くに学校に着いたため、
誰もいないであろう体育館へ行くと、
1人で練習している木葉さんがいました。
その熱心に自主練してる姿に自然と俺は
惹かれていました。
好きになってから、どんどん木葉さんの
良いところを見つけていきました。
頭が良いこと。
老若男女問わず、誰にでも優しいこと。
恥ずかしがり屋なこと。
天然なこと。
髪がサラサラなこと。(変態じゃないです。)
下手すると女性よりも体が細そうなところ。
もっともっと、あります。
そんな木葉さんの絶えない程に沢山ある
素敵なところに恋しました。
困るようでしたら返事はいりません。
ただ、木葉さんが“好き”という事を
伝えたかっただです。
それでは、貴方の幸せを願っています。
赤葦 京治
「っ…んだよこれ…!!」
「あーッ!!!赤葦!!
待ってろやぁあああ!!!
自分でも分からない、何故、今自分が
赤葦のもとへ走っているのか。
でも、このまま終わるのは駄目な気がした。
いや…単に俺が会いたかったのかもしれない。
「はぁ…はぁ…クソっ!
アイツどこだよっ!」
「っ…赤葦…赤葦!!!」
駄目だ、これ以上走ったら足が千切れそうだ。
でも、止まってくれない。
俺の足はきっと赤葦を見つけるまで
止まらない。
「ハァッ…ハァッ…赤葦!あかッ___」
あぁサイアクだわ…人前で転けて…
普通にいてぇしな、
もう赤葦責任とってくれるのか!?
まぁ八つ当たりだけど…笑
もう起き上がりたくねぇ、このまま
赤葦がここに来てくれねぇかな…
「あれ、木葉さん?」
「こんな所で寝てたら…___!!」
「ちょっと!血出てるじゃないすか!」
「あの!?木葉さ__」
「赤葦ッ!!」
「!?」
「お前なあッ…あんな告白の仕方されたら…
“俺も好き”って返事したくても
できないだろッ…!!」
「え…?」
「俺の幸せを願う?お前無しでどうやって
幸せになるんだよ!!!」
「さっきは照れて流してたけど、
この際はっきり言わせてもらう。」
「赤葦。好きです。
俺と…ッ…一緒に幸せになってくれますか…?」
「っ…はい…ッ!喜んで…」
「感動の再開の後は告白じゃなくて
プロポーズかよ!w」
「おめでと~」
「今日は祝福に飲み会でもするか!!!」
「まだ未成年だ。」
え?は?いやいや!何でお前らいるんだよ!
ホラ!赤葦とか今までで見たことないような
顔してるし!!
ツッコミどころ…というか聞きたいところ
満載だわ!!
「おめーら何でいるんだよ!!
ハズイところ見てんじゃねーッ!」
「仲間が結ばれる瞬間を
見に来ただけの事よ!!」
「正式にはたまたま会って盗み聞__」
「そこは黙ってればいいから!」
「てことで改めて、、、」
「「「「おめでとー!」」」」
コイツらなぁ…最初から俺らの恋愛事情
知ってたのかよ…まぁ嬉しいし、
ここは素直に___
「ありがとっ!」
「必ず木葉さんを幸せにします。」
「俺らは木葉の親父でもお袋でもねぇぞw」
「まぁお幸せに!」
こうやって俺の告白もといプロポーズ
は、無事成功した。
成功つっても、赤葦の気持ちはあの手紙で
知ったいたのだから、普通のプロポーズ
よりかは簡単だし緊張も少ないけども。
でもやっぱり自分の気持ちを伝えるって
恥ずかしいのな。
俺らは卒業したからもうあそこへは
行けない。
それでも、大好きな後輩の赤葦、尾長。
大切な同級生の木兎、小見やん、サル、鷲尾。
この皆と、大人になってもずっと
“親友”の関係を持っていたいな。
いや、赤葦の場合…“恋人”だろうか。
そんなことを考えてるいると、俺の頭に
ほんの少しだけ咲くのが早かったであろう
胡蝶蘭の花びらが散ってきた__。
END
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あとがき(?)
初めてノベルで書いたので、まだ下手な
ところはありますが、いかがでしたか?
なんか急に小説を書きたくなったので
書きました。
因みに、胡蝶蘭の花言葉、咲く時期ですが、
花言葉—幸福が飛んでくる
時期 —4月~5月
だそうです。
おわり
コメント
8件
え 、さ い こ ~ 言 っ て な か っ た の で フ ォ ロ ー 失 礼 しま す 。