アーサーside
約束の当日。
LAINで集合場所になったヘタ公園に着き、噴水の前にあるベンチに座った。
『ついたぞ。噴水の前にいる』とだけメッセージを送る。通話かけた方が良かったか?とも思ったが、既読が付くのは早く、『私もつきました』とメッセージが返された。
スマホから目を離し、前を向くと本田がこちらに向かって手を振っているのが分かった。
(ハムスターみてぇ…)
「よう。で、俺は着いてけばいいんだな?」
「はい。ここからすぐなので」
本田の家は、徒歩5分ぐらいのところだった。標識はなく、庭には野菜が育ててある。どこにでもあるような家だった。
「ささ、入ってください、!兄が来る前に、」
「ずいぶん急かすな。そんな会わせたくないのか?」
「はい、!ちょっとこちらの事情で…」
そんな事を話していたら、キッチンから人影が出てきた。本田はなんだか焦った顔をしているし、きっとこの人が本田の兄なのだろう。バレたものは仕方がない。挨拶でもして、とっとと本田の部屋に行こう。
「き、菊……菊が……」
「な、なんですか、」
「菊が、あいつ以外の友達を家に連れてきたあるー!!」
「夢じゃないあるよな!?」
「そ、そりゃあ連れてきますよ!なんなんですか、!」
「あいやー、我感激ある!!すぐにお菓子とお茶用意するあるよ!」
「分かりました、!分かりましたから、!」
「……」
本田の兄と聞いて、まぁ義兄だから性格は多少違うだろうなと、どんな人だろうと思っていたが、こんな個性が強い奴だったなんて………あとなんかあるある言ってるし。挨拶するつもりだったが、衝撃的な展開に口が開かなかった。
「ほら、アーサーさん、早く私の部屋行きましょう」
「あ、あぁ、そうだな」
本田に連れられ、早足で階段を駆け上がり部屋に招かれた。
「すいません、お見苦しいところを……」
「いやいや、んなこと思ってねぇって、」
「……まぁ、ゲームでもして紛らわしましょうか、」
「マリモカートでいいですか?」
「あぁ」
本田がカセットをはめ直し、コントローラーの接続を確かめる。
部屋を見渡す。家族写真、本と漫画がしまってある本棚、勉強机に、ベッドが目に入る。部屋をチラチラ見ていると、本田に「あんまジロジロ見ないでください。」なんて怒られる。
「じゃあお前を見ればいいか?」
そんな意地悪じみた返事をすると、「テレビ見てください!」と少し顔を赤らめて言われ、ウブな彼に口元が緩んだ。
すると、本田の部屋のドアが開き、お兄さんがお菓子とお茶を持ってきてくれた。
「どうぞあるー。嫌いなもんねぇあるか?」
「はい。ありがとうございます」
「てゆうか、驚きあるな。菊が家に他の友達連れてくるの。初めてじゃねーあるか?」
「もう、余計なこと言わないで下さいよ。下戻って下さい」
「そんな硬いこと言うなあるよ〜」
「はぁ…」
「はは、仲良いな。お前ら」
「仲良くないですよ」
「え!?じゃあ毎朝ハグうぐ!?」
「もう、喋らないで下さい!」
「あ、てゆうか本田、俺達友達じゃないだろ。恋人だろ?間違ったこと教えんなよな」
その瞬間。辺りがシン、と静まり返った。最初に口を開いたのは本田のお兄さんだったが、
「な、!?」
「お、お前、なに我の弟に手出してるあるかあぁ!!??」
「!?」
急に胸ぐらを掴まれ、体をぶんぶんと揺らされた。
「ちょ、おま!落ち着けって!」
「ち、違います耀さん!これは、!」
「いや違わないある!菊と結婚すんのはこの我ある!お前なんかにぜってー菊は譲らねぇあるよ!」
「え!?お前、こいつと付き合ってたのか!?」
「それも違います!」
まさにカオスな状態が生まれた。それに今思い出したが、このあるある言ってる茶髪の人……俺が去年、料理が下手すぎてクビになったバイトの先輩じゃねぇか。なぜこんな癖が強い人を忘れていたのだろう。
「てかお前!あん時のダークマター野郎じゃねぇあるか!」
あ、気付いた。って俺どんな覚え方されてんだよ!?
「もしかしたらと思ってたあるが……やっぱり菊の倒れた原因はお前だったあるか!今すぐ成敗してやるよろし!」
「それは本当に悪いと思って、!」
「耀さん落ち着いて下さい、」
「我は認めねぇあるーーー!!!」
結局その日は、本田のお兄さんに追い返された。
本田side
遊びの当日を迎え、集合場所になったヘタ公園に向かった。
LAINでもう着いたかを確かめようと、『もうつきましたか?』とメッセージを送ろうとすると、『ついたぞ。噴水の前にいる』とメッセージが送られてきた。すぐ既読をつけてしまったことに羞恥を感じながら、『私もつきました』とメッセージを返した。
スマホから目を離し、入口から公園を見渡すと、噴水の前のベンチに座ったアーサーさんと目が合った。手を振ってみると、すぐにアーサーさんは私のところへ向かってきた。
「よう。で、俺は着いてけばいいんだな?」
「はい。ここからすぐなので」
正直、耀さんが居ない日が良かった。
なんてったって、アルフレッドさんしか家に連れて来なかった私が、他の友達(仮)を連れてきたなんて知られたら、アーサーさんに耀さんのブラコンっぷりを晒してしまうことになるからだ。例えるなら、余計に友達に絡んで余計な事を言うめんどくさい母親みたいなものだ。
それに、嘘告だとしても付き合ってるのを知られるのはまずいだろう……。言い訳の余地が無くなる、
だが、今日に決まってしまったのなら仕方がない。バレないよう、アーサーにはすぐに部屋に入ってもらおう……。
そんな作戦を立てている内に、家の前に着いた。
「ささ、入ってください、!兄が来る前に、」
「ずいぶん急かすな。そんな会わせたくないのか?」
「はい、!ちょっとこちらの事情で…」
家に入り、階段まで向かおうとしたところ、まるで狙ってたような良いタイミングでキッチンの扉が開いた。
出てくるのなんて1人しかいない。
「き、菊……菊が……」
「な、なんですか、」
「菊が、あいつ以外の友達を家に連れてきたあるー!!」
「夢じゃないあるよな!?」
ああ……やってしまいました………。
「そ、そりゃあ連れてきますよ!なんなんですか、!」
「あいやー、我感激ある!!すぐにお菓子とお茶用意するあるよ!」
「分かりました、!分かりましたから、!」
「……」
早く部屋に逃げ込むように「ほら、アーサーさん、早く私の部屋行きましょう」とアーサーさんを急かし、早足で階段を駆け上がり部屋に招いた。
「すいません、お見苦しいところを……」
「いやいや、んなこと思ってねぇって、」
気まずい空気が流れる中、とりあえず気持ちを切り替えるために「……まぁ、ゲームでもして忘れましょうか、」とゲームに視点をやった。
「マリモカートでいいですか?」
「あぁ」
カセットをはめ直し、コントローラーの接続を確かめる。
アーサーさんに部屋をジロジロ見られるのが恥ずかしく、「あんまジロジロ見ないでください」と言うと、
「じゃあお前を見ればいいか?」
なんて本当の恋人のような事を言われ、変に意識してしまった。嘘告なのは分かってる分かっているが、顔には勝てないと分からせられる。
「テレビ見てください!」と、照れているのを紛れます為に言ったが、こちらを見てニヤニヤしているので、多分照れた事は気付かれているだろう。このタラシめ……
すると、部屋のドアが開き、耀さんがお菓子とお茶を持ってきてくれた。
「どうぞあるー。嫌いなもんねぇあるか?」
「はい。ありがとうございます」
お礼を言い、出ていくかと思ったら、なんと私のソファに座り、「てゆうか、驚きあるな。菊が家に他の友達連れてくるの。初めてじゃねーあるか?」と、サラッと会話に入ってきた。
「もう、余計なこと言わないで下さいよ。下戻って下さい」と、帰らそうとするが、「そんな硬いこと言うなあるよ〜」と、なかなか帰ろうとはしてくれなかった。
「はは、仲良いな。お前ら」
「仲良くないですよ」
気遣ってくれてるのだろうか。中途半端な優しさは、私の羞恥心を増やしていくだけだった。
「え!?じゃあ毎朝ハグうぐ!?」
「もう、喋らないで下さい!」
「あ、てゆうか本田、俺達友達じゃないだろ。恋人だろ?間違ったこと教えんなよな」
その瞬間。辺りがシン、と静まり返った。そう、もしもの1番最悪な可能性だった。アーサーさんには最初に言っとくべきだったなと思ったが、時はもう既に遅かった。
「な、!?」
「お、お前、なに我の弟に手出してるあるかあぁ!!??」
「!?」
耀さんはアーサーさん胸ぐらを掴み、体をぶんぶんと揺らした。案の定すごく怒っている。私は誤解を解こうと話しかけるが、
「いや違わないある!菊と結婚すんのはこの我ある!お前なんかにぜってー菊は譲らねぇあるよ!」
「え!?お前、こいつと付き合ってたのか!?」
「それも違います!」
と、また変な誤解を生むだけだった。
「てかお前!あん時のダークマター野郎じゃねぇあるか!」
「もしかしたらと思ってたあるが……やっぱり菊の倒れた原因はお前だったあるか!今すぐ成敗してやるよろし!」
え!?なんで耀さんその事知ってるんですか!?あたふたし、訳が分からず、耀さんを止めようと腰にしがみつくぐらいしかできなかった。
「それは本当に悪いと思って、!」
「耀さん落ち着いて下さい、」
「我は認めねぇあるーーー!!!」
その日の出来事は、私の人生の黒歴史に刻まれた。
コメント
2件
えええ..めっちゃ好きです..🥹 フォロー失礼しますね!