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朝から様子がおかしかった。
通学路、拓実は口数が少なく、スマホを触る手すら重そうだった。授業中もぼんやりしていて、昼休みに声をかけても「うん」としか返ってこない。
jn「……なんかあったんかな」
帰り道、純喜は気になってしょうがなかった。拓実が怒っているというより、塞ぎ込んでいるように見えたのだ。原因は聞いても言ってくれないだろう。けど放っておくのも違う気がする。純喜はコンビニに立ち寄り、お菓子売り場をしばらく見つめた。
拓実が好きなチョコあんぱん。新作のストロベリーフレーバーがあったけどまた今度。これと、定番のプリン。あと、最近気に入っていたオレンジティー。レジ袋を手に、家まで足早に向かった。
拓実の家には、合鍵で入るのがいつものこと。リビングには明かりがついていて、拓実はソファで丸まってスマホを握っていた。
jn「たく」
呼びかけると、拓実はゆっくり顔を上げた。その目は少し赤く、まばたきが妙にゆっくりだった。たぶん泣いた後だ。
jn「なあ、これ買ってきたで」
純喜は袋の中身をテーブルに並べる。チョコあんぱん、プリン、オレンジティー。
tk「……純くん、エスパー?」
小さな声で、拓実がふっと笑った。やっと少しだけ、いつもの調子が戻ったような気がして、純喜も笑った。
jn「たくの好きなん、全部頭ん中に入ってんねん。言わんでもわかる」
tk「……やば、ちょっと泣きそう」
jn「泣いたらあかんで、目腫れる」
拓実はふにゃりと笑いながら、プリンを手に取った。スプーンで一口食べたあと、また黙り込む。けれど今度は、さっきよりずっと穏やかな沈黙だった。
jn「……なんかあったん?」
tk「あったけど、今はもうええ。純くんが来たからもう大丈夫」
jn「そっか」
答えを深く聞かない純喜に、拓実はそっともたれかかった。柔らかい髪が肩に触れる。
tk「ありがと」
jn「……なんもしてへんよ。俺は、たくが元気になるまでそばにおるだけ」
そう言った純喜の手に、そっと拓実の指が絡んだ。