それが、結葉にはとても淫らなことをしているように思えて、すごく恥ずかしくて。
偉央の大きな手のひらに包み込まれたまま、未だ離せずにいるカーテンをギュッと握り締めた。
「ぇっ? あぁ、んっ――!」
偉央の舌先に口蓋をスルリと舐め上げらて。
途端、結葉は電撃が走ったみたいな快感に襲われて、身体をビクッと跳ねさせた。
口の中にもゾクゾクしてしまうぐらい気持ちいい場所があるというのを、結葉は生まれて初めて知った。
偉央の舌先が、結葉の弱いところを見つけたことを喜ぶみたいにそこばかり責めてくるから。
結葉は立っているのもままならないぐらい足がガクガクと震えてきてしまう。
「――気持ち良かった?」
存分に結葉の情欲に火を付けるセクシャルな口付けを施してから唇を解くと、偉央が結葉の瞳を覗き込んでくる。
結葉は目端を潤ませて、酸欠のためか、快楽のためか自分でもよく分からないトロンとした頭のまま、そんな偉央の視線を受け止めた。
「結葉、すごく色っぽい……」
言われて、再度ギュッと強く偉央の腕に抱き寄せられた結葉は、背後に立つ偉央の下腹部が固く張り詰めているのを感じてにわかに恥ずかしくなる。
「い、ぉさっ」
それに気付いた途端、期せずして自分も膣がキュンと疼いて、トロリと入口が濡れたのが分かった。
タオル一枚だけしか身に付けていない結葉の下肢を、吐き出された蜜が熱を伴ってトロトロと伝い落ちる。
結葉はその感触に、一気に恥ずかしくなって。
「偉央さん、私もシャワーを」
半ば無意識に、さっき言えなかった言葉を口走っていた。
だけど偉央はそんな結葉に、「ごめんね、結葉。それは許可してあげられない」と非情なことを言ってくる。
顔だけふり仰ぐように偉央を見つめていた結葉が、偉央のその言葉に瞳を見開くのを確認したと同時。
偉央は腕の中の結葉の身体をくるりと回転させると、自分の方へ向き直らせた。
「僕はもう、我慢出来そうにないんだ……。お願い、結葉。これ以上僕を焦らさないで?」
まるで狙った様に計算され尽くした切なげな声と、キュンと胸の奥に疼きを伴って母性本能をくすぐる情けない表情をして、眉根を寄せた偉央が結葉を見つめて懇願する。
間近で見る偉央の子犬のようなその表情に、結葉の心臓はトクンッと大きく跳ね上がって。
「偉央、さん」
結葉は熱に浮かされたように偉央の名を呼んで、ほとんど無意識に彼の頬へ手を伸ばしていた。
さっきまで偉央のことを「怖い」と思っていたのに、偉央のその顔を見た途端、そんな思いは霧散してしまっていて。
男性にしては滑らかな偉央の肌の感触に、(偉央さんにはお髭、あまり生えてこないのかな)とかどうでもいいことをぼんやり考えてしまった結葉だ。
「ね、結葉。――いい?」
そんな結葉の手をギュッと握ると、その手の甲に唇を押し当てるようにして、偉央が問いかけてくる。
結葉は「何に対しての」許可を求められているのかよく分からないままに、小さく頷いていた。
***
「あ、あの偉央さんっ⁉︎」
偉央の問いかけに何の気なしに頷いたと同時、偉央に横抱きに抱え上げられた結葉は、予期せぬことにオロオロと戸惑って。
そもそも偉央の言いつけを守って、一糸まとわぬままにタオルだけ羽織っている身。
偉央が膝裏をすくい上げた瞬間、タオルが緩みそうになって、結葉はドキッとさせられた。
加えて、自分でも下肢を濡らしてしまっているのが分かっていたから、それを偉央に気付かれるんじゃないかと気が気じゃなくて。
足の下に入れられた偉央の手が気になって仕方がない。
結葉を抱き上げる偉央も、風呂上がりで腰に一枚タオルを巻き付けただけという露出度の高い格好だ。
意識しなくても偉央の体温が嫌と言うほど伝わってくる上、彼の剥き出しの胸元がすぐ目の前にある。男性経験のない結葉には、刺激が強すぎた。
プールでは何だかんだ言っても基本的には偉央は背後にいたから。
こんな風にすぐ目の前に彼の裸の胸板がきて、結葉はどうしたらいいか分からない。
瞳を逸らすようにしてみたものの、熱と偉央から漂ってくる石鹸の香りまでは遮断できなくて、心臓がバクバクと早鐘を打った。
偉央のことを異性として意識すればするほど、結葉のなかの情欲が煽られて、トロリと脚の間から蜜が溢れてくるのを感じる。
(恥ずかしいっ)
自分がすごくはしたない女性になってしまったようで。
偉央に触れられるたび、結葉の中に今までの彼女が知らなかった〝愛欲〟が沸き起こってきてしまうことに、結葉は物凄く戸惑った。
結葉は、忙しなく鼓動を刻む心臓のせいで、今にも倒れてしまいそう。
ある意味女性も顔負けなほどに整った顔をしている偉央だ。
そんな美貌の彼が、紛れもなく〝男性〟なのだと意識させられるのは、ギャップがあるからだろうか。ただひたすらに馴染めなくて照れ臭い。
ましてやその対象が自分だなんて。
偉央の逞しい二の腕の感触を背中と両腕、そうして脚に感じながら、自分は彼に比べると本当に線の細い非力な〝女性〟なのだと突きつけられて。
それが結葉の中に眠る被虐心をゆっくりと……、しかし確実にくすぐった。
色んな思いが混ぜこぜになって、結葉の中を去来する。
目端が潤んで、身体が物凄く熱くなる。
「わ、私……自分で歩けます……」
真っ赤になりながら懸命に言い募ってみたけれど、そうこうしているうちにベッドの上に下ろされていた。
「結葉もその気になってくれてるみたいでホッとした」
という言葉とともに。
結葉が横たわるベッドサイドに佇んだ偉央が、チラリと結葉の下腹部に視線を落としてとても嬉しそうに微笑んだ。
結葉は、そんな偉央を見上げて、彼の腕を自分の愛液が濡らしていることに気がついて、慌てて
「ごめ、……なさっ」
と謝る。
そんな結葉に優しく微笑むと、偉央は
「謝らないで? 僕はすごく嬉しいんだから」
言って、腕についたそれをペロリと舐め取る仕草をする。
「いっ、偉央さっ、ダメっ! 汚いですっ!」
それを見た瞬間、ぶわりと身体が熱くなった結葉だ。
恥ずかしさと申し訳なさに思わず身体を起こして、自分の体液に濡れ光る偉央の手に触れたら、その手をギュッと握られて、指先を食むように口付けられる。
「結葉に汚いところなんてひとつもないよ?」
口付けた手を握ったまま、結葉の身体を再度ベッドに寝かせると、偉央は結葉がまとうタオルの合わせ目に手を伸ばした。
「大好きだよ? 結葉」
言いながら偉央に優しく口付けられた結葉は、タオルが身体から剥がされる羞恥心を濃厚なキスで絡め取るように薄められる。
そのまま直にやんわりと胸の膨らみを揉まれて、驚いた結葉が慌てて偉央の手を掴んだら「ダメだよ、結葉。じっとして?」と、再度ベッドに手を縫い付けられる。
「いいかい? 結葉。手はこのまま……。僕がいいって言うまで動かしたらダメだ」
偉央の、吸い込まれそうに澄んだ黒瞳でじっと見つめられた結葉は、訳もわからないままにコクン……と頷いていた。
「いい子」
途端ふんわり頭を撫でられて、くすぐったさに首をすくめたと同時、胸の柔肉を片手でギュッと掴まれて、鎖骨に近い辺りに吸いつかれる。
頂の敏感なところには触れられないまま、チクチクとした痛みを伴って、結葉の白い肌に小さな赤い花びらがいくつもいくつも散らされていく。
「ぁ、んっ、偉央さっ」
触れられてもいないのに、何を期待しているのだろう。
ピンと張り詰めた色付きの先端が、痛いくらいに感覚を研ぎ澄まされているのを感じて、結葉は偉央に組み敷かれたままモジモジと身体を震わせた。
偉央が巧みに結葉の敏感なところを寸でのところで掠めては触れてくれないから、結葉はもどかしくて堪らない。
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