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朝、目を覚ましたとき。カーテン越しの光が柔らかく、まるで夢の続きのようだった。
隣には誠也くん。
浅く眠るその寝顔に、思わず指先が伸びる。
その時、気づいた。
彼の首もと。
喉のすぐ下あたりに、薄く、でもはっきりと線のような痕がある。
「……この傷、前からあったっけ?」
私が呟くと、誠也くんが目を開けた。
『ん……?あぁ、それな。小さい頃からあるねんけど、なんでできたか知らんねん。親も覚えてへんし。』
不思議そうに笑う誠也の声を聞いた瞬間……
私の頭に、ざわっと冷たい感覚が走った。
声が出せなかった彼。
叫びたくても、喉を押さえて苦しんでいた。
“誠也くん”じゃない――“瑛士”としての記憶だった。
波打ち際で崩れるように膝をついて、光の腕の中で息を切らしていた、あの姿。
「思い出した……前世で……誠也くん、殺されたんだよ……」
ぽつりと、口から零れた言葉に、誠也がゆっくり起き上がる。
『……ホンマに?』
「ううん、まだ全部は見えない。でも、喉を……何かで……。言葉が出せなくなって、私の名前を呼ぼうとして……そのまま、消えた……」
誠也くんは唇を噛んだ。
『じゃあ……その時、俺は光を守ろうとして……?』
私の目の奥が熱くなる。
「ごめん……私、なんでそんなことも思い出せなかったんだろう……」
『謝ることちゃうやん。思い出してくれて、ありがとう。』
そして誠也くんは私を優しく抱き寄せた。
傷跡は“呪い”じゃない。
きっと、“繋がり”の証……
そう思えた。