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「でも、新藤さん。あの、どうしてあなたが白斗なんて言うの……・?」
心とは裏腹につまらない言葉しか出せなかった。
夢にしてはリアルで。でもやっぱり夢のようで。
「今は新藤じゃない。律が『白斗に逢わせろ』って言ったんやろ。お前が十年、離れても六年、俺を追いかけて想ってくれていたのを――寝室に俺の非売品ポスターやRBのグッズを飾ってくれていたのを見て、未だに俺が好きだと知って嬉しかった。今日はその礼をする。ファンサービスや。たっぷり可愛がってやる。傷心の律を慰められるのは白斗(おれ)しかいない。そうやろ?」
乱れた着衣にするりと指先だけが入れられた。そのまま焦らすように肌に指を這わせる。そして甘く低い私の好きな声で、耳元で囁くようにして歌う。
「このナイフを あなたの体内(なか)へ
欲望を受け止めた躰――」
これだけで全身ねっとりとした厭らしいもので撫でまわされているような感覚に陥った。
「透き通る 紅(あか)になる――」
まるで食事を楽しむかのように白斗の影が見える新藤さんは歌を口ずさみ、私を乱していく。
「あっ、しんど……っう、さんっ、あぁっ……」
「その新藤さんっていうの、今すぐやめろ。律が十六年間も好きな男は誰や? 言え」
「……あうっ……ふっ……ぁっ……」
新藤さんの指に翻弄されて身体が興奮している。なにかが爆発しそうでぞくぞくと背中に悪寒が走る。
こんなに淫らな気持ちになったのは生まれて初めて。どうしたらいいの?
「律は好きな男の名前も言えないのか?」
「は……はく……と、さんっ……んんっ、ぁぁ」
「白斗でいいよ。但し今は博人(はくと)な。博人(ひろと)と違う。イントネーションが微妙に変わるやろ? 俺の本名の方で呼べ。わかったな? 律」
「んっ……ぁっ、あぁ――っ!!」
乱れた衣服の中をまさぐられ、罪の歌を奏でるステージの上で私は胸先の果実を彼に晒した。その剥き出しになった敏感な先に軽く口づけされただけで、自分でも驚く程に恥ずかしい声が出た。光貴とする時はいつも感じているフリの声しか出したことがないのに、こんなのって……!
「や、だめっ、あぁあっ……!」
唾液のたっぷり含まれた柔らかな舌で突起を突かれると、また悲鳴が漏れる。
甘く淫らに歌っている。卑猥で背徳的で罪の歌。
こんなの初めて――
「さあ、Desireの次はなにを歌って欲しい? お前のためのライブや。律。お前のために俺が歌うから」
「あ、う、嬉しいっ……ぃっ、あ、ぅんっ……!」
「お前は俺のこと、めっちゃ好きだよな? 愛の溢れるラブレターをいっぱい事務所に送ってくれてさ。なのに――」
「いたっ!」
甘美な刺激を伴っていた胸先に急に痛みが走ったので思わず叫んだ。
「俺のこと死ぬほど愛してるわりに、別の男と結婚なんかして……悪い女にはお仕置きが必要だな」
再び噛みつかれた。
「ぁ、いたっ、あ……っ、ううっ……」
噛みついた先に少しずつ力が込められる。痛いと言っても甘噛み程度だから平気だけれども、それより、彼の怒りや嫉妬の混じった不思議な感情が伝わってくる。それが嬉しいという感情を呼び起こす。
白斗に噛みつかれて嬉しいと思う私は、どうかしている。
でも、彼が与えてくれる痛みなら、忘れたくない。どんな痛みでもいいからもっと欲しい。
「ん……あぁっ、はくとっ! あぁ――っ……!」
「お前の乱れるところ、もっと俺に見せろよ」
野獣のような白斗に激しく攻撃されて、私はあられもない声で喘(な)いた。
彼の綺麗で細い指が私の身体を辿っていく。私を卑猥な声で歌わせるために。
白いシーツの引かれた大きな舞台の上で乱れ、踊り狂う。観客は誰もいない。いるのは演者のわたしたちふたりだけ。