テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
僕はずっと「世界の隙間」というものを見てみたかった。街に出かければどこかに開いているんじゃないかと思って。けれど探しても、それらしい隙間は見つからなかった。
ある日、本棚の本を引き抜いた瞬間、本と本の間に、小さな隙間ができた。
――ああ、世界の隙間って、探すものじゃなくて“自分でつくる”ものなのかもしれない。
そんなことを考えながら日々を過ごしていた頃、電車で座席のあいだに、誰も座らない小さな隙間を見つけた。次の駅が来ても、また次の駅でも、その隙間は空いたまま。
じっと見つめていると、脇を肘でつつかれた。振り向くと、あまり仲のよくなかった高校の同級生がいた。
「おい、あそこ空いてるぞ。座らないのか?」
「うん……なんとなく、いやなんだ」
「じゃ、俺が座るわ」
彼は何のためらいもなく、その隙間に腰を下ろした。僕が見つけた“世界の隙間”を埋めたのは、特に親しくもなかった同級生で、そして彼はスマホを眺めたまま僕を見ようともしなかった。
その瞬間、僕はまたひとつ気づく。
――隙間って、人と人のあいだにもあるんだ。
しかも、思っている以上に、そこらじゅうに。