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「1人で全部やっていく気なのかよ? 赤ん坊の世話をしながら家事洗濯をして食事まで作っていくのか?」
「そうだよ。悪い?」
「お金はどうするんだよ? 働いてる暇なんかないだろ? やっていける訳がない」
「だったらどうしたらいいっていうの? 教えてよ!」
「――――」
「わかんないくせに、偉そうなこと言わないでよ! そういうのホントにウザいからやめてよ!」
マナは逆ギレしていた。
「産むこと前提で話を進めるなよ! 例え産まれてきたとしても、その子には父親がいないんだぞ。しかも、家族や周りの全ての人間から反対されて産まれてくるんだ。誰にも祝福されないで産まれてくるんだぞ。可哀想すぎるだろ――」
「だったら、圭ちゃんがこの子の父親になって私たちを守ってよ!」
「それは―――無理に決まってるだろ」
「どうして? マナのことを見捨てるの?」
マナは潤んだ瞳で訴えかけるように言ってきた。「見捨てる訳ないだろ! ダチだから、マナにとって1番いい方法を考えて言ってるんだ」
「圭ちゃんが考える1番いい方法って、マナにお腹の子をおろさせることなんでしょ?」
「そうだよ。高校生の俺たちが、どう足掻いたって、どうすることも出来ないんだ――」
「役立たず!」
「そうだな、役立たずだな。ごめんな――」
マナはしばらくの間、何も喋らなかったし、俺と目を合わせようともしなかった。
それからしばらくして母さんが戻って来た。すると母さんは運転席のドアではなく、マナが座っている後部座席のドアを開けると、突っ立ったまま何も言わずにいた。
「何ですか?」
マナは不機嫌そうに聞いていた。
「マナさん、この度はうちの息子が妊娠をさせてしまって本当に申し訳なく思っています。私に出来ることがあれば、何でもさせて頂きます。でも、お腹の子のことは諦めて欲しいの」
「圭ちゃんが私を妊娠させた?」
「違うの?」
「違いまっ――」
「違わないよ。俺がお腹の子の父親だよ」
「わっ――」
何かを言おうとしたマナの口を慌ててふさいだ。母さんに嘘をつくことになるけど、誰かの協力を得るにはこれしかなかった。
「マナさん、家まで送るわね」
「結構です」
それからマナは家まで送ってくれるという、母さんの言葉を拒否すると歩いて帰って行った。
あれから3日が経った。この間、マナは堀越医院に嫌々ながら通院し、堀越先生から色んな話を聞かされていた。その堀越先生の根気強い説得の甲斐あって、マナはお腹の子をおろすという決断をしてくれた。マナの苦渋の決断だったが、俺は半信半疑だった。
プルルルル――プルルルル―――
夕食のあと、自分の部屋で横になっていると電話が鳴った。
『もしもし、圭ちゃん――』
『どうしたんだ?』
マナからだった。
『今から会える?』
『夜遅いから、女の子が外を出歩くのはマズイだろ』
『大丈夫だよ。今、家にはお父さんもお母さんもいないから、外出してもバレないよ』
『そういう問題じゃないし――』
『駅前のファミレスで待ってるから絶対来てよね』
『俺は行くともいかっ――』
プッ!
プーープーープーー―
電話を切られてしまった。それから仕方なく出かける支度をして、待ち合わせの場所に向かった。