サイド ユメ
どうして話してくれませんの?
「……仲間だからこそ、話したくないこともあるんだ。僕はあのときのことを話したくないし、思い出すだけでも辛いから」
だから無理に聞かないで欲しい、とトキは力なく笑いました。
「でも……!」
「話したところで、僕の過去が変わるわけじゃないしね。……それとも、過去を知らないともう仲間じゃないって、考える?」
「そんな訳ない!オレにとっては、過去がどうであれ、今のトキさんを知ってますから!」
レンは、かつて山を守るために間違った行動をし、罪を犯しましたわ。それ故に、自分の味方だと思っていた人が一気に変わってしまったのを覚えているのでしょう。
「……うん。だから、“今の僕”を信じて欲しいんだ」
……トキはずるいですわね。ああ言われたら、もう深追い出来ないに決まってるではありませんの。
レンも、「……分かりました!」と言って、何も聞かないことにしたようですわね。
レンって、こういう深追いしないところはキノ団長と全然違いますのね。明るくて、真っ直ぐなことろは二人とも変わりませんけれど。
……そういえば、あの後団長とルネはどうなったのでしょうか?
「ええと、ごめん」
あたくしがそんなことを考えていると、トキが申し訳なさそうにいいました。
「……そろそろこのガムテープ、解いて貰ってもいいかな?」
あ、すっかり忘れてましたわ!
「……へえ、そんなことがあったんだね」
「ユズのせいで……ごめんなさい!」
ユズのせいではありませんのよ、と何回も言っておりますのに……。
きっと、自分を許すことが出来ない優しい子なのですのね。
「馬鹿ですわね。……あの父上があたくしに払うお金なんて、一銭もあるわけがございませんのに」
「……あの、ね。そのことなんだけど、あの人たち、『チャンスは今しか無い』って」
ユズが恐る恐る呟きました。
……どういう意味なんですの?
「とにかく、早くここから逃げた方が良さそうだね」
「でも、ここ窓も塞がれておりますし、ドアには鍵がかかっていますよ?」
レンの言う通りですわ。どうやってもここからは逃げられそうにありませんわ。
「それなんだけど」
トキはちょっぴり笑って、袖口から何かを取り出しました。
……これは?
「手は、もう打っておいたんだ」
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