テラーノベル
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矢 濁 .
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■読まれる前の注意書き
・本作は「カントリーヒューマンズ(CountryHumans)」の二次創作(ファンフィクション)です。
・実際の歴史、国家、政治団体、宗教、および実在の人物とは一切関係ありません。
・かつて対立していた国々が、現代風の平和な世界線でひとつ屋根の下、あるいはご近所さんとして仲良く「ほのぼのとした日常」を送っているパラレルワールドを舞台にしています。
・キャラクターの口調や性格に独自の解釈(マイルド化)が含まれます。
・以上の点をご理解いただける方のみ、お進みください。
■第15話
題名:十五夜の月と、真面目すぎる団子職人たち
ジャンル:日常・お月見ほのぼの
裏庭の家庭菜園がひと段落し、夜の風がすっかり涼しくなった秋の盛りのこと。
日帝の「今夜は十五夜ですから、皆さんでお月見をしましょう」という提案により、4人は夕方から居間に集まってお月見団子を作ることになった。
「お団子作りかぁ! 楽しそうだね! 粘土細工みたいに、いろんな形を作ってもいいの?」
イタ王は早くもエプロンを身に付け、ボウルの中の上新粉に水を注ぎながら、目をきらきらと輝かせている。
「イタリア、これは伝統的な行事だぞ。形を崩すのは非合理的だ。目指すべきは、完璧な球体、およびすべてが等しい質量を持つお団子の量産だ」
ナチは袖をきっちりと捲り上げ、スケール(秤)を目の前に置いて待機していた。彼は日帝が差し出したレシピの数値を頭の中で素早く計算し、最適な水分量と捏ねる時間のシミュレーションを始めている。
「堅いことを言うな、ナチ。お団子など、丸めて茹でればみな同じだ。それよりも、我が連邦の胃袋を満たすには、このサイズでは小さすぎる。もっとダイナミックにいこう」
ソ連は大きな手で一気に粉を捏ね上げると、テニスボールほどもある巨大な白い塊を作り上げた。
「ソ連殿、それはお団子というよりは、もはや大福の域、あるいはそれ以上です。中まで火が通りにくくなってしまいますよ」
割烹着姿の日帝が、苦笑しながらソ連の手元から生地を少し千切り、一口サイズの手際良い球体に丸めて見せた。
「こうして、手のひらで優しく、均一な力で丸めるのです。やってみてください」
「ふむ……こうか?」
ソ連が大きな手のひらで生地を転がすが、力余って生地が平べったい煎餅のようになってしまう。
「不器用だな、ソ連。貸してみろ、私が手本を見せてやる」
ナチが生地を奪い取り、手のひらを精密機械のように正確に動かした。出来上がったのは、確かに非の打ち所がない、完璧な直径三センチメートルの球体だった。
「どうだ。これが我が国の技術力だ」
「なにいっ!? だったら私は、マトリョーシカの形にしてやる!」
「だから形を崩すなと言っているだろう!」
相変わらず小さなことで火花を散らす二人を横目に、イタ王は「あ、これ可愛い!」と、うさぎの形をしたお団子を器用に作り上げていた。
「イタ王殿、とても上手ですね。では、出来上がったものから順にお湯に入れていきましょう」
日帝の仕切りで、次々とお団子が茹で上がっていく。ソ連の作った大きなお団子も、日帝が上手く包丁で切れ目を入れて、無事に火を通した。
夜になり、四人は縁側にススキを飾り、三方にピラミッド状に積まれたお団子を並べた。
空を見上げると、雲一つない群青色の夜空に、信じられないほど丸く、まばゆい黄金色の満月がぽっかりと浮かんでいる。
「うわあ……。すっごく綺麗だね」
イタ王が縁側に腰掛け、夜空を見上げながらぽつりと呟いた。
「ええ。秋の月は空気も澄んでいて、一段と美しく見えます」
日帝が、湯気を立てるお茶をみんなの湯呑みに注いでいく。
今回は日帝特製の「みたらしタレ」と「あんこ」、そしてソ連のために(アルコールではない)濃厚なきな粉が用意されていた。
「……美味いな。外側の弾力と、内部の密度のバランスが計算されている」
ナチはあんこを載せたお団子を口に運び、満足そうに目を細めた。
「うむ! このもちもちした食感は、癖になりそうだ。日帝、これをつまみに、今度こそウォッカを……」
「ソ連殿、お茶が冷めますよ。月を愛でる時は、心を静かに保つものです」
「……ちぇっ、相変わらず手厳しい」
ソ連は苦笑しながら、きな粉をたっぷりつけたお団子を大口で放り込み、ラムネの瓶をチリンと鳴らした。
静かな夜の庭に、虫の音が心地よく響き渡る。
かつて、それぞれ全く異なる夜空の下で、張り詰めた緊張感の中にいた彼らが、今はこうして日本の古い縁側に並び、一つの月を見上げてお団子を食べている。
「ねえ、来年の満月も、またこうしてみんなで見ようね」
イタ王が、お団子を頬張りながら笑う。
「フン、その時までには、私がさらに完璧な配置でお団子を積み上げてみせよう」
「寝言を言うなナチ、次こそは私が巨大なお団子を完璧に茹で上げてみせる」
「ふふ、二人とも、楽しみにしていますよ」
どこまでも丸く、優しい月の光が、縁側に並ぶ四人の背中を、そして彼らの穏やかな笑顔を、いつまでも温かく照らし続けていた。
コメント
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第15話、めっちゃ良かった…!「お月見団子作り」という平和なシチュエーションでも、キャラの個性がガッツリ出てて笑った。ナチの「完璧な球体量産」とか、ソ連のテニスボール大の団子とか、イタ王のうさぎ型とか、もう最高(笑)最後の「来年もまた」ってセリフ、じんわり来たなあ。こういう日常回、大好きです🔥