テラーノベル
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#創作
ゆずき
246
160
耀聖(ようせい)
725
#ロマンスファンタジー
花月夜れん
456
.。 .:・.。. .。.:・
ジェニはくちゃくちゃとバブルガムを噛んで、明美のようにプゥ~っと膨らませ、パチンッと弾けさせた
古着のタイトなブルージーンズにウエスタンブーツ、胸元が開いたニット、それにブラックの革のライダースジャケットを羽織っている、ハスッパな格好だが、スタイルの良さは際立っている、細身の体に綺麗なバストのふくらみ、小さなお尻にスラリと長い足・・・顔にはアメリカ空軍のようなサングラスをかけている
今はアメリカはシカゴのホールストリート通りの、小ぎれいなコンビニの前で、ハーレにもたれてポケットに手をつっこみ、コンビニに入って行った竜馬を待っていた
そして自動ドアが開き、英字新聞紙で作った袋に山盛りのフライドポテトを持った竜馬が出て来た、大抵の男性はそこそこの容姿であっても、ブラックのライダースジャケットを身につければ、イカして見えるものだ
ブラックのライダースジャケットはタキシードと同じく、男を変身させる、ましてや竜馬のような男がそれを着れば、あまりのセクシーさに道行く女性はみんな振り向くだろう、ジェニはうっとりとため息をついた
日本でのメビウスのスーツ姿の彼も素敵だが、長い足に、紺のデニムジーンズ、ジェニと同じブラックのライダースジャケット、そしてサングラスと三点セットの彼は、あまりのカッコよさに一発殴られたような衝動さえ受ける
ジェニは断然、日本にいる時の竜馬より、少しワイルドなアメリカの竜馬の方が好きだと思っていた、ここの風景に馴染んでいる彼にどんどん惹かれている
二人でバドワイザーのバス停のベンチに座って、山盛りのフライドポテトをムシャムシャ食べながらジェニが言った
「残念ねぇ~・・・竜馬さんの言ってた(セントマイルズリサイクルショップ)がコンビニになってるなんてぇ」
「時代の流れを感じるなぁ~」
竜馬もロングポテトをハムハムと前歯だけで、ハムスターのように食べて言う
「ロックハウンドさんのタトゥー・ショップは?ワニのマックスは?」
竜馬が残念そうに陰気に微笑んだ
「あそこも金券ショップになっていたし、マックスは生きているわけがないよ」
「そうなんだぁ~~~竜馬さんの話を聞いて、会えるのを楽しみにしていたのに」
ジェニも残念そうに言って、ロングポテトをもぐもぐ食べた、すると竜馬が顔を近づけ、ジェニの口の端についていたポテトの塩をペロッと舐めた
「しょっぱい」
ポッとジェニの頬がほんのり染まる、どういうわけかアメリカに来てからの竜馬は、ジェニに対しての愛情表現がおおらかになっている、いつでもどこでもジェニにぴったり貼り付き、手は腰のあたりかどこかしらジェニの体に触れている
そして、それを当たり前だと思っている、今の二人は何処へ行くにも二個一だ、こういう日本にいた時と違う竜馬の変貌ぶりが、終始ジェニをドキドキさせ、きっとこれからは彼のスキンシップがなければ寂しくて生きていけないだろうと思った
竜馬はミネラルウォーターを1本蓋を捻って開けるとゴクゴク飲み、そしてそれをジェニに渡した、こういう気遣いも大好きだ
「さぁ!君のお待ちかね、セドリックの所に行こう!!」
キャーッ!「嬉しい!!」
竜馬がレンタルしたハーレーダビッドソンにまたがり、エンジンを吹かす、嬉々としてその後ろにジェニもまたがりギュっと背後から竜馬の腹筋に腕を回す
チュッ「ん」
竜馬がジェニの両手を取り軽く手の甲にキスをした
ああ・・・幸せ・・・・
―ゴツッゴツッゴツッ―「あ」「い」「し」「て」「る」
「痛い、痛い(泣)」
ジェニは竜馬の背中に5回頭突きをした、時々彼を好きすぎて「い~~~っ!」っと「キュートアグレッション」を起こす(※好きすぎて凶暴になること)この幸せな愛情を持て余して悶絶する
シカゴの赤い夕陽を背に、荒野の中をどこまでも続く一筋の道・・・ゆらゆらと立ち昇る陽炎の向こうから、ジェニと竜馬をのせたハーレーが一台、姿を現わした
ハーレーは檻から解き放たれた野生動物のように疾走し、ジェニも竜馬も激しく髪をなびかせながら、ひたすら地平線の道を突っ走っていた
.。 .:・.。. .。.:・
キャーッッ「セドリック―――ッ」
セドリックの大きな丸太小屋にハーレーを停めると、セドリックとマミーが喜んで飛び出してきた、ジェニはセドリックに1メートルほどジャンプして飛びついた
「会いたかったわーー!!」
「んだ!」
セドリックはキャァキャァ騒ぐジェニを巨漢な肩に乗せた、ジェニは稲穂のようなセドリックの薄いブロンドの毛に何度もキスをした、セドリックが「ホッホッホッ」と笑った
セドリックはちっとも変っていなかった、彼も40歳を超えているのに、顔に皺ひとつなく、あの頃の少年のままだ、こんな感じの人間は、やはり妖精のように歳を取らないのだろうと竜馬は思った
セドリックはジェニを肩に担ぎ、竜馬を反対の手で抱きしめた、竜馬も声をあげて笑った
彼がストレスなく幸せに暮らしていることが嬉しかった、マミーも全盛期の頃と違って少し小さくなっていたが、相変わらずパワーと慈悲の人で、とても元気だった
セドリックもマミーも、竜馬とジェニを大歓迎してくれた、竜馬からセドリックの話を聞いたジェニは、彼に強烈な興味を持った、そしてそんな時のジェニの行動はとても素早い
英語があまり得意ではないジェニが、真希に翻訳してもらい、セドリックとマミーに手紙を書いた、そこの手紙にはジェニのインスタグラムのアカウントが書かれていた
そしてセドリックマミーはインスタのお料理アカウントを持っていたので、セドリックとジェニがDMでやり取りできるようにセドリックのアカウントを作った
英語が出来なくても、ジェニの営業で培った素晴らしいコミュケーション能力は、セドリックにも発揮され、主に二人はスタンプと画像で毎日やり取りをしていた、ジェニは竜馬や宗一郎達の仕事風景や、ハナや、日常画像をセドリックに送った
お返しにセドリックからは、いろんな網目の編み物の図柄の画像が届いた
そしてある日・・・セドリックから届いた一枚の画像がジェニの胸を突いた・・・
それはジャスティンの墓石の画像だった
信じられないぐらい美しい写真だった、ジェニはどうしてもジャスティンのお墓に行きたくなって、竜馬に言った
.。 .:・.。. .。.:・
マミーの運転する水色のクラッシック調のサニートラックの助手席には竜馬が乗り、そしてトラックの荷台にはジェニとセドリックが乗っている
ジェニがセドリックに何やら耳打ちをして、セドリックが両手で口を押さえ、楽しそうにクスクス笑っている
竜馬が思った通り、会った瞬間からこの二人は大の仲良しになっていた
.。 .:・.。. .。
【セント・デルダ教会墓地】
.。 .:・
シカゴの太陽と、ミシガン湖から爽やかな風が吹いてくる・・・地質の恵まれたその墓地は・・・
濃い緑の芝生の緩い小山の平面に、規則正しく白い墓石が並べられ・・・所々に紫のアイリスの花が植えられている楽園だった
丘から見下ろす湖の入り江の空には、今は雲が低く垂れこめているが、丘のいただきは陽射しが溢れ、空気は澄みきっていた
ハァ~・・・「素敵な所・・・ここにジャスティンが眠ってるのね!」
「んだ!」
ジェニとセドリックが手をつないで鼻歌を歌いなが小高い丘を登っていく、二人とも片手にはアイリスの鉢を持っていた、その後ろに竜馬とマミーが続く
「とっても綺麗だわ!!」
ジェニは墓地の佇まいに賞賛の眼差しを注いだ、みんなそれぞれの墓地には未だに故人を惜しんで、癒えぬ悲しみの証の花が添えられている
墓地に満ちるのは遥か昔に逝った人々の安息ばかりだ、悩みや煩悩から解放され・・・生きたという事実だけを残して、人里離れた丘を、色んな想いで訪れる人に安らぎを与えてくれている
四人は古い墓地をブラブラと歩いては時々立ち止まって、風化した墓石の墓碑銘を読み上げていた
「ジャスティン!!あそこだ!!」
セドリックが指差したのは、ひときわ小高い丘に鎮座された四角い墓石だった
竜馬もジェニも、その墓石を見るなり驚いて口も聞けなかった・・・
ジャスティンの四角く美しい墓石の周りには・・・アイリスの花がびっしりと植え込まれていた、他の墓石と比べてまるでそこだけが天国のようだった
「これ・・・・全部セドリックがやったの?」
「んだ!」
コクリとセドリックがうなずいた
「ジャスティンこれで寂しくない」
ニッコリ笑ったセドリックを見て、竜馬は目頭が熱くなった
「ああ・・・セドリック・・・なんて素敵なの・・・」
ジェニがセドリックに抱きついた、セドリックはニコニコしてジェニの賞賛の抱擁を受けた
フフフ・・・「あらあら、私も手伝ったわよ、さぁさぁ、この持ってきたアイリスも植えてあげましょうね」
しばらく四人でジャスティンの墓を綺麗にした、アイリスの周りに生えた雑草を抜き、新しい花を植えた、ジェニは終始ジャスティンの墓に話しかけ「できればジャスティンが生きているうちに正々堂々と戦って竜馬を取り合いたかった」 と言って周りを笑わせた
竜馬も「流血沙汰になっていたかもね」と笑ったが、もしかしたら真実になっていたかもしれないと思った
そして、しばらく竜馬とジャスティンとの二人きりにしてやろうと、三人は先に駐車場に向かった
誰もいない・・・やわらかな丸みをもつ丘の頂で・・・竜馬はジャスティンの墓石と向き合った
その時、空からサァーっと明るい日差しが輝き出し・・・竜馬の背中を明るく照らした
「やぁ・・・ジャスティン・・・」
.。 .:・・
彼は足元の墓石に微笑みかけた、気持ちの良い風がどこからともなく吹いて来て、その風が竜馬の髪をもてあそぶ
ゆっくり竜馬はしゃがんだ・・・そして墓石に触れ・・・まるで肌を撫でるようにやさしくその文字を撫でた
文字の溝はすっかり浅くなっていたが。まだまだちゃんと読めた
―黄金の天使―ジャスティン・アレン―ここに眠る―
.。 .:・
竜馬が声に出して読みあげる・・・墓地は静まり返り、聞こえるのは風がアイリスの花を揺らし葉がこすれあう音だけ
「元気だった?僕は・・・いろいろあったけど・・・元気だよ」
肩に落ちる光と影がゆっくり変化する・・・ここはすべてが非現実で・・・そんな訳がないと自分に言い聞かせても、そうに違いないと分かっていた
彼の気配を隣に感じる・・・風が体を撫でる・・・美しい金髪の心の機微がわかる・・・親切で誠実な男性・・・その男性にそっと竜馬は話かける
「僕は・・・男が望むものを全て手に入れたよ・・・」
ここまで来るのに・・・頭の中で何を話そうかあれほど考えたのに・・・今は全く頭では考えずに、心の赴くままに語った
「住む場所・・・やりがいのある仕事・・・傍らには妻がいてくれる、そして・・・たぶんもうすぐ子供にも恵まれるだろう」
手を伸ばし、もう一度優しく墓石を撫でる
「そして愛すべき友・・・」
何よりこれほど強く願っていたとは自分でも意外だったが、ジャスティンのことを一緒に思い出せる人が欲しかった・・・彼の事を話せる人が欲しかった・・・神は自分にジェニを与えた
「ジャスティン・・・僕・・・幸せだよ・・・幸せなんだ・・・毎朝目が覚めて・・・この世に感謝するほど・・・」
竜馬の閉じた瞼から、とめどなく涙が溢れ・・・太陽の光を受けて宝石のように輝いた
遠くで自分を呼んでる声がした・・・気が付くと、小一時間ほどここに佇んでいたのがわかった
グス・・・・「そ・・・それだけ言いたかったんだ、当分はこっちにいるから・・・また来るね」
竜馬はそう微笑んでジェニ達の所へ戻るために、ゆっくりと丘を降りて行った
太陽の日は竜馬が見えなくなっても、墓石を照らし続けた
風が吹き・・・墓の回りのアイリスをそっと揺らした
―おかえり、竜馬―
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コメント
1件
第226話、とても温かい気持ちになりました。アメリカでの竜馬とジェニのイチャイチャが可愛くて、特に「キュートアグレッション」で頭突きするところは思わず笑っちゃいました。でも一番心に残ったのは、やっぱりジャスティンのお墓でのシーンですね。セドリックがアイリスの花をずっと植え続けていた優しさも、竜馬が「幸せだよ」と語りかける姿も、すべてが染みました。最後の「―おかえり、竜馬―」に、涙が止まりませんでした…。素敵な話をありがとうございます。