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「あ……」
口移しで飲まされて、首筋にしずくが垂れてしまう。
それをまた、彼は舐めとったりするのだ。
「や、玲伊さん……仲居さんが来ちゃうよ」
「別にかまわないよ」
「やだって。そんなの、嫌……」
そう言って、彼の手から逃れて、向かいの席に戻ったとき「失礼します」とふすまの向こうから声がした。
本当に、あやうく見られてしまうところだった。
「もう、本当にあんなのは嫌だから」
わたしはちょっと拗ねてしまった。
「ごめん、怒った?」
でも、彼はまったく手抜かりのない人。
ちゃんとスペシャルなデザートを注文していてくれた。
それも、レストランで出てくるような、お皿に綺麗に盛り付けられたデゼール。
「併設のフレンチレストランに特別注文しておいたんだよ。明日のディナーはそっちだ」と玲伊さんは得意顔。
大好きなシャインマスカットをふんだんに使った、最高の一品だった。
「これでも許してもらえない?」
「……許さなかったら、お預け?」
「よくおわかりで」
わたしは答える代わりにマスカットを手に取って、口にほおばった。
***
食事をした部屋の奥、引き戸の向こうは真っ白なカバーがかけられた、見るからにふかふかの布団が二組敷いてあった。
枕元の|行燈《あんどん》がなんだか艶めかしくて、思わず頬が熱くなる。
部屋に入ると玲伊さんは、わたしを抱き寄せて、布団の上に座らせた。
後ろに回り、首の後ろや肩口に口づけを落としながら、浴衣の襟元に手を差し入れてくる。
すぐに探り当てられた胸の先端をしごくようにつままれ、わたしはすぐに、息を荒げてしまった。
「やっぱり浴衣はいいな。家でも浴衣で寝ることにしようか」
「で、も、う……ん、あっ」
息が上がって答えられない。
だって、もう片方の手で、同時に裾も割られていたから。
そして、なんなく帯をほどかれてしまう。
はだけた胸元に口づけをしながら、玲伊さんは耳元で囁く。
「だいぶ酔ったね。胸のあたりまで薄桃色に染まって、すごく色っぽいよ」
「玲伊さんが……飲ませるから」
その言葉に、口をかすかに歪める玲伊さんのほうが、数万倍、色っぽい。
ほの暗い部屋のなか、はだけた浴衣から逞しい胸板がのぞいていて、目のやり場に困ってしまうほど。
「優紀……」
玲伊さんは腕の途中で中途半場に引っかかっていた浴衣を脱がせてから、わたしを布団の上に横たえた。
両脇に手をついて、上から熱のこもった眼差しでわたしを見つめる。
「優紀が好きだ。可愛くてたまらない。この気持ちがどんどん募っていく。もうおかしくなりそうだよ」
「玲伊さん……嬉しい……」
そう言った瞬間、彼の唇が降りてきた。
触れてすぐ、舌を絡めとられ、狂暴といえるほどの激しさで唇を奪われた。
わたしは、それだけで、もうどうにかなってしまいそうで。
彼の背に手を回し、狂おしい想いを伝えるかのように、必死で抱きついた。
そんなわたしの腕をそっと外し、彼は自分の浴衣を脱ぎ捨て、わたしの脚に手をかけた。
膝を立て、左右に割ろうとする。
まだ、反射的に閉じようとしたけれど、彼は難なく開かせ、同時にわたしの腰を抱え込んでしまった。
そして、吐息とともに、つっと指で狭間に触れてきた。
「あっ……」
待ち望んでいた刺激に、彼の手の中にあるわたしの腰は、びくっと跳ねあがった。
玲伊さんは耳元で甘く囁く。
「もう我慢できない?」
わたしはこくっと頷いてしまう。
彼はそんなわたしの顔にかかっていた髪をやさしく払いながら言った。
「でもね、今日はたっぷり時間があるし、じっくり可愛がってあげたいんだ」
それから彼は、なめらかな指先や熱い唇で、本当に、あますところなくわたしに触れていった。
体の線や背筋をなぞるように指先で触れながら、唇は腕の内側から鎖骨、みぞおちへとすべってゆく。
でも、なぜか、いつもすぐにわたしを喘がせてしまう胸の尖りは触れずに避けてゆく。
焦ったくて、わたしは思わず声を漏らす。
「あ……ん、れ……いさぁん」
すると今度は、彼の手がわたしの脚にかかる。
そして、右足を少し持ちあげ、そろそろとゆっくり膝の辺りから唇を這い上らせてくる。
今や、もうとっくに玲伊さんが施してくれる快楽の虜になっていたわたしは、そんなふうにされると、早く敏感なところに触れてほしくて、たまらない気持ちになってしまう。
「あっ……」
でも、わたしの望みは充分すぎるほど察しているはずなのに、玲伊さんはやっぱり、そこに触れてくれない。