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凍結していたSNSを再開させてくれたのもこの人。
そして何よりも凄いのがこの人の最大の武器はこの人自身の人間性であるということ。
初めて会った時、私は緊張してガチガチになっていたけれど、すぐに打ち解けることができたのはそのせいだと思う。
私がどんなことを言っても優しく受け止めてくれる。私の話を真剣に聞いてくれる。私を理解しようとしてくれる。
本当に優しい人で、こんな素敵な人がお父さんだったら良かったのになって何度も思った。
それくらい大好きな人だった。
その日は雨が降っていてとても寒かった。
学校帰りの午後4時頃、傘を差しながら一人で家路についていた。
普段ならお母さんがいるはずなのだけど、今日に限って用事があるらしく仕事に出ていた。
なので仕方なく自分で買い物をし、ついでに夕飯を作ろうと思い立ったのだが、生憎冷蔵庫の中はほとんど空っぽだった。
スーパーに行く途中にある商店街を通り過ぎようとしたところで、私はあることに気が付いた。
(あれ・・・?)
それは何かしらの違和感のようなものだった。
辺りを見回すが何もない。
しかし、どうにもおかしい。どこか変だと感じる。
それがどこなのか分からないまま歩いていると、目の前に大きな水溜りがあることに気付いた。
その水溜りにはたくさんの魚たちが泳いでおり、まるで海のようにキラキラしていた。そして私の足元にも小さな魚の影が見える。
こんなところに池なんてあっただろうかと思いながらも、私は何気なくしゃがみ込み、水面を見つめていた。すると突然、水の中から何かが出てきた。それは人間だった。それも私と同じくらいの歳の男の子である。彼は驚いて尻餅をつく私に向かって微笑みかけ、「こんにちは!」と言った。そしてこう続けた。
「君はどうしてここに来たんだい?」
しかし私の口から出たのは意味不明な言語だった。当然である。私は日本人なのだから。ただその瞬間、なぜかそれが日本語ではないことがわかってしまった。なぜなら、彼の口から出てきたのもまた日本語ではなかったからだ。
しばらく沈黙が続いたあと、彼が言った。
「僕はこの世界の神様なんだ」
そしてこう続ける。
「君にはこれから異世界に行ってもらうんだけど、そこで僕の手伝いをしてもらいたいんだ」
これは一体どういうことだろうと思ったものの、何故かあまり驚きはなかった。それよりも私は自分がこの世界について何も知らないことに気がついて驚いた。
「あのー、ここはどこですか?」
私が尋ねると、彼は笑顔を浮かべたまま答えてくれた。
「ここは君のいた地球とは別の次元にある惑星だよ」
どうやらここはまだ夢の中らしい。早く起きなければ遅刻してしまう。そう思って頬を思い切りつねってみたのだが、痛かった。夢じゃないのか……? だとしたら、なぜ私は見知らぬ少年の前で、訳のわからないことを言っているのだろう? そもそも本当にここは別次元なのか? そんなことを考えているうちにだんだん頭が混乱してきた。すると今度は目の前にいる少年の方が私の顔を覗き込んできた。彼は私よりも頭ひとつ分背が低いようだ。そしてとても端整な顔立ちをしていると思った。
こんなに綺麗な男の子を見たことがない―――そう思った瞬間、彼の姿が見えなくなった。その代わり、見たこともないほど大きな木が現れた。その木には大量の花がついている。色とりどりの花々はとても鮮やかだった。
それにしてもこの風景は何だろう? 初めて見るはずなのだけれど懐かしい気がするのは何故だろうか。不思議に思っていると突然声をかけられた。それは紛れもなくあの少年の声だったが、普段学校で聞いているものとは違っていた。どこか大人っぽい雰囲気があるものの、やはりまだ子供らしさが残っているという感じである。
「こんにちは」
少年の顔を見てハッとした。先程まで確かにここに居たのは、自分と同じ年頃の少女だったはずだ。しかし今目の前にいるのは明らかに小学生くらいの少年である。一体どういうことなんだ?「君はだれだい?」
恐る恐る話しかけてみると、少年は少し困ったような顔をしたがすぐに笑顔に戻った。そして言った。
「僕は…………死神だよ」
その答えを聞いて私はさらに混乱してしまった。なぜなら私がイメージしていたのは黒いローブを着て大きな鎌を持った骸骨みたいな姿だったからだ。こんなに可愛らしい男の子だとは全く思っていなかった。
「本当に死神なのかい?」
私はまだ半信半疑だったけど、彼女の言うことを信じることにした。
だって彼女が嘘をつく理由がないんだもの。
それにしてもすごい偶然もあるものだと思った。まさか同じ日に同じような体験をするなんて。
私は彼女に会えて本当に良かったと思っている。彼女も同じ気持ちなら嬉しいんだけど・・・
―――
その日の夜。
彼女は家に泊まることになった。
パパとママが海外旅行に行っていてしばらく帰って来ないことを伝えると、「じゃあアタシここに住む!」と言ってきたからだ。
もちろん大歓迎である。
彼女は料理上手なので食事当番がいなくて助かる。
「ねぇねぇ、わたしと一緒にゲームしない? 格安スマホ契約したんだー!」
と誘ってくれたので、僕は早速その日の夜に彼女の家へ向かった。ちなみに彼女の名前は【Y】という。本名ではない。これはニックネームみたいなもので、みんな本名は知らない。
僕は電車に乗って移動し、駅から歩いて5分くらいの場所にあるアパートの二階にある一室へと案内された。
部屋の中には大きなテレビがあり、パソコンもあった。あとベッドがある。
「ここに座ってて~。今お茶持って来るからね。あっ、お菓子もあるよ~」
Yちゃんは笑顔で僕に手を振ると台所に向かった。
そして数分後、彼女は湯気が立ち上っているコップ二つを持って来た。中身は何だろうと思ったけど、とりあえず口をつけることにした。熱い紅茶だった。砂糖が入っているのか甘かった。
「どう? おいしい?」
Yちゃんがニコニコしながら聞いてきた。
「うん、おいしい」
僕は答えた。するとYちゃんはさらに笑みを深めた。
「よかった~。じゃあ次はスマホ触ろうか。設定とか教えるね」
それからは二人でしばらくスマホについて色々教えてもらった。正直言ってあまりよくわからなかったけど、とりあえず電話の機能がついていることだけは理解できた。
そしてこのスマホなる代物は、どうやらインターネットという世界中の人と情報を共有することができるらしい。それはつまり、私の世界を広げることに他ならない。私は胸が高鳴った。これからの人生においてスマホはとても重要なアイテムとなるだろう。
私が興味津々と聞いている様子だったのか、彼女はさらに色々なことを説明してくれた。
なんでもネットというのは世界中に繋がっているらしく、その中の一つであるSNSと呼ばれるサービスでは写真や動画を投稿したり、チャットをしたりできるとのこと。ちなみに彼女も使っているらしい。
そして私達は早速連絡先を交換した。電話番号を教えてもらう時にちょっとドキドキしてしまったのは内緒である。
ついでにアドレス帳にも登録してもらうことにしたのだが、そこには知らない人の名前がたくさんあった。どうやら彼女の周りにはたくさんの人がいるようだ。その中に、一つだけ気になる名前があった。
(あっ……..)
その名前を見て思わず声が出てしまった。なぜならそこに表示されていた名前は────
『七瀬 真也』
そう、紛れもなく真也の名前だったからだ。これは偶然だろうか?それとも運命なのか?とにかく、彼女とはいつか会える気がした。そう感じたのである。
私はそのことを彼女に告げた。すると驚いた顔をしたあと、嬉しそうな表情を浮かべてこう言った。
「あー、やっぱり同じ学校なんだね。実は私も同じこと思ってたんだ。そのうちまた会いたいね!」
その時の笑顔があまりに可愛くてドキッとした。まるで天使のような笑顔だった。
そしてこの娘と一緒にいれば自分も明るく楽しい気持ちになれると思った。
僕はこの娘のことが気になり始めた。
「あのさ、今度二人で遊びに行かない?」
僕の誘いに彼女は少し驚いた様子だったが、すぐにニッコリ笑ってこう言った。
「もちろんOKだよ!」
彼女の返事を聞いて嬉しかったけど、それと同時に不安もあった。僕なんかと出かけても楽しくないだろうというネガティブな考えが頭に浮かんだからだ。しかしそれでも彼女と出かけたいと思ってしまう自分もいる。こんなふうに誰かのことを思うなんて生まれて初めてのことだった。
それから数日後、彼女が僕の家にやってきた。僕は彼女を部屋へと案内したが、彼女は物珍しげに部屋の中を見回していた。僕は彼女に椅子に座ってもらうよう促すと、彼女は素直に従った。そこで僕は早速切り出した。
「突然誘っちゃってごめんね」
すると彼女は首を横に振った。
「全然大丈夫だよ。私こそいきなり押しかけちゃってごめんなさい」
そう言って申し訳なさそうな顔をした彼女を見て、思わず胸がきゅんとなった。その表情があまりにも可愛かったからだ。それにしてもどうして謝る必要があるのか不思議だった。だって約束もなく突然やってきたのはこちらなのだから。それとも自分が思っている以上に彼女の家は厳しいのだろうか。それともまた別の理由があるのかもしれない。とにかく彼女の顔にはどこか寂しさのようなものが漂っていて、それがなんだかとても可哀想に見えた。
「あー、もしもし、今大丈夫かな? 突然電話してごめんね。実は折り入って頼みがあって──」