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第43話 〚誰かに見られていたとしても〛
夕焼けの帰り道。
澪と海翔は、
手を繋いだまま歩いていた。
強く握らない。
でも、離さない。
それだけで、
胸が満たされていた。
「……変な感じだな」
海翔が、小さく言う。
「……でも、嫌じゃない」
澪も、正直に答えた。
二人は、
少しだけ笑う。
その時だった。
――視線。
背中に、
突き刺さるような感覚。
澪は、
無意識に足を止めた。
「……?」
海翔も気づき、
振り返る。
少し離れた街灯の下。
そこにいたのは――
西園寺恒一。
傘も差さず、
立ち尽くしている。
視線は、
はっきりと二人の“手”を見ていた。
空気が、
凍る。
澪の頭に、
かすかな痛み。
――妄想(予知)。
恒一の表情。
歪んだ笑み。
そして――
「奪われた」という言葉。
映像は、
すぐに途切れた。
でも、
嫌な感覚だけが残る。
恒一は、
ゆっくりと歩み寄ってきた。
「……仲いいね」
声は、
やけに落ち着いている。
「前から、そうだったっけ?」
海翔は、
澪の前に一歩出た。
手は、
離さない。
「用事あるなら、言えよ」
恒一は、
一瞬だけ目を細める。
「別に」
「ただ、見えただけ」
視線が、
再び手元に落ちる。
「……手、繋いでるの」
その言葉に、
澪の胸がざわつく。
でも――
離さなかった。
澪は、
ぎゅっと指に力を込めた。
それに気づいた海翔が、
少しだけ強く握り返す。
その様子を見て、
恒一の表情が変わった。
驚き。
理解。
そして――
はっきりとした嫉妬。
「……そっか」
短く言って、
恒一は視線を逸らした。
「じゃあ」
それだけ残して、
背を向ける。
足音が、
遠ざかっていく。
沈黙。
「……大丈夫?」
海翔が、
小さく聞く。
澪は、
深く息を吸ってから頷いた。
「……うん」
嘘じゃなかった。
怖くないわけじゃない。
でも――
今は。
手を繋いでいるこの現実の方が、
ずっと強かった。
夕焼けの中。
二人は、
再び歩き出す。
知られてしまったとしても。
見られてしまったとしても。
この手は、
もう離さない。
その背後で――
恒一の感情は、
静かに、
しかし確実に、
危険な方向へ傾いていった。
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