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Ifルート 「名誉」
幼い頃から勇者に憧れた僕は、19歳の春、ついに魔王城へ辿り着いた。空は荒れ、雷が鳴りながら、禍々しい雰囲気を纏った魔王城がそびえ立っている。重々しい雰囲気に手汗をかきながら、ゆっくりと重い扉を開けると…


ブロンドの長髪をなびかせながら、階段を降りる、魔王が立っていた。


魔王「よく来たな、勇者!」


ニヤリと嘲笑うかの様に赤い目を光らせている。後光で光り輝く髪をなびかせており、神秘的な雰囲気を纏っている。ドクッドクッという胸の高鳴りと共に、全身に熱がこもっていく。恐らく緊張しているのだろう。落ち着かせようと、一呼吸し、彼女に応える。


勇者「魔王っ!覚悟しろ!」

魔王「ふっ、覚悟するのはお前の方だ!」


そう言いながら、魔王は手を振りかざし、赤い火の玉が魔王の手に現れた。どうやら魔法を使うらしい。対抗する為、聖剣を取り出す。眩い光を放ち、持ち手から魔力が注ぎ込まれる。


勇者「はぁっ!!!」


魔王が火を放つ瞬間に、僕も聖剣を振りかざした。眩い光と共に、火も消えている。


魔王「ふっ、やるな、勇者!だが、まだまだだ!」


その時、魔王から、熱風を感じた。強烈な風に、思わず飛ばされそうになる。聖剣を地面に突き刺し、魔王を見ると、魔王の手から炎が出ていた。どうやら炎と風を同時に使い、威力を高めている様だ。


魔王「はっ!」

勇者「クッ!」


なんとか聖剣を振りかざし、炎を消し去った。風の影響で、あちこちに火が飛び散っている。


勇者「くらえ!これで終わりだ!」

魔王「!?」


魔王が油断した隙に、聖剣を振りかざす。眩い光が魔王目掛けて一直線に、魔王を包んだ。


魔王「っ…」


魔王がボロボロになり、床に寝そべっている。服も傷み、魔王の白い肌が露出している。点々と赤黒い血が床に飛び散り、はぁ、はぁ、と荒い呼吸音が響き渡る。


魔王「…もはや、ここまでか…」


諦めた様に瞼を伏せ、魔王が呟く。息も途切れ途切れで、ヒュー、ヒューと音がする。美しい金色の髪も、所々血で赤く染まっている。


魔王「お前も、可哀想だな…所詮、英雄にしか、なれんのだから…」


魔王が憐れむ様な目でこちらに訴えかける。僕も分かっていた。所詮、魔王を撃った所で、名誉しか得られないのだと…分かっていても、そうするしか無かったのだから…。


ライラ「…貴様ぁ!!!」

勇者「…っ!」


向かってくるダガーに気付き、咄嗟に聖剣で防ぐ。ギンっと金属音と共に、ヒラヒラとメイド服が揺れている。ダガーは鋭く尖っており、怪しく煌めくその剣先は、彼女の殺意を露にした。


ライラ「貴様っ!殺す!殺す!!!」


強い憎しみと悲しみの表情で、ダガーを振る。あまりの素早さに、防ぐ事しか出来ない。ライラの一瞬の隙を狙い、ダガーを打ち払う。ヒュンヒュンと宙を舞い、後方の床に突き刺さった。ライラはフラっと力が抜けたかの様に、地面に崩れ落ちる。


ライラ「…魔王、さま…。」


ゆっくりとライラが魔王に近づき、呼びかける。


ライラ「魔王様、魔王様!!!」


必死に呼びかけ、魔王の身体を揺するが、反応が無い。見ると、魔王は目を閉じ、微動だにしない。


ライラ「あ…魔王、さま…。」


ライラが何か察した様に、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。そっと魔王の胸に手を当て、鼓動を確認している。


ライラ「あ、ああ、ああああああああ!!!!」


瞬時に、ライラが僕を目掛けて飛びかかる。いつの間にかダガーを抜いて、僕に振りかかってくる。ギンっギンっと音を立て、剣を交える。一振一振に、先程より強い力を感じた。


ライラ「貴様っ!よくも、よくも魔王様を!!!」


強い憎しみの言葉は、まるで呪いの様に重くのしかかってくる。一つ一つ、憎しみを受け止めていく…。彼女にとって、魔王がどれだけ大きな存在なのかを、ダガーの重みが示していた。思わず涙を零しながら、頬を濡らしながら、懸命にダガーを振りかざす。それをしっかりと受け止めていると、ダガーの攻撃が弱くなっていった。


ライラ「はぁ、はぁ…っ」


体力が限界なのか、床に突っ伏し、ただただ涙を流している。


勇者「すまないが、これが僕の使命なんだ…。」


ライラ「魔王、様…せめて、お側に…。」


ライラは床を引きずりながら、魔王に近づいていく。そっと魔王を抱き締め…


ライラ「魔王様…」


僕は、今までしてきた様に、ライラに…


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


魔王城から、しばらく歩くと、街に着いた。街はいつも通り賑わい、僕の心を落ち着かせる。僕は、王に報告する為、城へ向かった。きっとこれから、魔王を撃った名誉だけが、僕の中に残るのだと…


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


魔王城の中央には、大きな棺に沢山の花々が彩られている。その中には、寄り添い合う、魔王とライラが収められている。安らかな顔は、まるで眠りについたかの様に…

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