テラーノベル
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「……やぁ、Mowl。」
「最近、僕の可愛い愛猫が、あの粗暴な狼に乱暴にされているようだが……大丈夫かい?」
重厚な静寂が満ちる謁見の場。
支配者、スペクターの静かな声が闇に響いた。
その鋭い視線は、Mowlの胸元の少し乱れた黄色いリボンと、僅かに残る狼の爪痕へと向けられている。
気遣うような言葉とは裏腹に、その雰囲気は配下の「愛玩物」が勝手に傷つけられることへの不快感を孕んでいた。
しかし、黒ハチワレ猫頭の紳士、Mowlは顔色一つ変えず、愛用のモノクルを「スッ」と指先で優雅に直した。
茶色のマントを優美に翻し、深々と一礼を捧げる。
「お気遣い、心より感謝申し上げます、スペクター様。」
「……ですが、どうぞご安心召されませ。私めは傷つけられているわけではございませんよ」
「ほう?」
「ウルフ殿は、己が私めを完全に支配し、力で屈服させていると思い込んでいるご様子。」
「……ですが、私めから見れば、あの狼の振る舞いは実に微笑ましく、可愛らしくすらあるのです」
Mowlの目の奥で、冷徹な光が揺らめいた。
先ほどまでの「可哀想な被害者」の面影はどこにもない。
手袋をはめた指先を、すっと己の鋭い爪のように立ててみせる。
「お忘れですか? 私めもまた、人を屠るキラーの一角。」
「私めが本気で抗い、牙と爪を立てれば……」
「あのような大雑把な狼の、残された片目を一瞬で抉り取ることも、容易いこと」
穏やかな紳士の声色には、捕食者の確信が混ざっている。
「……ですが、己の欲望のままに、私めの匂いと体躯を貪ろうと躍起になる。」
「その必死な姿に触れると、私めはどうしても、可笑しさと愛おしさで…」
「喉が鳴ってしまうのです」
Mowlはハチワレ顔を少し傾け、うっとりと目を細めた。
「捉えた獲物をすぐには殺さず、息の根が止まる手前でじっくりと転がし、弄んでしまう……。」
「これは抑えきれぬ、猫の習性でございます」
その言葉を聞いたスペクターは、一瞬の静寂ののち、喉を低く鳴らして小さく笑った。
「ふふ……『猫をかぶっていた』とは、まさにこのことかい?」
「……コホン。紳士の嗜みにございますよ」
「なら、いいんだよ。僕の愛猫が楽しんでいるのなら、口出しは野暮というものだ」
スペクターは満足そうに目を細めると、冷たく重厚なその手で、Mowlの黒ハチワレの頭をポン、ポン、と優しく撫で回した。
前回の力任せな撫で方とは違う、真の所有者としての慈愛に満ちた撫で方だった。
「では、下がりなさい。またその『可愛い狼』とたっぷり遊んでくるといい」
「ははっ。ありがたき幸せにございます」
◇
重い木製の扉を押し開き、スペクターの私室を出た直後のことだった。
ガシッ!!
廊下の暗がりから伸びてきた太く黒い腕が、逃げ場を塞ぐようにMowlの細い手首を激しく掴み上げた。
「……チッ。また、スペクターの匂いをつけてきたな」
待ち伏せていたウルフだった。
右目の黒い眼帯を歪め、左の赤目をギラギラと怒りに燃え上がらせている。
ウルフは強引にMowlの体を引き寄せると、その首筋に鼻を押し付け、深々と匂いを嗅ぎ取った。
「俺が昨日、あれだけお前に俺の匂いを叩き込んでやったってのに……! 懲りねえ猫殿だな。また俺に全身舐め尽くされたいのか?」
威嚇するように鋭い犬歯を覗かせ、凶暴に低音で脅しをかけてくるウェアウルフ。
自分こそがこの猫の絶対的な支配者であり、所有者であると疑わない、力任せで強固な独占欲。
「にゃ……っ! ウ、ウルフ殿……強引でございます……っ!」
Mowlはいつものように情けなく怯える振りをして見せた。
だが——
ウルフが己を抱き潰そうと、太い腕を腰に回して引きずり込もうとしたその一瞬。
Mowlは小さなピンク色の舌を「チロッ」と覗かせると、静かに舌舐めずりをした。
(ふふ、ウルフ様。今日も私めに夢中で…)
ぞく、と背中が震える。
(…本当に、お可愛い♡)
ゴロロッ…ゴロゴロゴロ……ッ♡
Mowlは今日も、己を必死で求める「オス狼」の存在に、喉が鳴るのだった。
城プル
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#1x1x1x1
ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
1,088
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