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姫様が亡くなられた。
原因は毒殺だった、という話です。
まるで青天の霹靂のようなお話でした。
僕は、失望したのでしょう。
姫様が僕とそう変わらない背丈の頃から教育係として付いておりました。
何度も、戦いに関わるということの責任と、殺生の意味。
そして命の大切さを説いてきたつもりでした。
大切な「歴史」を僕らは命を賭けて守る。
それは敵も同じことだ。
そう何度も彼女へ言い聞かせました。
だというのに、彼女は毒に侵され、亡くなってしまった。
そして、安堵してしまったのでしょう。
何に――彼女が立派な審神者となれたことに。
世間一般に殉職は審神者の正しい死に方の一つらしいですから。
僕は、役目を全うできましたよ主君。
僕の主君は、本丸を持ったときには身籠っておられました。
主君は仰った。
「この家の子は審神者以外になれないの。霊力が桁外れに多いから」
勿論私も。そう付け加えた後、目を伏せられた。
「だから、貴方はこの子の刀になって、護ってあげてね。」
僕の頬を撫でながら、ひどく優しい笑顔でそう語りかけられ、僕は頷くしかありませんでした。
…これでやっと、主君の刀になれる。初鍛刀としての努めを果たせる。
そういった気持ちがこの安堵感の正体なのでしょう。
だから、彼女が憎くて、恨めしくってたまらない!
なのに、なのに、頬を伝って来る水滴の意味が分からない。
【本丸解体後の異動先に就いての希望調査】
そんなあっさりとした題の付いた書類をぼやぼやとした視界で眺める。
そして、その他――「主君の本丸に異動を希望する」に