・青桃🎲
・死ネタ
・nmmn
「償い」
愛情って、なんだろう?
そう思い始めたのは、
彼と付き合って何年かたった頃だった。
最近、妙に冷たい。
おはようも、行ってきますも言わず
仕事に行く。
おやすみとか、こっちから言わないと
言ってくれない。
そこで、少しだけ、悪いことだけど、
休みの彼の跡をつけた。
胸の奥にしまったはずの予想が的中した。
綺麗で華奢な女性と腕を組み
歩いていた。
「いふくん、大好き。」
そんなことを言っていた。
その返事だけは聴きたくなかったのに、
力が抜けて、耳がふさげなくて、
逃げることもできなかった。
「俺もやで、」
何かが、音もなく割れた気がした。
「…まろ、寝てる?」
ドアの前で問う。
案の定、返答はない。
彼の部屋のパスワード。
俺の誕生日のまんまだった。
「…まろ、」
ベッドの横に立つ。
綺麗な顔。イケメンで、
高身長で、ハイスペック。
そう思えば、彼女ができない理由なんて
ないんだって、気づかされた。
馬乗りのように、
彼のお腹に乗る。
クズ男。
彼と付き合った理由さえ、
忘れてしまった。
バイバイも、さようならも言わない。
何もわからないまま、殺す。
俺が殺したことが、バレないように。
「ん…ない、こ…?」
彼が目をこする。
起きてしまったんだ。
手に握っていた
フルーツナイフを落とす。
「…まろ…おきて、たの…、?」
動揺、困惑、混乱。
いろんなことを考えていたら、
彼が床に落ちたナイフを見て
少しびっくりしたようなリアクションを
した後、こっちを向いた。
「…これ、ないこの?」
拾って、自分に渡してきた。
意味がわからない。
何が、したいのか。
「…ちが」
「嘘つかんくてええよ。」
「…バレとったな、やっぱ。 」
浮気していたことを、認めた。
それで俺が殺そうとしてるのも、
全部見透かしていた。
昔から、俺の考えてる事が、
全部わかる。
怖いくらいに。
「…さいてい、だよ…
くず、ばか、ごみ、ろくでなし…」
思いつく言葉が、そのまま
口から出ていく。
今すぐにでも殴りたい。
今すぐにでも殺したい。
それなのに、それなのに。
「…泣かせてごめんな。
ないこ。」
涙が、ずっと流れていた。
彼は、全て受け入れたような顔をして。
そのまま、自分の首にナイフを刺した。
「っ…」
顔を歪めて、ベッドから落ちた。
「……、…」
全て終わった。
彼は自害して、終わった。
俺が殺したかったのに、
勝手に自分で死んだ。
「…ふざけ、んな…」
彼の喉に刺さったナイフを抜く。
血が飛び出て、真っ白な布団にも
赤いシミができた。
思いっきり、彼の手を刺した。
「ふざけんな、ふざけんな、
なんで、ふざけ、んな、ふざ、け…」
何回も、何回も何回も刺した。
自分が嫌い。こいつも嫌い。
全部、もう大嫌い。
彼の死で、何かを感じている自分が、
だいっきらいだ。
あいつのナイフを持つ手が、震えていた。
涙を流して、ナイフで俺を刺した。
自分で自分の死を下したこと が、
俺の最大のわがまま。
辛い思いをさせてごめんと、
言葉は送れた…けど、
これから一生をかけて償う
と、誓えなかった。
あいつは、最後の最後に謝った。
俺の気持ちも何も知らず、
俺を置いて、どこかへ行った。
死 が、彼なりの償いなのか。
あんなのが、罪滅ぼしのつもりなのか。
高台からの景色が、とても綺麗だ。
久しぶりに、心が晴れた気がした。
あんなどうしようもないやつでも、
寂しくて、泣いてるかもしれないから。
俺に会いたくて、しかたないだろうから。
俺の、罪滅ぼしのために。
足が宙に浮く感覚が、なぜだか
とても、心地よかった。
コメント
7件
こiろそうとしてたほどの感情抱いてたはずなのにそれ上回るほどの激重愛残っちゃってるのすごい良です…!! 桃、会いに行くとか言って青と同じようになるのかな…
桃くんも死んじゃったやつだ… すきだ……( 諦めきれなくてまだすきなのに、 それを認めない感じ… でも結局すきだから、何かと理由をつけて 追っちゃう感じ… いい具合のドロドロで刺さりました💘