侑 『はぁ? 今なんて言った?? 、 』
夕食もお風呂も終わり、 ゆっくりリビングで ソファに寝転びながらくつろいでいる時だった。
同じように床で寝転がっていた治から、衝撃のことを聞かされた。
別に聞こえなかったわけではなかった。
ただ、信じられなくて聞き返した、
治 『やから、俺は高校でバレーやめようと思っとる。』
しばらく沈黙が続いた。
聞こえてくるのはキッチンでオカンがお皿を洗っている音だけだ。
俺は状況が理解できず唖然としていた。
侑 『はぁ??』
本日2度目の ゙ はぁ? ゙ だ。
その言葉しか出てこなかった。
(今日俺は稲荷崎高校バレー部の主将になった。
治は副主将。 今年は春高で2回戦敗退という結果で終わり、しかも北さんど孫の代まで自慢できる後輩になる゙ そう約束したばかりだ。俺の頭の中は、?で埋め尽くされていた。)
さっきまで携帯をいじっていた2人だが
お互いガタイの良い、いかにもスポーツマンらしい体を起こして目を合わせた。
また沈黙が続く 。
侑 『どういうことやねん? ちゃんと説明しろや。』
沈黙を破ったのは侑だった。
治は言う、
治 『俺は、高校卒業したら調理の専門学校行こうと思っとうねん。 将来自分の店もちたいし、経営の勉強とかしたいなと思て。』
涼しい顔をして、平然として答える治を見て、
ふつふつと 怒りが湧いてきた。
侑 『そんなん聞いてるんちゃう!!』
自分でもビックリするぐらいの声の大きさで
叫んだ。 いつも眠そうな顔をしている俺にそっくりな片割れは、目を丸くしてこちらを見ていた。
『何や侑、うっさい!!夜やで!!声の大きさ考え!!』
皿洗いが終わったのだろう。 手を拭いてこっちにくるオカンに、声が大きいと怒られた。 その怒る声も煩いのでは、 と思った侑だが もっと怒られるのを分かっていたので 喉まできていた言葉を飲み込み 黙った。
母の登場により、話すタイミングを失いこの話は一旦とぎれ、3人で他愛もない話をして過ごした。
どれほど時間がたっただろう。
さすがに飽きた。 なんせ、オカンがずっと喋り倒していたのだ。 1週間後はオカンとオトンの結婚記念日らしい。 だから1週間後は 温泉旅行に行くと言うので、俺とサムで留守番をしてほしいと言う話から始まり、 どうやって出会ったかや、付き合い始めた時の話、結婚した日の話、俺とサムが生まれた時の話など、興味深い話も多かったが、半分以上惚気話だったのだ。
でも、親同士仲が良いのはいい事なのでそこは自分の親ながら微笑ましく思った。 横を見ると真剣に話を聞いているサムがいる。 きっとサムも同じことを考えているのだろう。
オトンが帰ってきたタイミングで、オカンがリビングから出ていった。 オトンの手には花束が抱えられており、オカンに目で合図された為、 俺とサムは オトンに゙お帰り ゙ とだけ言って、自分達の部屋に戻った。
——–キリトリ線——–
*治* *『さっきの話やけど、…』*
部屋に入った瞬間片割れが口を開いた。
だが治の話をこれ以上聞きたくない。
*この話を聞いたら、俺と治の間にある*何かを
失う様な気がして、 怖かった。
治が次のことを喋り出す前にかぶせて話した
*侑* *『何で、バレーをやめなアカンの?、*
なんで飯の道 ゙なんが 行くねん!!』
治*『あ゙? 』*
さっきまで穏やかに話していた治だったが、
その言葉を聞いた瞬間 低く怒り混じった声
*になった*。この時の治は結構怒ってる時の治で、
これ以上刺激したら絶対に手を出してくる。
゙いつもなら゙
治 『俺は、お前とちゃうんや。』
侑 『意味わからんねんけど… 嘘つき』
正直この後取っ組み合いになると思っていた。
けれど治は、少し泣きそうな 寂しそうな顔をして
侑を見つめてから、『すまん…』とだけ答え ベッドに潜ってしまった。
(何やねんっ。こいつ! 怒ったり泣きそうなったり、 、 泣きたいのはこっちやわ。 忘れたとは言わさんで。忘れとらんから最後謝ったんやろ?そおやろ?なぁ。。)
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7年前
治『今日もすっごいバレー楽しかったな!!』
侑 『おん! 今日めっちゃ調子良かったしな!俺ら!!』
アラン 『ほんま元気やなァ。 双子は。』
侑 & 治 『ふふーん(。・ω´・。)ドヤッ』
侑 『中学生なっても、高校生なっても、大人んなっても、 2人でバレーしたい!!プロなろ!プロ!!』
アラン 『アホか。そんな簡単になれたら苦労せぇへんっちゅうねん。』
治 『勿論や!! 全国行って、勝ちまくって、
有名になって、 美味しいもんいっぱい食べ
るんや!!』
アラン『え、それ バレー関係あらへんやないかーい!』
侑 『サム!約束なっ! ずっと俺とバレー続けんねんで!』
治 『おん!約束やっ』
アラン 『無視せんといて〜』
ギュ ) )
小指と小指を絡めてした約束。
こういう約束は、子供の時にはよくあるものだ。
*大きくなったら結婚しよう。などもそうだろう。*
*
*
*
*
だが、所詮子供の約束だ。 守らない事の方が多い。
そしてその約束を守らなくても、怒られることは無いだろう。 子供同士の約束は、そういうものだ。
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侑 『アホ 、 、 サムの嘘つき 、、ポンコツ…』
2段ベッドの上で寝転びながらそう呟いた。
起きているなら聞こえるぐらいの声の大きさで。
*少し目元があつくなったのを感じ、グッとこらえた*。
ずっと俺がバレーをする時には、隣にはサムがいて、どっちかが熱をださないかぎり、毎日のようにバレーをしていた。サムがいないバレーなんて、考えたこともなかった。 嫌 、 考えようとしなかった。 サムが隣にいるのが当たり前で、この先もずっと高めあって、バレーをするもんやと、
勝手に思っとった。
嫌や、 嫌や、嫌や。
何でこんなにも嫌なのか、自分でも理解できない。ただ考えれば考えるほどもったいないと思う。
治はユースには、選ばれなかったものの、
凄い実力の持ち主である。 それは、双子である侑が1番よく知っている。
だから、俺は認めへん。認めたくない。
きっと、あの時オカンに言ってなかった事を考えると、オカンにはもう言っていたのだろう。
サムは 飯の道に行くことを 今日初めて俺に話した。 まだ ゙迷ってる゙ とか、言うてくれたら、
少しは楽やった。 迷うぐらいやったら、やめぇや
って言えるから。
なんで、俺には話してくれなかったんやろ…
そう考えるとますます腹が立った。
明日も学校なので寝なければならないが侑の目はパッチリ開いていて眠れない。
下から寝返りをしている音が聞こえる。
サムも寝ているのか、起きているのか分からない。
俺は明日から無視することに決めた。
長い喧嘩になりそうな時は、絶対に俺は無視をして 向こうが折れるまで無視をし続ける。 過去に最高で1週間ぐらい話さなかった時もあった。
でもいつも折れてくれるのは治で、 話さなかったのが寂しくて泣くのは俺だ。
そんな俺を撫でてくれるのは治で 抱きしめるのは俺。 それが俺らの仲直りの仕方だ。
これで
全部俺の思い通りになると思ってた。
しかし治と俺を繋いでいる鉄の鎖は、
徐々に錆びていくのであった。。
𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹…
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