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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第91話 〚信じられる怖さ〛(澪視点)
海翔が、前に出なくなった。
それに気づいた瞬間、
胸の奥が、少しだけざわついた。
今までなら、
危なそうな気配があると、
すぐに間に入ってくれたのに。
今日は、隣にいるだけ。
(……どうして)
不安になったわけじゃない。
むしろ逆だった。
「大丈夫だよ」
そう言ったのは、
自分でも驚くほど自然だった。
でも、本当は——
大丈夫じゃない。
信じられるのが、怖かった。
もし失敗したら?
もし選択を間違えたら?
その時、海翔は後悔しないだろうか。
今までは、
守られている安心があった。
自分が弱くても、
誰かが前に立ってくれるという確信。
でも今は違う。
選ぶのは、私。
進むのも、私。
心臓が静かに脈打つ。
予知は、出ない。
代わりに、重たい沈黙だけがある。
(……逃げたい)
信じてもらえるって、
こんなに責任が重いなんて知らなかった。
教室の前で立ち止まった時、
海翔は何も言わなかった。
ただ、隣にいた。
それが、余計に怖くて、
でも、少しだけ嬉しくて。
私は深呼吸して、
ドアを開けた。
失敗するかもしれない。
傷つくかもしれない。
それでも——
信じられる怖さから、
目を逸らしたくないと思った。
だってそれは、
「一人で立っていい」って
言われているのと同じだから。
私はまだ震えている。
でも、歩く。
隣にいる人を、
信じ返すために。