テラーノベル
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ぺぽ゜
11
138
けー
1,800
みんなで小突き合いながら夏を楽しむ話。
ギャグ全振り。全てが地味に繋がった短編集のような物です。
外の道路を太陽がジリジリと照らしている。任務が終わった伊波はなんとか拠点まで辿り着き、拠点の扉を重々しく開けた。
扉を空けた瞬間、冷たい風がブワッと身体に当たり、汗という汗を冷やして外へ逃げていく。
その涼しさに、ライはぐでぐでに溶けて椅子に座った。
伊波「暑い…。溶けるって…。」
拠点の中にはアイスを頬張る叢雲がいた。叢雲は伊波を見つけるや否や満面の笑みで問いかけた。
叢雲「お疲れ。アイスいる?」
アイス。その単語に伊波が目を輝かせる。ジリジリと直射日光を浴びながら帰ってきた伊波にとって、アイスは疲れを癒す最高の食べ物だった。
伊波「欲しい!」
すると叢雲が待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑った。
叢雲「はい。アイスのゴミ。」
ぺっ、とゴミを渡される。
伊波は楽しみを奪われ、騙されたという事実に少し、いや、かなりイラついていた。ゴミを貰ったその手でゴミをぐしゃりと握り、言い放つ。
伊波「カゲツお前やりやがったな…。」
拠点の中をドタバタと追いかけ回す。後ろから迫るは鬼の形相。叢雲は、捕まったら殺られると確信していた。
叢雲「ごめんごめん!僕が悪かったってぇ!!」
しばらく経って、拠点の扉がガチャリと開いた。
星導「ただいまぁ…。って…。何してんの…?」
星導が拠点に帰ると、クーラーの下、汗ダラダラで寝っ転がる叢雲と伊波。
叢雲「あづい…。」
伊波「お前がアイスのゴミ渡すからだろ…。」
叢雲「伊波が追いかけてきたからやろ。」
伊波「はぁ…?任務頑張ってお疲れなヒーローにゴミ渡す奴のほうがおかしいだろ…。」
叢雲「タコ暑い。離れろ。」
星導「まだ3メートルくらいしか間空いてないでしょ。るべち泣いちゃう。」
伊波「泣いとけ泣いとけ。」
星導が口を開く。
星導「…あ〜あ。アイス買ってきたけどそんな口利くんだったら俺が全部食べよっかな〜。」
さっきまでの死闘が嘘だったかのように、2人は素早い動きで星導の両脇にすり寄った。
叢雲「星導さんクーラーの真下どうぞ。涼しいっすよ。」
伊波「…肩もみましょうか?」
星導「ふふ。はい、アイス。」
叢雲「やった〜!タコありがとぉ!」
伊波「ありがと。ん〜!冷た。小柳は?」
星導「さぁ…。散歩してたら熱中症で倒れて道端で寝転んでるかライブに向けてダンスレッスンかの二択じゃない?」
伊波「1つ目は悪口だろ。」
叢雲「そっか。狼ライブか。」
星導「3ヶ月くらい先だったと思うけど…。そういうとこストイックだよね。」
ブー、と星導のスマホが鳴った。
星導「あ。小柳君今から帰るって。」
伊波「部屋キンキンに冷やしといてあげよ。」
小柳「ただいま…。」
星導「お帰り〜。あっちの部屋冷えてるよ。」
小柳「やったぁ…。」
ダンスレッスンでヘトヘト、太陽の熱で弱った小柳がよたよたと奥の部屋へ向かう。その姿はさながらゾンビそのものだった。
小柳「あ”〜…。涼し。夏はクーラーだな。」
星導「スイカ切ってきたからみんなで食べよ。」
綺麗に切れているスイカを皿に乗せてこちらに持ってくるのは、変身した星導。
伊波「…?…どういう…?」
星導「スイカ丸くてゴロゴロしてるからちょっと切るの面倒くさくて。タコ足使ったから変身中になってるわけ。」
せっかく差し出されたスイカをまじまじと見つめてから、うげ、と小柳が不満を漏らした。
小柳「なんかヌメヌメしてそう…。」
すかさず星導が反論する。
星導「む、失礼な。俺のタコ足はすべすべですよ。」
みんなでスイカを頬張る。しばらく無言でシャクシャクと食べていると、小柳が口を開いた。
小柳「先っぽだけだよな。めっちゃ甘いの。」
伊波もわかるわ、と話に乗っかる。
伊波「うん。先っぽ以外はほぼ水。」
またしばらく沈黙が続いた後、一切れ食べ終わった叢雲が見て、と喜ぶ。
叢雲「見て、スイカの種一切れで12個。」
するととっくに一切れ目を食べ終わり二切れ目を食べかかっていた星導が対抗する。
星導「俺の13個なんで俺の勝ちですね。」
すかさず小柳も対抗する。
小柳「でも俺15個だから俺の勝ちな。」
星導「うぐ…。」
伊波「俺1個しか入ってなかった。」
叢雲「はい雑魚〜。」
星導「ライ最下位ね。」
小柳「俺が1位〜。」
伊波「…よく考えてみて。少ないほうが食べやすくない?ってなったら多いほうが食べんの面倒くさいから俺の圧倒的勝利〜。」
星導「はぁ!?それ無し!」
小柳「そうだそうだ!今は一番スイカの種が多いやつ決めてんだよ!」
叢雲「どうでもいいから食おうや。」
星導「お前が始めたんだろ。」
叢雲「僕は見てほしかっただけや。お前が始めたんや。」
星導「そっか。」
スイカ2玉もすっかり食べ終わってゴロゴロしていると、拠点の庭の木に、セミがいることに気がついた。
こんなに暑いというのに、セミはいつでも大声で夏の来訪を告げている。
小柳「あ。セミ。」
星導「カゲツ。行け。」
即座に捕まえさせようとする星導に、叢雲が呆れる。
叢雲「…あれアブラゼミ。なかなか捕れへん素早いやつな。全世界の少年の敵。分かってて言っとる?」
伊波「それでも忍者集団のトップかよ。セミに負けてんぞ。」
叢雲が伊波の安い挑発に簡単に乗った。
叢雲「…とれるし。」
叢雲があのアブラゼミよりも速く、細かく、確実な動きでアブラゼミ捕まえて帰ってきた。
ずい、と捕らえたアブラゼミを至近距離で見せてくる。
きっとアブラゼミもここまでガチで捕らえられるとは思っていなかっただろう。
星導「お見事。…近づけないでもらっていいですか?」
叢雲「伊波、肩に乗せたろか?」
伊波「え!欲しい!頂戴!」
セミを捕ったくらいでは暑いのは収まらない。
小柳「あっちぃな…。風鈴つけるか。」
伊波「風鈴をつけたからって涼しくなるわけじゃないけどね。」
叢雲「でも綺麗な音鳴るしな。」
星導「はい。鑑定部屋に置いてあったよく分かんない風鈴。」
伊波「…なんか呪われてたりしないよな?」
星導「………。」
星導がニコッと笑う。
小柳「そこは否定しろよ…。」
叢雲「ま、何も入ってないんは事実やしつけるで。」
軒に風鈴を吊るし、窓を開け、音が鳴るのを待つ。最初はみんなで風鈴をじっと見つめていたものの、一向に音は鳴らない。
飽きてきたのか、星導は何処かへ行ってしまった。
小柳「……風がないから音が…ならん。ははw!」
すると、いつの間にか帰ってきていた星導がそそくさと準備を始める。
星導「そう言うと思って扇風機持ってきましたよ。スイッチオン。」
ピッ、という電子音が部屋に鳴り響く。やがて風は強くなり、首を振り出した。
チリンチリンチリリリリリリチリンチリンリリリリチリリンチリチリリリリ
叢雲「うるさいわアホ。」
伊波「オフ。」
ピッ、という音とともに騒音が収まる。
星導「くwふふ…wwうるせぇ…ww」
小柳「アホなん?ww」
星導「ひぃww苦しいww」
伊波「はぁ、なんか余計暑くなった気がする。」
すっかり時間も経って夜。
星導「夏の夜と言ったら〜?」
伊波「星座探し?」
叢雲「鈴虫とか。」
小柳「花火。」
星導「……うんうん、怪談話だよね。」
叢雲「おい。」
パチ、と部屋の電気を消す。いつの間にか用意されていたロウソクが、部屋の真ん中で怪しげに光る。
さあ、と星導が静かに笑う。目元は暗くて見えない。どこか悍ましく、3人の背筋が自然と伸びた。
星導「怖い話でもして涼しくなろう。」
伊波「え〜。じゃあ俺から。」
叢雲「なになに?」
小柳「なんで乗り気なんだよ。」
星導「小柳君怖いの?」
小柳「怖く…ないし。」
伊波「間があったな。」
またどこからか星導が壺を持ってきた。どうやら鑑定品らしい。
星導「見て。怪しい壺。」
途端に部屋の空気がズン、と重くなる。叢雲が星導の肩に手を置いて、真剣な顔で口を開いた。
叢雲「…星導。それほんまにあかんやつ。」
叢雲と小柳は経験上妖や魔に敏感である。そんな彼らがこんな一般人でも「やばい」と分かるほどの魔を持った代物を見て、
はははwこれやべぇw、
なんて笑える訳もなく。
小柳「エグいってぇ…。怖すぎるぅ…。」
笑い話ではないことを察知した星導。妖や魔に詳しいわけでもないので、どうにかして引っ張り出した対処法は
星導「…捨てる?」
だった。
すると、叢雲がそれはあかん、と口を開いた。
叢雲「僕預かるわ。村で浄化する。」
伊波「結構やばいね。肩重くなった気がする。」
小柳「やめて?そういう事言うの。」
ズーン、とした空気を打ち破るように、あは、と星導が笑った。
星導「どう?涼しくなった?」
伊波「眠れなくて余計暑くなるね。」
星導「えぇ〜!?こんなに頑張って考えたのに。」
叢雲「それよりお前の鑑定部屋見してや。似たようなもんいっぱいありそうやし。」
星導「いいよ。こっち。」
しばらくして、2人が戻ってきた。叢雲の両腕の中には凄くやばい代物が沢山。星導も絵画を右と左一枚ずつ持ち、引きずりながら歩いてきた。
小柳「おま…どんだけあんだよ…。」
伊波「ディティカの拠点なんか空気淀んでない?って噂になってたのお前のせいかよ…。」
一通りやばいやつを庭に集めたところで、叢雲が口を開く。
叢雲「え…これで一日終わり?」
小柳「流石にキリが悪くない…?」
伊波「こんな呪物がまだ部屋に残ってるかもしれない恐怖に苛まれながら眠らないといけないの?」
星導「…仕方ないなぁ。じゃあみんなで放火魔になろう。」
スッ、と出てきたのは
お徳用120本入り手持ち花火〜。
叢雲「うおぉぉ!!」
みんなの顔がぱっと明るくなる。先程怪談話に使ったロウソクにもう一度火をつける。
星導「ほい。着火。」
伊波「先っぽの紙千切ってから火つけるんだよ。」
叢雲「へぇ〜。」
火に近づける。風が吹く。風鈴がなる。火が消える。
星導「あ。」
叢雲「ええ…。」
小柳「着火。」
叢雲「……あ!ついた!」
近づける。花火に火がつく。火が花火に持ってかれる。ロウソクのほうが消える。
小柳「…あ。」
星導「着火。こんな花火あるあるが集結することあるんだね。」
しばらくして風が止んだ。みんな各々で花火を取っては火をつけ、水の入ったバケツに入れては取ってを繰り返す。
小柳「ははwカゲツ何してんだよw」
叢雲「二刀流。抜刀式。抜刀!」
小柳「ははw……は?カゲツ。おま、殺るか?」
伊波「アハハw!!抜刀式ww!…ども。ww。」
星導「お前の犬にしてくださーい。」
小柳「お前ら…。」
星導「線香花火誰が落ちないか勝負ね。」
伊波「よーい…スタート!」
スタートと同時に、お互いがお互いの線香花火に息を吹きかける。当然、自分の動きで自分の線香花火が大きく揺れる。ポトリ、と全員の線香花火が落ちた。
星導「ふはwwみんなクズじゃんww」
叢雲「自分に帰ってきとるしなww」
小柳「線香花火誰が最初に消せるか選手権だった?w」
伊波「あ〜もう疲れた!寝よ。」
花火の片付けをしていると、叢雲がボソリと呟いた。
叢雲「…かゆ。」
星導「あ〜…。」
叢雲「うわ。めっちゃ膨らんでる。蚊に噛まれた。」
星導「実は俺も3つ。」
小柳「俺は全部潰したから0。」
伊波「俺は5つ。」
叢雲「僕は4つや。」
小柳「レモン汁とかいる?」
叢雲「クズで草。」
星導「はぁ。明日から任務あるし今日はもう寝よっか。」
伊波「はーい。」
あとがき
こんにちは。翠蓮です。もう最早冬ですね。最近、一気に冷えたり、かと思えば朝から暑かったりで体温調節が難しい…。
そんな季節にも関わらず夏真っ盛りのディティカを書かせて頂きました。
私の中の、夏のあるあるを全て詰め込んだ短編集。少しでも「あるある〜。」と思っていただけたなら幸いです。
また何処かで会いましょう。
(2026/10/15)
コメント
1件
うわ、めっちゃ夏って感じの空気感が詰まってて楽しかったです〜!特にアイスのゴミを「はい」って渡す叢雲さんと、本気で追いかける伊波さんの掛け合いが最高でした(笑)。あと風鈴を扇風機でガンガン鳴らすところ、あるあるすぎて声出して笑っちゃいました。線香花火でお互いに息吹きかけて全員落ちるのも絵が浮かんで好きです。こういうだらっとした日常のひととき、めっちゃ好きです🌷