《ウェンくんはママです》※とにかくママ
「ん……」
心地よい日差しが入り込む昼頃、桜色の髪の毛を揺らしながら
赤城は体を起こした。眠たげに目を擦りながら朝食のため
ベッドからおり、ひんやりと心地よく冷たい廊下をぺたぺたと
歩いていく。視界が少しずつ開けていき覚醒を施す。
「わ、まぶしっ…」
昨晩カーテンを閉め忘れたため薄暗い部屋に日差しが入り込み
目を細める。昨晩の自分を恨めしくも思いながら昼食とも
言えるであろう朝食を作り一人「いただきます」とつぶやき
ご飯を口に運ぶ。暖かい日差しの中寝癖もそのままに
ほわほわとしながらゆったりと過ごす朝は心地よく、 体を
癒してくれる。ご飯を食べ終わったあとは私服に着替えて
お散歩に出かけるのが日課。ということで「ご馳走様」と
口にした後お皿を食洗機にいれ、自室へと向かう。そこでスマホに
通知が来ているのに気づき、確認してみればめちゃつえーの
グルラからだった。頭に?を浮かべながらもLINEを開けば
いつも忙しそうにしている緋八や小柳、伊波が珍しく
暇になったらしく皆で会わないかとのこと。
「僕はいいよ!」と気軽な返事を送り、一旦スマホを閉じた。
万が一のため出かけようの服を出しておき、1度散歩をしに行く
ことにした。
外に出れば平日とのこともあり、人は少なく見かけるのは
数台の車や犬の散歩をしている方々。今日も街は平和だな
と思いつつ、色んな方に話しかけ、たまにはお菓子なども貰った。
なんか今日いいことあるかも?なんて調子にのりつつ
頭の中ではみんなに会えることがまずいいことだよねっ♪と
呑気に考え事をしながら家へと帰る。置きっぱなしにしていた
スマホを手に取り、再度LINEを確認すればちょうど決まった
ところだった。何やら今日の2時頃から赤城の家に来るとのこと
なんで赤城の家なのか本人が問えば誰も家には
入れたくないとのこと。そして反応がなかったため赤城の家に
なったのだと。散歩にスマホを持っていかなかったことを後悔
しつつ、渋々「わかった」と打ちまたスマホを閉じる。
グッと背伸びをし、出しておいた服に着替え、キッチンへ向かった。
みんなが来るとのこともありお持ち帰り用として唐揚げを
作ることにしたのだ。他にもパスタや人生初の肉じゃがなどを作り
冷蔵庫へテキパキとしまう。作り終わる頃には1時半を回っており
行動が早い緋八や小柳、伊波はそろそろ来る頃だろうと
身構えながら、リビングでのんびりとスマホをいじっていた。
それから少しして「ピンポーン」という無機質な音が響き渡った。
スマホを伏せ、「はーい」と声を出しながら玄関へ向かう。
「俺やで〜」という軽快な声に続き耳慣れした声たちが耳に届く。
ガチャという音ともに玄関を開ければオシャレした緋八達が目に
付き、同性ながらにあぁ、かっこいいな、なんて呑気に思う。
「お邪魔しまーす」と伊波が先頭きって入っていき、赤城は
そんな奴らの乱暴に脱がれた靴を整え自身もリビングへ向かう。
リビングへ向かえばまるで自分の家かのようにくつろぐ
彼らを見て「はぁ、」と白目を向きそうになる。ここは人の家だし
いくら私物が少ないからってそんなにくつろぐかと。しかし
赤城自身も人の家でだらしないことも自覚しているため
口に出すのも態度に出すのもやめて大人しくしていようと思う。
それから2時を少し過ぎた頃から次々と人は集まっていき2時10分を
すぎる頃には全員が集まった。さすがに男8人となると
むさ苦しいものであり、かなり精神的にやられるがまぁ、大好きな
友達であり仲間なため不思議とこの感じが恋しかったりもする。
話す内容はそれぞれ違い、不思議とグループごとに
固まるものである。しかし赤城は会話に混じることはなく
全員が見えるほどの 少し離れた場所からのんびりとその光景を
眺めた。深く考えもしないようなこの空間は普通なら当たり前で
でもヒーローをやる彼らにとってはかけがえのない特別なもので。
そんな特別が幸せとして赤城の心を埋め尽くす。何をする 訳でも
なくただ眺めているだけなのにこれほどまで心が安らぐのは
赤城の思いが酷く優しいものだからであるのと同時に彼の仲間が
それほどまでに優しく、強く、受け入れてくれるからであろう。
彼らに感謝しながら赤城は優しく微笑みゆったりと過ごした。
やがて各々喋ることが無くなってきてスマホに集中し始めた 頃、
時刻は3時を回りかけていたため宇佐美の腹の音がなった。
その音で一気に笑いが溢れ各々がスマホから視線を外した。
そこで出番と言わんばかりに赤城は立ち上がると一言。
「実は僕みんなの為に作ったものがあるからたべてよ!」と。
その一言に一気に皆が湧き始める。「まじで!?」と宇佐美は
騒ぎ「赤城きゅんのか、」と叢雲は呟く。「ウェンのは絶品やでー 」
と何故か自慢げな緋八の言葉に小柳は目を輝かせる。何気
小柳は赤城の唐揚げを食べるのは初めてであるため楽しみに
しているのだろう。赤城が「ちょっと待ってねぇ〜」と優しく
言うと「うぃ〜」という軽い返事とともに全員が机の元へと
向かった。人の家なのに手馴れている感じに不思議と笑みが零れる。
そのまま冷蔵庫を開け、食べるように作っておいたものをレンジに
いれ、チンとなるまで待つ。唐揚げは1分から2分ほどで 温まるため
直ぐに 取り出せる。取り出せばそのまま机へ持っていく。
その際にパスタや肉じゃがも一緒に出した。肉じゃがのじゃがの
部分をとってしまうが肉じゃがの達人の叢雲からも絶賛され
小柳からは毎日家に来て欲しいと言われる始末。相変わらず
緋八や佐伯、宇佐美からの感想も一言で言うならば絶賛であり
褒められるのが苦手な赤城は顔を赤らめながらもはにかんだ笑顔を
見せたのだった。そうして全員が食べ終わりお皿を食洗機に
入れる赤城の背後に1つの人影が近づいた。その影は思い切り
赤城の耳にふぅっと息を吹きかけ、そのゾワゾワした感覚に
赤城は「おぅわぁぁッ……」という変な声を上げながら崩れ落ちた。
その光景に一人またひとりと爆笑し、次第には大笑いとなった。
赤城は顔を赤くしながら、息を吹きかけた本人を睨む。
そこにいるのは鍛え上げられた体が自慢の筋肉鶏である宇佐美だ。
宇佐美は愉快に鶏のような笑い声を上げ、赤城を見下ろしていた。
腰が抜けてしまった赤城は「もぅ!」と怒り声を上げながら
「リトにもう二度とご飯作ってあげないよ!?」と口にした。
その言葉に胃袋を掴まれた宇佐美は一瞬にして謝罪を口にした。
その光景があまりにもおかしくて赤城も笑いが込み上げてきた。
「お前も笑ってんじゃねぇかw」という宇佐美の言葉と共にまた
爆笑が起きる。そうやって穏やかな時間は流れて行った。
そろそろ時刻も6時を過ぎ日が傾き始めたため緋八や小柳は
帰る準備をし始めた。これだけは 渡したいため冷蔵庫から
一人用の唐揚げを取り出すと紙袋に入れ、緋八と小柳に渡した。
2人は笑顔を見せ、「ありがとう、また来る」と一言添えて赤城の
家を後にした。またそれから少しすれば宇佐美、伊波、星導も
帰る準備をしだしたためまた唐揚げを渡し、「またねー」と一言
言えば「ありがとうなーまたなぁ〜」と呑気な返事が帰ってきた。
あとここにいるのは普段から暇な人物ばかりで、思わず笑みが
零れる。叢雲の「一気に静かになったね」という言葉に「本当にね」
と共感の言葉が漏れる。佐伯も少し寂しそうな顔をしていた。
残り3人。何をするか。特に思い浮かばいが色々話をしていれば
いいだろうと考えた。この3人は本当に比較的暇でヒーロー
と しての任務数は1週間に1度あるかないかと言うほど。
担当区域も違うため各々の能力が低いと言うよりは区域が平和だと
行った方が正しいのだろう。なのでよく集まることがある。
ただ3人ではなく2人が基本なので3人だと少し「うーん」と
なってしまうこともある。ただ時刻は7時半。そういえば今日は
呑んでいないと思い、炭酸とウイスキーを持ち出してきた赤城を
みて叢雲と佐伯は笑う。それを見て赤城は「いいだろ!呑んでも!」
と一言言えばまたその一言に2人は笑ってしまう。それにつられてか
赤城も嬉しそうに笑い出してふわふわとした優しい空間が広がった。
ここにいるのは末っ子の叢雲と佐伯ということもあり酔う訳には
いかない赤城は呑むペースをかなり落としていた。すると
突然佐伯が「ウェンくんってやっぱママだよね」という爆弾発言を
かましたため危うくウイスキーを吹き出すところだった。
それに対して叢雲は「まぁ、でも僕の兄貴でもあるから」と話を
展開するため赤城も乗っかるしかなく 。
「ならカゲツとテツも血繋がってるってことでOK?」と
良くも悪くも意味のわかってしまう脊髄トークをかまし空間は
一気に賑やかになった。時刻は9時を過ぎた頃。そろそろお腹も
空いてきたため叢雲が赤城へと問いかけた。
「お腹すいたんやけど僕が作ってもええ?」その意外な提案に
目をぱちぱちとさせるも「いいよ」と一言返す。しかしその後に
「でも」と言われ動きを止めた。?と叢雲が思っていると赤城は
「一緒に作りたい」と可愛らしいようななんとも言えないような
お願いを口にするもんだから笑いながら「ええで」と答えるしか
なく。そうやって2人でご飯を作り出来上がったのはカレーで
それを見るや否や佐伯の顔はキラキラと輝き出した。それが
あまりにも子供過ぎて赤城はケラケラと笑い、その様子に
叢雲も笑みを浮かべる。そして佐伯がたべていいかと許可を
求めてきたため皆で「いただきます」と口にしてカレーを
食べ始めた。ぱくっという効果音が着きそうなほどの勢いで
佐伯は1口頬張った。するとみるみるうちに目がキラキラと し始め
その姿がまたおかしくて赤城が笑ってしまう。叢雲もおいしいと
言いたげな顔で見つめてくるもので余計笑ってしまった。
皆が食べ終わった頃時刻は9時半過ぎ、ということでそろそろ
お風呂に入らなければならなくなってしまった。誰が1番
最初に入るかで揉めるかと思いきや、そんなことはなく。
叢雲▶佐伯▶赤城の順番に決まった。それもそのはずで。
ここにいるのが佐伯、叢雲以外の誰かであればこうもすぐには
決まらなかった。この2人だけが唯一赤城をお兄さんへと
するだけであり、普段末っ子なのは紛れもなくこいつなのだ。
それなのにこんな風にお兄さんお母さんへとしてしまうのは
2人の天性の末っ子具合がすごいからなのだろうが。
順番も決まったのでお風呂に入っている人が居ない時間のんびりと
2人だけの会話を楽しんだ。佐伯とは叢雲カゲツの話。叢雲とは
佐伯イッテツの話。赤城がお風呂に入っている間は赤城ウェンの話。
どれも全て褒める話であり、お互いがお互いを大好きなのが
バレてしまったがそんなことは普段からも見え見えで今更遅いと
開き直る。そうしてぱっと時計を見れば時刻もそろそろ
11時をすぎるため今日は泊まって いこうと全員が寝室へ向かう。
もちろん寝る訳ではなく、布団の準備をしに行ったのだ。
そうしてクローゼットの上の方から布団を2枚下ろし佐伯or叢雲
がベッドの上で寝るということになり2人が全力でジャンケン
しているのを見ながら赤城はリビングへと向かいゲームの準備を
した。そうしてしばらくすると寝室から佐伯の叫び声が聞こえ
思わず吹き出してしまう。そうしてのそのそと佐伯と叢雲が
リビングへ向かってきた。佐伯の顔を見ればしょぼくれており
面白おかしくて笑ってしまった。そうして笑っていれば佐伯は
「ウェンくん頭撫でて」と近寄ってきたためまた笑ってしまう。
足元に座りながら膝に頭を載せてくる佐伯が妙に可愛らしく
思わずにこにこしてしまう。そんな赤城の顔を見てか佐伯や叢雲も
にこにことしていて可愛いふわふわとした空間が広まった。
そうしてかれこれ3時間ほどゲームをして、眠気が襲ってきたため
ゲームを落として皆で欠伸をしながら寝室へと向かう。
時刻を 見れば2時であり皆がおやすみと一言いい各々眠りへと
着いた。
朝、目を覚ませば横に佐伯の顔があり声を出しそうになったが
赤城はなんとか堪え、体を起こした。暖かい光が注ぐ中起こさぬよう
ゆっくりと布団から出ると赤城は3人分の朝ごはんを作り始めた。
さぁて、今日も一日を楽しみますかっ♪幸せな笑顔を浮かべながら
料理をする赤城の姿を嬉しそうに目を覚ました2人は見つめた。
コメント
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今回のお話も素敵で途中口角上げながら読ませて頂きました🥰紫雨さんの書かれる作品、言葉選びから雰囲気が伝わってきやすくて読んでいてとても楽しいくて大好きです💭