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いかないで

1 - 青桃青

♥

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2025年04月25日

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【注意事項】

①こちらはirxsのnmmn作品です nmmnを理解している方のみお読みください

②この作品には、以下の要素が含まれますので自衛等お願いします

・青桃青

・青病み

③他SNSなど、齋-nari-の作品を公に出すことは絶対にしないでください

④コメント欄ではご本人様の名前を出さず、伏字の使用をお願いいたします





青.side




最近の日々を一言で表すならば、疲れた。

それ一択だった。…言い換えるならばしんどい、だろう。


そんな言葉しか出てこないほど、疲弊していた。

気持ちは前に前に進んでいるのに、体は俺の腕を後ろに引っ張るように着いてこない。

なんで、俺は進みたいのに。



そう自覚して、思考を巡らせた途端に溜まっていた疲れが体をどっと襲う。

これから会社に向かうために乗るはずの電車を見逃して、駅のホームの椅子に座った。


1度座ってしまったらもう身体は動かなくて、沈んでいくような感覚に陥った。



そこでふと、思ったことがある。




俺、もう何もしなくていいかな、と



動けないんだし、何も出来ないし。

何よりも、”疲れた”んだから。


無意識に首に手を滑らせる。軽く引っ掻くように指先が動いた途端、ぴとりと頬に冷たい感触がした。


「うゎっッ」


「…あはは、大袈裟ー」


ゆらりとピンクの髪を揺らしながら、眉を下げて大笑いする彼。朝から会うなんて。



「……こんな朝っぱらに、なんでこんなとこおるん」


「えー…気分。たまにはめちゃくちゃ早く出社しようかなって」


「…ふーん」


ないこからコーヒー缶を受け取り、カシュッと栓を開いた。

隣も同じように缶を開け、一気に口にコーヒーを流し込む。


「…まろはさぁ」


ちびちびと冷たいコーヒーを飲みながら、ゆっくりとないこは話し始めた。

その一言に反応する訳でも無く、ただ耳を傾ける、ただそれだけ。


「自分には厳しい癖して他人には優しいよね。…すぐそこに困ってる人がいたら助けるかとか、そういう問題じゃなくて。」


その言葉の意図が全くもって汲み取れず、思わず首を傾げるとないこは吹き出すように笑いをこぼした。



「つまり、自分にも優しくしてやれってこと。やりたいことあるんでしょ、なんでも言ってみるだけ言ってみたらいいじゃん。」


どうせ言葉なんだから、なんて付け足しながら、ないこはコーヒーを飲み干す。そのまま近くのゴミ箱に缶を捨て、再びどすりと隣に座った。



「……俺の、やりたいこと?」


「そう、まろがしたいこと。なんでもいいよ」

「あれ食べたいーとか、テレビみたいーとか、どこか行きたいーとか。」


俺が実現させてやるからさ








桃.side





珍しく早く家を出て、1人で朝早い会社で朝日でも浴びようかと、いつもより数時間早く家を出た。


扉に鍵をかけて、エントランスを抜けて最寄り駅まで向かう。



最寄り駅からは数駅で事務所に着くからと、少しゆっくりとしたテンポで駅構内を進んだ。


ICカードをかざして改札を抜け、階段を降りてホームへと出る。

次の電車が到着するまであと4分といったところだろうか。とりあえず飲み物でも、と降りてきた階段付近の自販機へと足を進めた。



すると奥に、よく見覚えのある相棒の影が見えた。

こんな時間に珍しいなんて思いながら、ホームの一番端らへんにある自販機でコーヒー缶を2つ買った。

……買ってから気づいたが、どうやら温かいコーヒーではないらしい。そんなの売るなよ。冷たいコーヒーなんて不味いじゃん。



すぐ隣に来たというのに、まろは一切俺に気づかなかった。

焦点の合わない目で線路側を見つめ、まるで鉛のように動かないと言うように身体は動く気配がない。

仕方がなく隣に座り、まろの首に伸びる手を遮るように頬にコーヒー缶を押し付けた。




それから声のトーンなんかを聞いていると、やはりいつもよりも覇気がない。

どこか疲れたと言うように、動きたくないと言うように。


「…まろがしたいこと、なんでもいいよ。」

気づけばそう口に出していた。俺がそれを確実に叶えられるという保証は無いけれど、まろを救いたいと思った。


ぴくりと肩を震わせたまろは、俯いたまま口を開き、ぽつりと話し始めてくれた。



「俺、一つだけやりたいことがあって」


「……仕事の日に、無断欠勤して、適当にバス乗ったりして」


「……うん、」



「適当に電車乗ってもえぇなぁ、…知らない場所に行って、散財とかしたり」


「ぶらぶら知らない土地歩いたり。…家とか、会社とかから遠く離れたところで時間も忘れて、ぼーっとしたいなぁ、…暗くなった頃に帰ってきちゃったり、して…」



たのしそう、今度は前を向いてそう言った。


俺は、そのまろが頑張って紡いだ言葉に二つ返事で了承するなんて出来なかった。

きっと、感じ取ってしまったんだ


このまま許してしまうと、まろが消えてしまうことを。


「…ま、とりあえず仕事行ってくるわ」


ゆらゆらと立ち上がったまろが、悲しげに俺を見て笑った。

まろは会社に行くしかないんだよね。真面目だから、絶対にその道を外れようとしないもんね。


でも、このまままろを見送ったら二度とかえってこないような気がして。



「行かないで、」

列に並ぼうとする背中に、思わず腕を掴んだ。




「…帰ってきたら、いくらでも甘やかしてあげるから。ご飯も作るし、お風呂も入れるし、髪だって乾かしてあげる。」

するとまろは大きく目を瞠った。

…ほら、図星だったじゃん。


「だから、会社終わったら俺の家来て。全部俺に任せてよ」


まろの両腕を摩って、大丈夫だと暗示をかける。


「……ぅん、」


まろはそのまま、ぎゅっと俺に抱きついて。

「…がんばる、…」


「まろなら出来るよ。大丈夫、俺が待ってる。」






だから、逝かないで














結局、仕事終わりにまろの会社に赴いて、まろに抱きつかれたのはまた別のお話。










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