テラーノベル
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次の日。
朝の教室は、
妙に静かだった。
誰も騒がない。
でも、
全員が“何かを知ってる”空気。
席に着くと、
ミオが小声で言った。
ミオ「ねえ……聞いた?」
嫌な予感が、
もう当たっている。
ミオ「ユウ、 今日来てない」
それだけで、
胸がざわつく。
ミオ「昨日さ、
警察来たんだって」
ペンが、
指から滑り落ちた。
ミオ「駅前のコンビニで、
万引きと暴行」
……違う。
即座に思った。
ユウは、
そんなことしない。
でも、
周りの声は止まらない。
「防犯カメラに映ってたらしいよ」
「制服も一致してたって」
「前からちょっと怖かったもんね」
怖かった?
どこが。
あいつは、
人の話を聞くのが下手なだけで、
優しいやつだった。
俺は、
立ち上がりかけて――
やめた。
なぜか、
昨日の言葉が蘇る。
今回は、
ちゃんと見送れって。
意味が、
分からないふりをする。
これは、
別の話だ。
やり直しの世界に、
ノイズが混じっただけ。
そう思いたかった。
昼休み。
スマホが震える。
今度は、
見る。
【ダイレクトメッセージ】
アリウム「言ったでしょ。」
アリウム「早かったね。」
喉が、
ひきつる。
「ユウの件?」
アリウム「違う。」
アリウム「「最初に折れる場所」の話。」
俺は、
打ち込む。
「冤罪だろ。
あいつはやってない。」
《 既読。》
少し、
長い沈黙。
アリウム「うん。」
アリウム「やってない。」
アリウム「でも、 やってないことは 重要じゃない。」
アリウム「今回は、 お前が何 もしなかった。」
指が、
止まる。
「何をしろってんだよ。」
アリウム「見たはずだ。」
アリウム「昨日の夕方。」
アリウム「コンビニの前で、
立ち止まってた。」
思い出す。
ユウが、
用事があると言って
一人で帰った理由。
アリウム「あれ、 本当は 俺を待ってた。」
画面が、
歪んだ。
アリウム「声、 かけようとした。」
アリウム「でも、 お前は 迷わないって 決めた。」
心臓が、
痛い。
アリウム「今回、 冤罪は 成立する。」
アリウム「理由は簡単。」
アリウム「誰も、 反対しないから。」
俺は、
顔を上げた。
教室。
誰も、
ユウの席を見ていない。
最初から
空いていたみたいに。
「これ、 元の時間でも あったこと?」
アリウム「うん。」
アリウム「でも、 少し違う。」
アリウム「元の世界では、 お前が 途中まで 庇った。」
アリウム「今回は、 最初から 切った。」
胸の奥で、
何かが落ちた。
アリウム「だから、 早い。」
アリウム「まだ、 花は 落ちてないけどね。」
画面を閉じる。
チャイムが鳴る。
授業が始まる。
先生は、
ユウの名前を呼ばない。
最初から、
存在しなかったみたいに。
その瞬間、
はっきり分かった。
これは、
「やり直し」じゃない。
削除だ。
俺が、
楽しい方を選ぶたびに、
誰かが
現実から
押し出されていく。
でも。
それでも。
俺は、
まだ信じない。
信じたら、
戻れなくなるから。
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