テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
痛い、辛い…
もう,やだよッ…しにたい、
ねぇ、誰か助けてッッ…
──────────────────
春
俺は百。一か月前に高校に入学した高校一年生。2週間ほど前に倒れた母親のお見舞いのために今電車に乗って片道1時間の山の上の病院へ向かっている。父親は東京へ単身赴任中。大手企業で忙しいからなのか母が倒れても帰ってこなかった。
高校生活を楽しみたかった俺は放課後の時間が病院への往復で終わっているため不満が溜まっていた。不満げに電車の座席に座り、外の景色を眺める。学生からすれば店も遊ぶ場所も何もないこの辺はつまらない。海が少しだけ見え、山、田んぼ、畑、草むら、数件の家で囲まれたこの辺りはなんだか退屈で特別なものもないもない場所だった。
早く母親には良くなってもらって放課後は新しくできた友達とカラオケとかボーリングに行こう。せっかく与えられた今しかない青春を謳歌しなくては。
この電車の終点の駅の周りには小さい山と古びたバス停だけ。その山の上には目的地の病院がある。田舎にしては大きめの病院であり、人も多い。実は結構腕の良い医者がいるかららしい。その為遠い場所からも入院しにくる患者が多くいるそうだ。
いつも通り終点で下車し、駅を出てバス停へ向かう。やっぱり人っ子一人いない。呑気に細い田んぼ道を歩いているとバス停のベンチに人影が見えた。珍しい…なんて考えているうちに到着する。
そこには見たこともないほど可憐で美しい少年?男なのか女なのか分からない中性的な顔をしていた。中学生くらいか?そう考えながら近ずくとこちらに気づいた。
赫:こんにちは,
百:こんちには…
(いや、会話下手かよッ!!)
兄弟もいない、年下と話す機会なんてなかった俺は何を話したらいいのか分からなかった。無表情で礼をされ、返答に迷った。
百:それ,何聞いてるの?
赫:えっと、きぃって言うアーティストの曲
百:きぃ?それって…
赫:もしかして知ってるの?
途端に明るくかわいらしい表情になった。嬉しそうに目を輝かせて口の端を綻ばせていた。
百:知ってるというか…俺の幼馴染?みたいな
赫:すごい…そんな近くに,しかもそんな若い方だったなんて…!!
本当に嬉しそうに感嘆の声をあげた姿に思わず笑みがこぼれた。
赫:ぁ、ごめんなさい!! つい嬉しくて(照
赫:えっと~,俺の名前は赫 .
百:俺は百, 高一
赫:じゃあ同い年だ!仲良くしようね!!
百:え”ッ…同い年、、、?
赫:…うん?
百:てっきり中学生かと…
赫:はぁああ?!そんなちっちゃくないですぅ!
百:ごめんて、笑
百:あと男だったんだな
赫:はぁ?!?!そこまで?!
赫:俺は正真正銘の男の中の漢だッ!!
どうやら同い年の男だった赫。彼は明るくて反応がいいからいじられ役決定だな笑
赫:俺だって、病気が治れば身長も伸びてイケメンでかっこよくなるし…
百:病気?
赫:あれ?百くんは患者さんじゃないんだね。誰かのお見舞い?
赫:俺はあの病院で入院してるんだ
百:そうなのか、
良く考えれば、このバス停は病院行き。彼は入院患者が着るような服に1枚上着を羽織っていた。
百:出歩いて大丈夫なのか?
赫:う”ッ…えっとぉ、あははは笑
百:ん?もしかして勝手に抜け出してきたのか?
赫:いやぁ~それが…
百:そうなんだな?
赫:はい、そうです。すみませんでした
赫:で,でも!体調はめちゃくちゃいいんだよ?!ほらぁ元気元気!!
百:それとこれとは関係ない。家族も看護師さんも先生も皆心配するんだぞ?
赫:うん…分かってるんだけど,
百:あ,バス来たぞ
バスの中でたくさん話した。何で病院に通っているのか。好きな物はなんなのか。赫は小さな子どものように質問を重ねる。俺のなんの面白みのない日常の話を彼は楽しそうに聞いた。そして、最後には必ず「いいなぁ…」と目を細めてもの寂しげに笑った。
30分間バスにゆられて病院へと到着した。
看:赫くん!どこに行ってたの?!
赫:げっ…佐藤さん,
しまった!とでも言いたげに赫は顔を顰めた。
看:まだ外出許可は出ていないでしょう?また次の外出許可を出すまで長引きましたからね
赫:はぁい…
看:はぁ, どれだけ心配したと思ってるの
赫:ごめんなさい,
看:あら貴方も付き添ってくれてありがとうね
百:いえ、僕もお見舞いに来たついでなので。じゃあな赫。また会おうな
赫:あッ…ぅん,,,またね
看:ほら検査行きますよ
赫:分かってるよぉ…
百:母さん体調どう?
母:全然大丈夫よ
百:いや、検査結果は良くなかったろ
母:でも本当に元気よ. 百が来てくれたからかしら
百:そういうの良いって、
百:母さんはさ、父さんが戻ってきたら嬉しい?
母:もちろんよ、お父さんのこと大好きだもの
百:そっか、
母:ちゃんとご飯は食べてるの?学校も楽しい?
百:大丈夫って言ってるだろ?ご飯もお隣さんに貰ったりばあちゃんに作り置きもらったから
母:そうよね,ごめんねぇ つい心配になっちゃうの
母:百ももう大人だもんねえ…
百:うん、それより自分の体調心配しなよ
母:分かってるわ、ありがとう。貴方もお友達と遊んだりするのよ?おばあちゃんにここ来るの任せちゃえばいいんだから
百:おばあちゃんは足悪いからいいよ,別にここ来るの嫌じゃないし
母:そっかぁ
百:じゃあ行くね。また明日
母:気をつけて帰りなさいね。
そう。どんなに友達と遊びたくてもいつもは口うるさい母親を心の奥底では心配していた。絶対に本人には言わないけど。
俺は病院の1階のロビーで自販機で買ったコーラを飲んでスマホを見ていた。いつもしている暇つぶしだ。今からじゃ友達とは遊べないし、家に帰れば1人。1人は好きだけどいつも1人だと少し寂しさも覚えるものだ。
赫:あ~!!みーっけ!
百:おわっ!っと、、、赫?
赫:お母さんどうだった?
百:痛みとかはないって。このまましばらく数ヶ月入院して経過を見るんだってさ
赫:そっかぁ,それなら大丈夫だね!何より担当医は蒼先生だもんねっ!!
百:蒼先生?
赫:えー?!百くん知らないの?
どうやら常識らしい。
赫:蒼先生は海外でも有名なお医者さんで数年前に日本に帰ってきてここの病院に来たんだよ。優しいし面白い話たくさんしてくれるの!
赫:俺の担当医でもあって百くんのお母さんの担当医でもあるって言ってたけど聞いてないの?
百:担当医とかは別に興味無いし…
そういえば有名な人だから安心だとか言ってた気が、
赫:ていうか!しばらくお母さんが入院するってことは百くんもここ来てくれるの?
百:うん、俺の父親は東京にいるし毎日来るよ
赫:ほんと!!
百:う、うん
赫:じゃあ百くんとこれからいっぱいお話できるね!
百:ま、気が向いたらな
赫:えぇ~!! いじわるぅ…
彼は小さくて儚げで綺麗な見た目をしている割に声がでかくてきゃんきゃんと良く吠えた。まるで新しいおもちゃを与えられた子犬みたいに。
こんなに元気なやつが病気だなんて。
そんなこんなで母のお見舞いに行った後、赫と過ごす放課後が始まった。
コメント
1件
おお、第1話読んだよ!最初の「しにたい」って叫びから始まってドキッとしたけど、主人公・百と赫の出会いがすごく自然で良かったわ。赫の「いいなぁ…」って寂しげに笑うところが特に刺さった。元気そうに見えて実は病気で入院してるっていうギャップが切ない。百も母親には強がってるけど内心心配してる感じとか、家族の事情が少しずつ見えてきて続きが気になる。2人の関係がどう変わっていくのか楽しみ!