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ギルドで受けた討伐依頼のため、俺とリバはとある森へ向かっていた。
「ここが討伐対象の“灼熱イノシシ”が出るって言われた場所か……」 「はい、私たち以外の討伐申請はなかったはずです」 「それなら、獲物は俺たちだけのはず——」
しかし森に入るなり、異様な空気が漂う。
獣の血のにおいと、踏み荒らされた痕跡。
倒れた“灼熱イノシシ”の巨大な死骸だけが、静かに転がっていた。
「……誰かが、すでに討伐してる……!?」 「そんなはずは……ギルド報告では、まだ討伐済みになってません」
俺は訝しみながらきょろきょろと森を見回す。
「討伐するのは俺らだけなはず。誰だ……?」
その時——
木の上でガサガサッという音が響く。
振り向くと、そこにいたのは民族的な布をまとい、精悍な瞳をした褐色の少女だった。
「お前か……モルグ様が討伐する予定だったモンスターを倒したのは」
少女は腕を組み、得意気な顔で言い放つ。
「おうよ、いかにも!この俺がぶっ倒してやったぜ!」
俺は思わず吹き出す。
「褐色肌に俺っ子キャラ……まるでアニメのまんまだな、はは……」
少女はじろじろと俺を見つめ、ふらりと近寄ってくる。
「見たことないキノコだな。なあ、一度食わせてみろよ!」
リバが血相を変えて前に立つ。
「無礼者!モルグ様は美味しそうだが食用ではない!」
(……うん、何を言ってるのかなリバ君は)
少女は楽しそうに手をボキボキ鳴らし、気配もなく一気に間合いを詰めてきた。
「冗談だって!ま、どれだけ強いか見せてもらうぜ!!」
そして猛烈な勢いで飛びかかってくる。
その動きはしなやかで早く、拳や蹴りの一発一発が重い。
リバは一瞬で翻弄され、力押しで倒されてしまった。
「ぐっ……くぅ……申し訳ございません、モルグ様……」
俺は静かに腕を伸ばし、菌糸と胞子を放つ。
「そんな粉、かけても意味ねぇぞ!」
少女はまったく怯まない。だが、俺が出したのはただの胞子じゃない。
手の中で、菌糸と胞子が鋭く光り、形を変える。それは鋼鉄並の強度を持つ“菌剣”へと変化した。
「……“菌剣生成(マイコブレード)”」
剣を構えて、俺は静かに一歩踏み出す。その立ち回りは、どこかリバによく似ていた。
リバが呆然として口元を押さえる。
「モルグ様……!?その動きは……」
俺は少女の攻撃を剣で受け流し、カウンターで切り返す。
ジュウッと菌糸の刃が少女の腕をなぞる。
「ぐっ……な、なんだこの痺れ!」
「“腐朽剣”だよ。斬られた場所から徐々に腐敗させる。防具も肉体も関係ない」
少女は膝をつき、ついには剣の切っ先で動きを止められる。
「お、お見事だ……降参だよ!」
俺はそっと剣を解き、菌糸をまとわせて包帯へと変える。
「菌糸包帯(マイコ・バインド)。腐朽は止めておくから安心しろ」
少女はポカンとした表情で腕を見つめる。
「すげぇ……ありがとな」
リバも立ち上がり、感嘆の声を漏らした。
「さすがモルグ様……新しい力、すごいです!」
森に静けさが戻る。
新たな出会いに、俺は少しわくわくした気持ちが湧き上がるのを感じていた。