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#四季凪受け
「…………?」
「……さん?」
微睡みの中で聴こえてきたものが、誰か人の声だとぼんやりした意識で捉えた。
そしてそれが自分を呼ぶ愛しい人の声だと気付くと、覚醒しきらないままうっすらと瞼を開ける。
🌸(呼ばれてる………あれ、何してたっけ…)
一応夢の中からは出てきた、けれどまだ身体を動かす程の覚醒には至っていない。
呼ばれてる、起きなきゃと頭の片隅で思っているだけで、だいぶゆっくりとした瞬きしか出来ていない。
軽く身体を揺すられる感覚と、その声があまりにも心地良くて。
危うくまた夢の中へ旅立とうとしかけた時、肩に触れていた手が離れ、かわりに顔の近くに気配が移った様な気がした。
🍷「………🌸」
おそらく顔に掛かっていたであろう髪をそっと直されて、耳元で囁かれた音で今度こそ私は目を醒ました。
🍷「…起きた?ごめんね起こしちゃって」
🌸「…………いま」
🍷「ん?」
起き上がって奏斗を見つめる。
気のせい、ではないと思う。
🌸「いま”さん”付けてなかった」
指摘すると、若干気まずそうに視線を反らした。
そう、今まで奏斗は私の事を名前にさん付けで呼んでいたのだ。
呼び捨てにして欲しいなって思ってたけど、何となく言い出しにくくてそのままになっていた。
でも今。
🌸「呼び捨てにした…?」
奏斗の反応で気のせいではなかったと確信する。
何かを諦めたように小さく溜息をついて、反らしたままだった視線を合わせる。
🍷「……ほんとはさ、ずっと呼び捨てしたいなって思ってたんだけど。
なんか、年上だってわかってからずっとさん付けだったからタイミングわかんなくなって……」
縋るような視線に心臓が跳ねる。
……なんだ、なんだ。
良かった、何かマイナスな理由があった訳じゃないのか。
🌸「…呼び捨てしたくないのかなって思ってた」
🍷「!」
🌸「そっかぁ〜〜〜〜」
🍷「ごめん俺まじかっこ悪ぃ…もやってないでさっさと聞けばよかった〜……」
顔を両手で覆って空を仰ぐ奏斗がどうしようもなく愛しくて、ガラ空きの胸に抱きつく。
一瞬だけ固まって、すぐに思いきり抱きしめ返される。
🌸「…ほんとにシンプルにすれ違ってたね」
🍷「ね、もったいね〜」
🌸「で?」
🍷「でー……………、これからは呼び捨てにしていい?」
🌸「うん、呼び捨てがいいです」
🍷「🌸」
🌸「うん」
🍷「🌸」
🌸「うん」
🍷「…好きだよ」
🌸「うん、私も奏斗大好き」
🍷「はぁ〜〜〜〜」
🌸「なに?」
🍷「いや……、」
身じろいで奏斗を見上げると、なんとも言えない表情をしている。
何か言いたいのかと黙っていると、もう一度溜息をついてから軽くキスが落ちてきた。
🍷「……明日も仕事じゃんね」
🌸「え、うん」
🍷「だからさぁ〜、早く帰そうと思って起こしたんだけど」
🌸「あぁ…寝てたね私」
🍷「うん…………」
なんとも歯切れが悪い。
そして実はこんなやりとりしながらも、唇やら目元やらおでこやらへのキスが止まらない。
そろそろキャパオーバーだからやめていただきたいです。
🌸「せっかく起こしてもらったし帰るね…?」
🍷「うん、帰るなら送るけどさ」
あれ?って思った時にはもう遅かった。
奏斗越しに天井が見える。
🍷「今日はいいよね。…泊まってってよ」
🌸「……、うん、一緒に居たい」
明日も仕事だし、それを気遣ってくれたのも嬉しい。
でも奏斗がそう言ってくれるのを期待していた。
だって今日は
たくさん愛したいし愛されたいから。
* ┈ ┈ ┈ ┈ ┈ ┈ ┈ ┈ ┈ ┈ *
なんか久々になってしまった
同棲ベースでしか書いてなかったけど、今回はその前、更に呼び方がさん付け→呼び捨てに変わるところが書きたかった
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