前回同様Doublefedora(Mafioso×ホームレスChance)
詳しくは第1話をご覧くだせぇ
今回(冒頭)はChance視点でござーます
詳しいことはよく覚えていなかった
でも今に限ったことではない。
全てを失って苦しむ前はよく、酒を飲んで意識を失い、余計なことをした。
あの事件以降だって、名前も知らないやつらに襲われ、気付いたときには2日後だったこともよくあった。
さてと、今回は何が起きているんだ?
見慣れた路地裏でも、公道でもない
かと言って病院の雰囲気でもない。
室内。それも、少し豪華だ。
かつてのギャンブルに明け暮れた日々を思い出す。いや、その時ですらこんな部屋は見たことがなかったかもしれない。
数日前に発症していた熱病も、少し落ち着いていたようだった。
まぁ、またいつ発症するか分からないが。
全身の湿疹を掻きむしりながら不安に陥った
そんなことよりも、この状況。
ベットで寝かされていて、傷の治療跡や、氷枕がある。
知らぬ間の無意識な不法侵入ではなく、明確に誰かが自分をここへ連れてきて治療を施した。
誰が?こんなホームレスの死にかけを?何の目的で?
考えを巡らせても当然ながら答えは出てこない。どのみち、空腹や喉の渇き、それに加えて治りきってない熱病で、マトモな思考もままならないが。
もう一度眠ることにする。
もうしばらくマトモな睡眠が取れていなかったのだ。例えこの後どんな酷い目に遭わされようと、どんな地獄が待っていようと、今の心地よさに比べたらどうでもよくなる。
でも、一体誰がこんな事を?
そればかりが胸の奥深くに少しだけ引っかかった
しばらくの睡眠後、物音で再び意識を取り戻した。
目を開けようとしたものの、開かない。そして、身体もろくに動かない。
あぁ、金縛りか。最悪なタイミングだ。よりにもよって、何かが近くにいるという危険な状況で。
突然のぬくもりと浮遊感
そして、ぼやけながらも聞こえる声。
どうやら何かの正体は、人間なようだ。
恐らく、自身をここに連れてきた…。
かすかに聞こえる怒鳴り声や、言い争う声。
1人、2人…いや、もっとか?
そこから推測できるのは…
恐らく自身を売りにでも出そうとしたのか。
それで最低限身なりをどうにかしようとしたのか?
だが、死にかけの男が売れるはずもなく…
こんなところか?
適当な仮説が頭を満たす
さらに人が増えていき、引っ張られる感覚がした。多分、誰かが自分を奪い取ったのだろう。
何を言ってるかわからないが、何となく、敵意を感じなかった。
そこからしばらく、この奇妙な時間は続いた。
俺を抱きかかえる人は、ずっとそのまま窮屈にならない程度に優しく抱きしめ続けていた。
時折、こちらに話しかけてくれるような感じもする。
しかしまぁ、低くていい声だ。
なんとなく懐かしく感じる。
今日は意外といい日だ。こんなに安らげるのだから。
人生最後の日って、こんな感じなのかな………
そして再び意識は途切れた
一方
Mafioso視点
数分前……
氷と果物を持って部屋に戻ってきた所、
Soldierから話を聞いていたのであろう部下達がChanceの周りに集まっていた。
少し面倒な事になりそうだった。
恐らく血の気盛んなあいつらの前で、まともに看病するのは難しいだろう。
さっさと追い出すべきか?
一声上げようとすると、こちらに気付いた部下達が一斉に振り返った。
その時気付いたが、部下の1人、Caporegime(サングラスをかけてる人)がChanceを抱えてどこかに運ぼうとしていた
m「何をするつもりだ!」
ほとんど反射に近い動きで彼らに近づき、CaporegimeからChanceを奪い取った。
底しれぬ恐怖と怒りが湧き、Caporegimeに殴りかかろうとした。だが、それは他の奴らに制された。
普段ならこんな身勝手なこと許せることもなく、他の奴らも切り刻んでいただろう
だが、後ろで自分を抱えて止めるConsigliere(白い帽子の人)が
co「待ってください!capoはChanceを殺そうとしてるわけじゃないんです!」
と叫ぶ声で、その気持ちは落ち着いた
そして、殴ろうとした手を下げ、彼にさらに近づく
m「…caporegime。 」
ca「…はい。」
m「もう一度聞く。お前は何をしていた?」
ca「……Chanceを運び出そうとしていました」
m「どこに?」
ca「…病院へ。」
少し衝撃的だった。Chanceの事を憎んでるはずの彼らが、病院へ連れ出そうとしている事に
m「何故?」
ca「…Chanceの身体には、複数の病気の特徴がありました。恐らく、なんらかの合併症。ボスがChanceに、身体で償って貰うつもりであれば、死んでしまうことのないよう、一度検査して治療して貰うべきだと思いまして。」
m「…ただの熱病ではないのか?」
ca「…恐らくは。手のひらや背中に広がる湿疹に、不定期な嘔吐…。考えられるのは…」
m「……わかった。いい。それ以上は。
……Consigliere。医者を呼んでくれ」
co「!?…は、…はい!」
m「caporegime。お前の判断は恐らく正しい。だが、病院に行かれては、人目につく可能性がある。」
ca「……申し訳ございません…」
m「…もうしばらく、様子を見る。だから、お前らは持ち場に戻れ」
言葉と同時に部下達は部屋を出ていった。
聞き分けの良い状態に安堵した。この様子なら、部下達が自らChanceを攻撃することもないだろう
腕の中で荒い息を吐くChanceを見る。
時折えづく素振りも見せた。caporegimeの言う通り、ただの熱病ではないんだろう。誤って死なせる前に気づけてよかった。
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m「何をするつもりだ!」
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あの時の焦燥感。
その正体を、今は考えたくなかった。
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