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「皆様、本日はアートプラネッツのパリ凱旋記念公演にようこそお越しくださいました」


ついに迎えた公演当日。


瞳子は艶やかな振袖姿で司会を務めた。


「海外での初お披露目となった今回のテーマは【Japanese Circle〜日本の和〜】。この言葉にはたくさんの想いが込められています。日本らしさの和と、世界に広がる輪。円で描く曼荼羅の美しさと、皆様とのご縁。言葉を超え、文化の違いを超えて、アートプラネッツの生み出す世界観が平和の架け橋となりますように…。それではどうぞお楽しみください」


照明が落とされ、パリで上映された映像が流れ始めた。


「Amazing ! How beautiful…」


外国人ゲストだけでなく、日本人も思わず和の世界に引き込まれ、優美で趣きのある映像に感嘆のため息を洩らした。


「なんて素敵…。日本らしさっていいわねえ」


映像が終わると、皆は立ち上がって惜しみない拍手を贈る。


大河達4人が前方に並び、笑顔で拍手に応えた。


その後は、パリでの公演の様子や現地メディアにインタビューされた時の映像が流れ、来月イタリアに招かれて公演を行うことも発表される。


別の部屋では、ブラッシュアップされたコンテンツが用意され、ゲストは思い思いに楽しめるようになっていた。


「気になるデザインがあったら、手をかざしてみてくださいね」


模様が入った2つ折りの色紙がいくつか映し出されたコーナーで、瞳子がにこやかに説明する。


ゲストがそのうちの一つに手をかざすと、チョキチョキとハサミが模様を切っていき、開くと美しい扇が現れた。


「わあ、綺麗!」


「他のもやってみよ!」


別のコーナーでは、ARで映し出された桜や富士山と一緒に写真が撮れ、外国人ゲストで大賑わいだった。


ショップのオリジナルグッズの売り上げも好調。


最後のお見送りで、瞳子がお土産のキャンディとビジネスカードを手渡すと「着物美人と一緒に写真を撮りたい」と列を作られた。


「イタリアの次は、どこの国を回るんだ?」


「うちにもいつか来てくれないか?」

と、大河も色々なゲストに声をかけられる。


10日間の凱旋記念公演は、大盛況で幕を閉じた。




「ではでは、お疲れ様でした!大盛況を祝して」


「かんぱーい!」


最終日の夜、オフィスでささやかな打ち上げをする。


「瞳子ちゃん、今回もありがとう!着物姿がめちゃくちゃ美しかったよ。華があって、外国人ゲストからも大人気だったな」


吾郎の言葉に、透と洋平も大きく頷く。


「アリシアのおかげで、俺達の映像も一気に格が上がるしね」


「それにまた色んな国の人から声をかけられたぞ。ひと息つく暇もなく、ワールドツアーになるかもしれん」


わあ!と瞳子は口元に手をやって喜ぶ。


「世界中にアートプラネッツの映像が届くなんて、素敵ですね!イタリアの次はどこになるんですか?」


「んー、一つ一つ具体的に話を聞いてから、スケジュールを組んでいくことになるかな」


「また忙しくなりますね。皆さん、体調には充分気をつけてくださいね」


「ありがとう!」


すると、瞳子と洋平のやり取りを聞いていた透が、おもむろに尋ねた。


「あのさ。しばらくは公演に集中しなきゃと思って、敢えて聞かなかったんだけど…。ちょっと様子が気になってたんだ。なんか俺達に報告することない?」


瞳子が内心ギクリとしていると、洋平が顔をしかめて口を開く。


「あー、そうなんだよ。俺、結婚することにした」


…は?と、瞳子は思わず固まってしまう。


「け、結婚?!」


皆も一瞬固まった後、一斉に声を上げて驚いた。


「洋平が、結婚?」


「誰よりも一番興味なさそうだったのに?」


「お前、いつの間に?」


3人は矢継ぎ早に問い詰める。


「またそんなに驚く…。前に話しただろ?彼女出来たって。そしたら次は結婚の報告でも、別に不思議はないだろ?」


「いや、普通ならそうだけど。あの洋平だぞ?告白されたから、まあつき合うか、みたいなスタンスで、今までずっとクールなキャラだったじゃないか」


「ま、そんな俺が本気で惚れた相手だからな。逃したくなくてさ」


それを聞いて瞳子が、素敵!とうっとりする。


「洋平さんを初めて本気にさせた女性なんですね?素敵な方なんだろうなあ。それに洋平さんも、逃したくないって、すごくかっこいいです。洋平さん、ご結婚おめでとうございます!」


「ありがとう、瞳子ちゃん」


笑顔で礼を言う洋平に、3人もようやく実感が湧いてくる。


「おめでとう!洋平。まさかお前が一番乗りとはな」


「それだけの相手を見つけられたってことだもんな。おめでとう!幸せにな」


「近いうちに奥さん紹介してね。盛大にお祝いするからさ。洋平、本当におめでとう!」


皆が肩に手を置いて祝福すると、洋平は破顔して頷く。


(本当におめでたいな。洋平さんのこんなに嬉しそうな顔、初めて見たかも)


幸せそうな洋平の笑顔につられて、瞳子も思わず微笑む。


するとふいに「瞳子」と声がした。


「はい」


顔を上げると、大河が近づいて来て隣に並ぶ。


「え、ちょっと待て。瞳子?!って、大河、お前…」


瞳子を呼び捨てで呼んだことに、既に3人は驚いている。


「ああ。俺達、つき合うことにした」


ええーーー?!と、3人は声を揃えて仰け反った。


「おい、ちょっと!お前こそいつの間に?」


「俺の結婚が一気に霞んだわ。大河、お前の方がよっぽどサプライズだぞ?!」


「いや、でもなんか納得と言えば納得かも」


「確かに。瞳子ちゃんの魅力を誰よりも早く見抜いたのは大河だったし」


「ああ、そうだな」


吾郎と洋平は頷き合い、おめでとう!と二人に笑いかける。


「ありがとう」


大河はそう言った後、透、と声をかけた。


ずっと黙ったままうつむいていた透が、ビクッと肩を震わせる。


「透、必ず彼女を幸せにする。俺の一生をかけて。約束する」


大河がきっぱり言い切ると、透は静かに顔を上げた。


「大河。俺、前に言ったよな?極上の彼女の隣には、超絶にいい男が並ばなきゃって。覚えてるか?」


「ああ、覚えてる」


すると透は、ふっと頬を緩めた。


「お前なら文句なしだよ、大河。必ず幸せにしてみせろ」


「分かった。お前に誓うよ」


透は頷くと、瞳子に優しく笑いかけた。


「おめでとう!アリシア。これからも俺の憧れのスーパースターでいてね」


「透さん…。ありがとうございます」


瞳子が頭を下げると、吾郎が透の肩を抱いて明るく言う。


「よし!今日はもう、パーッと盛り上がろう!」


そして皆でもう一度、乾杯!とグラスを掲げた。

極上の彼女と最愛の彼

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