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QuartoMew
117
#オフィスラブ
ゆうクロ。
966
(株)姫神V
44
俺はターゲットを目の前に捉えて、そいつに向かってナイフを振りかぶった。
無人なだけあって、駅の中には草後の掠れ合う音と風の音しか響いていない。
次に聞こえたのはナイフを肉に突き刺すグロい音――ではなく、甲高い悲鳴がそこらじゅうの音を支配した。
「っ…クソ!!」
ナイフには血が着いている、だが、たしかにその手応えがない。
腹部を狙ったはずだ。なぜだ、どうして…!!
疑問と焦りで脳内が埋め尽くされ、冷たい汗が背中を伝う。
こいつを逃す訳には行かない。それしか俺の脳には考えられなくなっていた。
幸いなことに無人駅だ。悲鳴ではバレていないだろう。
殺るしかねえ、見つかる前に。
勘。ただそれだけだった。
背筋の凍るような嫌な予感が走り、スマホから顔を上げるとあの男がすぐ後ろにいた。
夜の街に入り浸っているからか、”関わっちゃダメな人”を見分けるのが少し上手だったのかもしれない。
本能的に体をよじらせる。
ナイフは腹部を狙っていたのだろうか。そのナイフは私の腕を直線状に切り裂いた。
腕に走る鋭い痛みと熱いような感覚、全身に流れる冷や汗。目の前には殺人犯。
思わず悲鳴をあげた所で思い出した。
ここは無人駅だったということを。
スマホを見てもそこに映るのは小汚いおじさんばかり。悲鳴でも気づかれないとしたら……
考えを巡らせる。多分1秒ぐらいだけど、脳内ではスローモーションのように時間が過ぎていく。
――逃げるしかない。
たどり着いた答えはこれだ。電車が来るまで持ちこたえる。
家に着いたところで、あんな家じゃきっと入られて殺されて終わりだろう。
なにより駅の階段がハイヒールの私ではきつい。
私はバッと体の方向を変え走り出した。
俺の動揺の隙をついてターゲットは走り出した。
俺もその後を追う。俺はとても運動ができると言えない方なこともあり、この状況は避けたかった。
普通の女だと逃げられてしまう。だがこいつはロングスカートにハイヒールというなんとも走りづらい服装だったため、距離は段々と縮まっていく。
線路側の角へと追いやる。
ターゲットは周りを見渡し逃げ道を探しているようだった。
もうどこに逃げてもナイフで殺れる距離まで追い詰めたんだ。今度こそ殺す。
今度は確実に、いつもより力と殺意を込めてナイフを斜めから振りかぶる。
ターゲットはナイフを避けるように横へと動いた。
俺にとってもそれは意外な行動だった。
きっとこいつは気付いていなかったんだろう。
その先に地面はなく、下に広がっているのは線路だけだということに。
そいつがたしかに線路に落ちたことを確認した直後、電車の来るアラームが鳴った。
遠くに見える電車を認識した後、俺はそそくさとその場から立ち去った。
少ししたあと、スマホで『――駅、人身事故』で検索をする。
先程自殺と思われる女性が線路で倒れていたところに電車が来た……よくある人身事故だ。
ニュースの内容からして疑われてはないと思うことにしよう。
そのままLINEで殺したことを報告し、ひとまず殺せたことに安堵した。
この場所に用はないし、帰るか。
駅へ向かおうと体を回転させる。
「……あ、」
今あの駅で人身事故…駅はここが最寄り……ここは田舎……
俺、どうやって帰ったらいいんだ。これ。
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