ユイくんと過ごした4年間は、あっという間だった。成人してからはよくふたりで安い居酒屋に飲みに行った。近くの公園ではしゃいだり、家でだらけながら映画を見たり。お互いの誕生日には、予定を合わせて旅行に行った。
贅沢な日常。今となってしまえば全て夢のようだけれど、ユイくんは当時もよく「夢みたい」と言って幸せそうに笑っていた。
「俺、もう自信ないよ…」
あの8月の日、そう零したユイくんはとてもつらそうだった。悲しそうで、悔しそうで、申し訳なさそうで。ふたりの部屋を見つけられないという事実は、ユイくんの自信を崩れさせるには充分のものだった。
ユイくんは私への気持ちを疑ってしまったのだと思う。あの日、私がユイくんの涙を看過したとき、私もそうだったのだとわかってしまった。
ユイくん。もし君が、私とは違う誰かとふたりの部屋を見つけられたとしたならば。そこで初めて君が、愛に触れたことになったとしたならば。
私達のあの時間は、笑いあったあの日々は、一体何であったと言うのですか?
暖かくて優しい、あの幸福感を作っていたモノの正体は、一体何であったのですか?
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